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初めて美容室でシャンプーのサービスを受けた日

  夏休みの最初の日。私は伸び切った髪を切ることにした。本当は夏休み前の土日に髪を切りたかったけれど、お気に入りのお店の予約が空いていなかった。それで私が5歳くらいのときに行っていた美容室の予約を取ることにした。お店の人と予約のお電話をしたときに、自分が間違って大人用のカットを予約してしまった。それでもいいのだけれど。

   美容室に行く日の朝、珍しく私は眼鏡をかけずに部活に行った。暑い中エアコンもつけずに4時間くらい吹きっぱなしで、危うく熱中症になるところだった。でも美容室が楽しみだったから大丈夫だった。でも酸欠にはなった。

  ご飯を食べて、お母さんから美容室代のお金をもらった。お釣りはちゃんと返さないと怒られる。ジャージから普段着に着替えて、腕時計もつける。くしで髪をすいて、少しでも美容師さんの前で恥をかかないようにしておいた。何しろ10年ぶりくらいの再会である。

  部活の時と少しも変わらない暑さの中、ちゃんと自転車をこいで美容室についた。予約時間の10分前。結構いいスケジュールかもしれない。カウンターの人に、「予約しました山羽です。」と言ったら、「高校生の方ですね」と間違えられた。    嬉しいけど違う。

  受付のソファに座って雑誌を読んでいると、あっという間に予約の時間がきた。集中するとどうも時間が早く感じてしまう。椅子に通されて、簡単に髪型の希望を伝えた。すると、                        「それではシャンプーに行きますね」と、電話では聞いていなかった言葉を聞いた。まじか。

  シャンプーの部屋に通されて、椅子にまたすわる。背筋はぴんと伸びている。椅子がリクライニングして、なんだか歯医者さんみたいで緊張してきた。顔にタオルをかけられるのも歯医者さんみたいだ。

  いよいよシャンプー初体験である。頭の上で水の流れる音がする。自分の髪の毛がこんなに重量物だったのかということを知った。人にシャンプーしてもらうのがものすごくくすぐったい。しゃわしゃわしてる感じがする。指が動くたびに、首筋にざわーっていう感覚が走る。早く終わってくれ早く終わって…

  地獄のくすぐりが終わって、タオルドライをしてもらった。タオルで髪を包んでもらって、ターバンみたいになってる状態で鏡のある部屋に通された。見たら、頭がタオルでうにゃうにゃだ。MISIAかよ。なんか鏡のことが嫌いになりかけたとき、MISIAが外された。今度は髪が後ろに反り返っている。今度は西川貴教みたいになっている。早く    くしでとかして…

  一度に2人のアーティストの物真似を鏡で楽しんで、カットに移った。それからは普通に進んで、くすぐったいこともなく髪を切った。いい感じにさっぱりして、シャンプーが楽になった。家族に「キノコみたい」と笑われた。

   ここから私は色んなことを学んだ。人がしてくれるシャンプーよりかは襟足のバリカンがくすぐったくないこと、くすぐったい時でもじっとできる寝そべり方があること、大人料金の意味…とにかく髪を切っただけなのにものすごく社会勉強になった。3500円で勉強と散髪が出来るなら安いものだ。こうして、私の知識は一つ増えることになった。


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山羽涙峰
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