ディア・デイジー③

ドーソン家 食堂
天井の瀟洒なシャンデリアが部屋を柔らかく照らす。ダイニングテーブルの中央には銀の燭台があり、そこには蝋燭が灯されている。
 ドーソンが手入れの行き届いたアゴ髭を生やし、ビロードのローブを着ている。体格は、がっしりとしてダイニングテーブルの前の椅子にゆったりと座っている。
ソフィーが細い体のラインがゆるやかに見える仕立ての良いドレスを着て座っている。笑顔を浮かべるその瞳の奥には、冷たい光が放っている。
パトリック、テーブル上の食事を顔を赤らめ見つめている。
ジョセフィーヌ、下を向き座っている。
ソフィー、しかめ面をしてジョセフィーヌをちらりと見る。
それぞれの座っている所の前に、料理をのせた皿が綺麗に並べられている。
ドーソンがソフィーとパトリックをちらりと見る。
「では・・・いただくとしよう。」フォークとナイフを持つ。「ええ。」ソフィー、続いてフォークとナイフを持つ。パトリック、次いでジョセフィーヌも食事を始める。
ジョセフィーヌ、フォークとナイフをうまく使いこなせない。それをパトリック横目で見る。
「クックックッ。」パトリック、肩を震わせ、せせら笑う。
ジョセフィーヌ、一瞬パトリックに気を取られ、肉を切ろうとした所、滑って肉を床に落とす。
「・・・あっ! 」
ソフィー、顔を歪めジョセフィーヌを鋭い目で見るが、すぐに目を逸らす。ドーソン、何事もなかったかのように、黙々と食事をしている。
ジョセフィーヌ、顔を赤らめ慌てて、肉を拾おうとする。
ソフィーがジョセフィーヌを睨みつける。
「拾わないでよろしい・・・はしたない! 」
召使いがすぐに来て肉を片付ける。ジョセフィーヌ、召使いに話しかける。「ごめんなさい。」
召使い、無表情のまま、軽く会釈して向こうへいく。
ただ、フォークとナイフの音だけが響きわたる。
ふいにソフィーが、急に顔を明るくして、パトリックを見る。
「そうそう、パトリック! この間の弁論大会で入賞したんでしょう?さすが! 我がドーソン家の息子ね。」
パトリック、得意げな顔をしてソフィーを見つめる。ドーソンも笑顔になり、パトリックを見つめる。
「あぁ、そうか! さすがだパトリック! 褒美に何か買ってやろう。欲しいものは、あるか?」
パトリック、笑顔になりドーソンを見つめる。
「本当ですか?父上! 」「ああ。可愛い息子の為だ。なんでもいってみなさい。」「じゃあ・・・馬。馬が欲しいです! 」
ドーソン笑う。「そうかそうか! よしっ・・・わかった!  とっておきの馬を探してやろう・・・」
「父上・・・ありがとうございます!」
ドーソン、ソフィー、パトリック、楽しげに話しを続け、笑い声が部屋中に響き渡る。そしてまるでその場にジョセフィーヌが存在しないかのように、3人で楽しげに夕食を楽んでいる。
ジョセフィーヌ、ただ一人下を向き、目立たぬ様に静かに食事を続ける。

ドーソン家 庭園
夜空に広がる薄曇が、少し欠けた月にまるで輝く光のヴェールを纏わせたかのようにかかっている。
その薄雲が緩やかな風に乗り、いっときたりとて同じ姿をとどめる事なく、月と戯れてるかのように流れていく。その柔らかな光が、地上に降り注いでいる。
その下にぽつんと一人、ジョセフィーヌが地べたにぺたんと座って、咲き始めた花を見つめている。
そこへエドガーが通りかかり、その姿を見つけ
ジョセフィーヌに向かって歩いて行き、立ち止まる。
「ジョセフィーヌ様・・・こんな夜更けに、お部屋を抜け出されて。夜風でお風邪をひかれますよ?」
「・・・」
「失礼します。」そう言って、横に座る。
「どうなさいましたか?」
ジョセフィーヌ、表情を固く、咲き始めたばかりの花をぼぉっと見つめ、両腕を膝の上に置いたまま少し首を横にふる。「うん。別にいいの。」
エドガーもその視線の先を見つめる。
「花が・・・咲き始めましたね。」「うん。」
「何か・・・ありましたか?」「・・・え?」
ジョセフィーヌはっとして、エドガーの顔を見る。
エドガー、優しくジョセフィーヌに微笑む。
「お顔に、書いてありますよ?悲しいよ・・・って。」
ジョセフィーヌ、顔を赤らめる。「あっ・・・」
「どうされましたか?」その花が微かに揺れる。
「ねぇ、エドガー。私って、この家にいらない子だったのかな?」ゆっくりと呟き、下を向き大きく息を吐く。
「・・・え?」「だって、私。いつも・・・のけ者みたい。お父様もお母様も、私のこと。どうして嫌いなのかな?どうして・・・何が駄目なのかな?」そのまま下唇を噛み締め目を赤くする。
「ジョセフィーヌ様・・・。」
エドガー、ジョセフィーヌの顔を心配そうに見つめる。
つづく

ドーソン  48歳  ドーソン家 当主  男爵
ソフィー  38歳  ドーソン  妻  

初めて書いた小説ですので、未熟な所、また誤字脱字はお許しくださいませ。
暇つぶしに読んでいただけると嬉しいです。


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