ディア・デイジー④
「私の・・・何がいけないのかな?やっぱり、
何をやっても、ダメだから・・・」
エドガー、眉をひそめ小さく首を横にふる。
「ジョセフィーヌ様は、ダメなんかじゃ・・・ありません! とても思いやりがあって、素直で優しい子だって・・・僕は知ってます! 」「本当?」
ジョセフィーヌ、顔を少しあげてエドガーを見つめる。その瞳に不安げな心が映し出される。
エドガー、その瞳をまっすぐに見つめる。
「はい! それに、この世に・・・いらない子なんて、
一人もいないんです・・・皆な幸せになる為に生まれてきたんですよ。」
そう力強く言うと、少し赤くなった鼻の、その頭を優しくなでる。
「それに、いつも僕にいっぱいの笑顔をくれるじゃないですか。僕はそんなジョセフィーヌ様が大好きなんです。」「本当?」
「はい。だから今のまんまでいいんです。
無理する事なんかありません。」
「じゅあ、これからもずっとずっとそばにいてくれる?」「はい! ずっと・・・ずっと・・・おそばでお守りします。」「本当?」「ええ!」「じゃあ、約束!」
ジョセフィーヌ、エドガーの顔の前に自分の小指を出して見せる。エドガーも笑顔になり、その白く細い指を見つめ、自分の小指を出し、差し出されたその指にからめ、指切りをする。
するとジョセフィーヌ、満面の笑みを浮かべ つぶやく。
「ふふふっ・・・! 指切りよ!? 」
「はい。固い固いお約束です! 」
「破ったら、針千本! 」
「はいっ。男に二言はありません! 」
そう言って自分の胸を拳でドンと叩く。「ごほっ!」
ジョセフィーヌ、両手で自分の口に手を当てる。「ふふふっ。大丈夫?」
「はぁっ・・・はい。」
エドガー、少し顔を赤らめ、頭をポリポリとかく。
「さあ。そろそろお部屋に戻りましょうか?」
「うん! 」
ジョセフィーヌ立ち上がると、エドガーもついで立ち上がり、共に歩き出す。
どちらかともなく、手と手がそっと繋がれ、
屋敷へと歩き出す。
「ねぇ?デイジーがいっぱーい咲く頃に、またアリアの丘に行きたいなぁ。」
「はい。行きましょう。」
「うん! 」
早春に彩り始めた花は、夜露のドロップを纏っている。
静寂に包まれた夜の世界は、月を覆っていた薄雲のヴェールが微かな風に乗り、いつの間にか消え去っている。
それが、まるで少女の心に纏う悲しみのヴェールまでも、どこかに連れ去ってくれたかのように、
庭園は凛とした明るさがもたらされている。
その月明かりが、いつも互いを想いあう気持ちから芽生え始めた、少女の淡い恋心までも、そっと照らしている。
ふたりのあとに続く大きな影と小さな影の、結ばれた手と手は離れることなく、ゆっくり屋敷へと進んでいく。
つづく
始めて書いた私小説です。
未熟な部分、誤字脱字等はご容赦くださいませ。
暇つぶしにどうぞ。
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