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子は親を選べない話。
私は家族を見るのが嫌いだ。
あと他人の家族の話を聞くのも好きじゃない。
ある日一気に自分が社会から剥がされるように、自分が自分じゃないみたいにゾワっと幽体離脱している感覚になった。
人ってこんなに泣けるんか!!
と思うほど涙が止まらなくなり、
でもそれはきっと普通のことで
大丈夫大丈夫
いいこだね
すごいね
完璧だね
10歳下の彼氏が隣で寝てたんだけど
いきなりガバッと後ろから抱きしめられて
病院行きなさい
今のままなら俺は一緒にいれない
健康になってほしい
完璧じゃなくていいから
元気なるいと一緒にいたい
と言われた。
病院?
こんなに元気で完璧なのに。
おーーーこれはただ事じゃないぞ
ただ私は今の彼氏とお別れしたくはなかったので
病院に行けば解決するんだと
その後すぐ病院に行った(そういう行動力は早い)。
カウンセリングというものを始めて真面目に受けるようにしてみた。
今までお金は子供達のために使いたいと余程のことがない限り病院に行くことをしなかった私は
30分お話しするだけでお金払わないといけないのか・・
と気落ちしながらも
ただ今の彼氏とお別れしたくはない
健康になろう
という動機だけで通った。
白い部屋の中に
ポツンと小さい女性がいて
マスクをしていたから目だけしかわからなかったけど
普通に可愛い普通の女性がいた。
何か怒られるんか、と思ったけど
その女性から質問されたのは2つとかくらい。
もはやそれも覚えてない・・
ただ、何が直近あったのかと
自分の生い立ちを聞かれたから
ただ聞かれたから、ただ淡々とニコニコいつも通り話した。
普段営業をすることが多いこともあり、なるべく相手がわかりやすいように要点を整理して、ニコニコ笑顔で話すようにした。
その女性は
なんやらメモを取りながら私の話を聞いていて
「うん、うん」と頷くだけだった。
もうそろそろ30分ですよね、お時間大丈夫ですか?
私はこう聞いた。
そしたらそう聞いちゃダメだと注意された。
そもそもそこを気にしてしまう、それが病気だった。
なんでも相手に寄り添い、完璧にしないといけないと考える思考。
殴られ
怒鳴られ
酒がぶち撒かれ
壁は穴だらけで
殴った手は血だらけで
村はいつも警察か救急車が来る。
またるいさんのお父さんね。
私はある地方の出身で、家の周りは昔から家しかない、集落的なところだった。
だから「村」って呼んでた。
田んぼと山しかない。
コンビニ行くにも親の車を頼っていくしかない。
だから私は自転車を乗りこなすのが他人より年齢的に早かった。
早く自立したい。
とりあえず自分の力でコンビニに行くことが目標だった。
村には週3日は警察か救急車が走っていた。
必ずうちの前に止まった。
またるいちゃんのお父さんね。
もう誰かがすぐ警察を呼ぶようになってて、常習犯のように決めつけられていたけど、確かに本当にうちの父親だった。
はい次は気をつけてねー
と厳重注意と共に優しくいなくなる警察の人と
流血しながら救急車に乗る父親と
その光景に慣れてしまった自分は
大人になってからも余程のことがないと何も感じなくなってしまった。
父親は極度の酒飲みで、亭主関白、ヘビースモーカーだった。
会社勤めをしていた時も酒のせいでよく喧嘩を起こしていたことを理由に、自分で起業していた。
母親はそんな父親を支え、パートをしながら、父親の事業のサポートを行い、寝ないで子供を育てていた。
本当に寝てるところを見たことがなかった。
父親は仕事上トラックを使っていた。
トラックのエンジン音は普通の車より少し違ってて、
あ、今パパが帰ってきた
というのがすぐわかった。
そこからが毎日地獄だった。
父親は少しでも気に食わないことがあると、母親をずっと玄関で正座させていた。
少しでも動いてはいけない。
幼少期はそれが何を意味するのかわからなかったけど、それが普通であって、よそもきっとこうなんだろうと思っていた。
田舎すぎて学校の友達の家が徒歩圏内になかった私は、「友達の家」を見たことがなかったから。
きっとよその家も、ママは正座して玄関に座ってるものなんだなあと。
少しでも逆らうと母親は殴られていた。
私は弟がいたけど、その時間を何もできず耐えるしかなかった。
「耐える」という感覚になってからは、これは異常なことであることだと気づき、特に弟は男の子として母親を守る行為を始めた。
そうすると、次に弟が殴られるようになった。
そうすると、それを守るように母親がまた殴られた。
ビールと焼酎の空き瓶が自宅の裏側のゴミ置き場にあり得ない量が溜まっていく。
冷蔵庫や倉庫にはストックがあり得ない量あった。
眠らせるしかなかった。
毎日毎日、彼が眠ることを家族で祈り、眠くなるようあえて酒を飲ませ暴れさせ疲れさせた。
ごめんね、ごめんね
と私を抱きしめる母親に
ある日私は淡々と聞いた。
なぜ離婚しないの?
母は答えた。
「あの人の精子があったからあなたに会えた」