ディア・デイジー⑥
アリアの丘 小川近くの径
仔犬が小川に向かってどんどん進んで行く。
エドガーとジョセフィーヌも早足で、後についていく。
「ねぇっ! ワンちゃん・・・どこまで行くの?」
仔犬が急に走り出す。
「ねぇったらっ!」
2人も走り追いかける。
森の奥へと進んでいく。
アリアの丘 小川のほとり
せせらぎが響く小川のすぐ近くの木陰で、足を怪我した少年フレデリックがその場で下を向き
膝を抱えて座っている。
「あぁ・・・どうしよう・・・足が痛いよ・・・。
皆などこ行ったんだよ! ロック! ロック! 」
怪我をじっと見つめ、少し唇を噛み締めた後、
小川を見つめる。と、さわさわと流れる透き通る水面から魚が跳ね上がる。
ふいに径の先から、仔犬の吠える声がする。
鳴き声が聞こえた方を見てみると、
仔犬が尻尾を振ってやってくる。
「あぁ!」安心した様子で、顔をパッと明るくして思わず叫ぶ。「ロック! 」
仔犬が飛びつくと、顔を舐め回す。
「ロック! ははっ! わかったって・・・
もうっ、心配したんだぞ!」
フレデリック、仔犬の頭を両手で何度も撫でる。
ジョセフィーヌとエドガーも後についてやってくる。
「こんにちは。」
フレデリック怪訝な顔をして、ジョセフィーヌを見る。 「誰? 」「こんにちは・・・」
ジョセフィーヌ、仔犬を見つめてから、
フレデリックを見る。
「私達ね、あっちの丘の上の方にいたらね。この子がね。急に現れたの・・・で、私達に何度もおいでって言ってるみたいだったからね。ついてきちゃったの。」
「ふーん・・・」フレデリック、仔犬をうかがうように、見つめる。
「そしたらね。お兄ちゃんがいて・・・私もびっくりしちゃった!」そう言うと目を大きく見開く。
「ねぇ?お兄ちゃん・・・どこから来たの?
迷子なの?この子・・・かわいいねぇ。」
「別に関係ないだろ。 」
フレデリック、そっぽを向く。
ジョセフィーヌ、仔犬の頭を優しく撫でると、仔犬が嬉しそうに一回吠え、尻尾を振る。
フレデリック、その様子を一瞬驚いた表情で見つめた後、はっとし、再びジョセフィーヌを鋭い目つきで見た後、すぐに視線をそらし顔を少し赤らめる。
「まっ・・・迷子って・・・しっ、失礼な女だな! 」ジョセフィーヌ、フレデリックの前にしゃがみこみ、心配そうに、その傷を見つめる。
「ねえ・・・お怪我、大丈夫?」「・・・」
フレデリック、唇を噛み締める。
エドガー、フレデリックの前にしゃがみ込み
その瞳をじっと見つめ、優しく微笑む。
「心配しなくていいんだよ。僕は・・・エドガーって言うんだ。」フレデリック、エドガーを見る。「エドガー?」エドガー、ゆっくり頷く。
「うん。君の仔犬・・・本当にいい子だね。
僕達をここに連れてきてくれた。」「ああ。」
フレデリック、仔犬を見つめ、少し柔らかい表情を浮かべる。ジョセフィーヌ、その傷口を見つめていると、土など汚れがついている。ジョセフィーヌ、少し考え込んだ後、はっとした顔をする。
「ねぇ。ちょっと待ってて! 」カゴを地面に置き、
小川に向かう。
小川は水面が陽の光を存分に浴びて、光を放ち、
その周りを生い茂る木々の葉にきらめきを
与えている。
ジョセフィーヌ立ち止まり、その木々の葉を目を細めじっと見つめ笑顔になり、そこにしゃがみ込み、デイジーの刺繍が小さく施された、真っ白なハンカチをポケットから取り出し広げ、水に浸す。
手が清流に触れた瞬間、体をびくっと動かす。
「ひゃっ・・・冷たっ! 」
肩をすくめ、ハンカチをゆるくしぼり立ち上がり、小走りで再び2人と1匹の元へと走っていく。
つづく
登場人物
ジョセフィーヌ
エドガー
フレデリック アーサー家 長男 12才
ロック(仔犬)
私の頭の中に浮かんできた物語です。
未熟な点等々、ご容赦くださいませ。
暇つぶしに読んでもらえると嬉しいです。