【タクティカル・アーバニズム・おすすめ4本 #都市系ブックソムリエ #12 】
#都市系ブックソムリエ として、おすすめ本を紹介していきます。
今回は、タクティカル・アーバニズムのおすすめの4冊を紹介します。
Xのアンケートで上位が都市系思考法とタクティカル・アーバニズムでした。前回の都市系ブックソムリエが都市系思考法を先に紹介をしました。今度は、タクティカル・アーバニズムの出番ということです。
アンケートは、Xコミュニティ都市系|Urbanist Vibesにて行っていますので、よろしければジョインください。最近550人を超えたところです。
タクティカル・アーバニズムが日本でも議論されるようになってから、10年ほどが経ちました。建築ジャーナルの特集やストリートデザイン・マネジメント :公共空間を活用する制度・組織・プロセス、ソトノバなどでも取り上げられてきました。ただ、近年さらにタクティカル・アーバニズムが急速に注目されています。
その一つは、コロナです。もちろん、コロナ禍の模索の中での小さなアクションはもちろんですが、コロナ後の社会変動や行動変容による都市の変化は、密かにかつ大きな壁となっています。「今までと同じ部分」と、「今までとは違う部分」が共存していて、微妙に都市の歯車は狂っています。
しかし、アジャイルに小さなアクションの反復を繰り返し、成果と課題を評価しながら、実装していくことが求められてきています。それが形となって現れるのが社会実験です。国内でも社会実験は当たり前に用いられるほどになりました。
さらには、国内でも、プレイスメイキングの中で用いられる、LQC(Lighter Quicker Cheaper:手軽に、素早く、安価に)が周知されてきています。プレイスメイキングも元々は、パブリックスペースのリサーチから始まった手法。LQCのような小さなアクションや実践がプレイスメイキングに実装され始めているのも、タクティカル・アーバニズムの一つの表れです。
しかし、LQCだけ見てしまうと、プレイスメイキングの中でもプロセスの一段面。単発に終わってしまうのです。プレイスメイキングのプロセスなどは、Placemaking Japanのガイドをご覧ください。
そんな中で、LQC同様に、タクティカル・アーバニズムも=社会実験や小さなアクションだけと捉えられがちです。それは、タクティカル・アーバニズムの要素の一つであり、部分を全体として捉えてしまうと表層的な理解に留まってしまいます。
そこで、本質的なタクティカル・アーバニズムの理解と、その実践に向けて、おすすめ本を4冊紹介します。
1.タクティカル・アーバニズム・ガイド 市民が考える都市デザインの戦術
まずは、タクティカル・アーバニズム・ガイドです。こちらは、2015年出版の原著:Tactical Urbanism: Short-term Action for Long-term Change の邦訳本になっています。タクティカル・アーバニズムを提唱したマイク・ライドンらの言葉と、アメリカの事例などが紹介されています。タクティカル・アーバニズムってなんだろう?という人には、その源流を探るのに良い本です。また、海外事例が豊富なので、世界のタクティカル・アーバニズムを知るのにも適しています。
2.タクティカル・アーバニズム: 小さなアクションから都市を大きく変える
こちらは、タクティカル・アーバニズムを日本にどう実装するか?にフォーカスした本です。事例本と思われがちですが、論考と事例、メソッドもまとまっています。この本のきっかけはTactical Urbanism Japan 2019(#1 #2 #3 #3-2 #4 #5)です。マイク・ライドンらの来日国際シンポジウムをきっかけに、日本でタクティカル・アーバニズムの実装についてまとめようと、様々な論考や実践事例、メソッドをまとめたのです。ぜひ日本でのタクティカル・アーバニズムの実践のガイドとして使ってください。
3.テンポラリーアーキテクチャー :仮設建築と社会実験
テンポラリーアーキテクチャーは、直接的にタクティカル・アーバニズムに言及していませんが、仮設や社会実験というワードからも、さらには、短期の小さなアクションで終わらせるつもりはないでしょうから、タクティカル・アーバニズムと読み取ることはできるでしょう。特に日本の仮設や社会実験などの小さなアクションの事例が豊富にまとまっています。
4.PPR the GEARs 公共空間利活用のための道具考
PPR the GEARsは、タクティカル・アーバニズムの中での小さなアクション、つまり社会実験のアクションにフォーカスしたものです。実践知として実践者が持っているノウハウを形にしてくれています。人工芝の芝の長さはどれが適切か。魅力的な可動椅子は?など、実践の痒いところがわかるノウハウ本でしょう。これを手にして、軽やかに小さなアクションをどんどん展開して、長期的変化や大きな目標に向かっていきましょう。
いかがでしたでしょうか。
タクティカル・アーバニズムの理解の深まる4冊を紹介しました。まずは、タクティカル・アーバニズム本を読んでいない人はぜひ基本から身につけていきましょう。本質的な理解が鍵です。
タクティカル・アーバニズムは、アーバニズムとつく通り、長期的な視点が前提になっています。まさに、海外都市では、行政が都市プランナー、都市デザイナーとして、都市戦略をしっかり組み立てるので、そこにどう乗っけるかという都市戦術(タクティカル・アーバニズム)が必要ともいえます。一方国内は、都市戦略がどこでもしっかりしているというよりは、都市戦略から模索しながら組み立てているという状況の違いもあります。この辺りも踏まえて、都市戦術から都市戦略へ組み立てていけるとよいです。その実践、実装は模索中ですが、ぜひ実践事例とともに深めていきましょう。
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