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ひきたよしあき氏×類塾 特別講座「ことばを学ぶ、未来が変わる」(後編)

・自分軸を意識する
・説得力のある意見の伝え方
・世界の論文に挑戦しよう
・勉強の先にある勉強

前半の授業で、類塾生たちが抱える悩みや葛藤、戸惑いを受け止め、叱咤激励し道を示したひきた先生。熱く濃い一時間が終わり、後半の授業の始まりです。

「来年受験する人どのくらいいる?」との先生の問いかけで後半の授業はスタート。講義の前に受験生へ、夏休み中にしておいたほうが良いことのアドバイスです。それは通学のシミュレーション。一時間目に間に合うように行くために、何時の電車に乗って、どんな道を通るのか? この街に3年間通ってみたいと実感することが、最終的には受験にとても力になるそうです。あわせて、試験が近づいた時の効果的な勉強方法も伝授。自分の中で経験値を高め、時間感覚を高めることをぜひ学んでほしいと話しました。

自分軸を意識する

「後半の講義に入ります」と示したのは、内田篤人、中村憲剛といったサッカーのレジェンドたちの集合写真。真ん中には笑顔のひきた先生も写っています。

「4月に、日本サッカー協会で将来日本代表の監督になる人たちへ研修をしてきました」。

オンラインチームからは「ええー! すげー!」の声が聞こえます。

「何をしたかというと、ここでしている授業とまったく同じです。こんなすごい人たちもコミュニケーションに悩むんです。子どもたちにサッカーを教えるにはどうすればいいのか、3連敗したチームにどんな言葉をかければいいのか、そういうときのために一生懸命勉強している。こんなすごい人たちでも勉強しているということを忘れないでほしい」。

憧れのレジェンドたちと同じ先生から同じ勉強を教わる、こんな機会はめったにありません。みんな目を輝かせています。

その授業と同じメソッドで、いま自分の真ん中にある言葉、自分の軸となっている言葉を考えるのが、次のワークショップです。

オンラインチームのチャットには「笑いたい」「楽しむ」「喜ぶ」「進む」「負けない」「つくる」「やりきる」などなど、たくさんの言葉が舞っています。「ひらがななのがいいね」「勝つじゃなくて負けないというのが深いね」など、思い思いの感想も同時に聞けるのはオンラインならでは。

発表です。

類塾生「生きることです」

「素晴らしい。拍手! そうだよね、自分がいま一番だいじなことは生きることだよね。この一個があったら死なないよ。だって自分にとって一番大切なことは生きることだから。生きるという基本の基にあるすごい言葉を引っ張ってきた。素晴らしい!」。

その後も「楽しむ」「笑う」「つなげる」「考える」「頑張る」「聴く」、会場でもオンラインチームに負けず劣らず、それぞれの真ん中にある言葉がバラエティ豊かに出てきます。その中でも異彩を放った回答がありました。

類塾生「疑う」。

「机を回りながら、これ面白いと思って見ていた。これは決してネガティブな言葉じゃない。そこにあるものに対して疑うことから、人間はいろんな学問を生み出した。疑わずに当たり前だろうと考えていたら何一つ見つからない。批評や哲学は疑うところから始まる。彼は『疑う』ことをテーマに生きていこうとしているわけだ」とひきた先生。

ここで、オンラインチームをまとめている山本 拓 先生が会場へ呼びかけます。

山本先生「オンラインチームからいいですか? ひとつ面白いのがありまして、ひらがなで『つくる』というのが出ました」。

「いいじゃないですか。ひらがなで『つくる』。これはいろんなものを『つくる』ということが入っている。漢字で書くと意味が分かれてしまうけど、ひらがななら、すごく広い意味になる。人間関係、工作、クリエイティブ、様々な『つくる』につながる。

いま出ただけでもみんな違う。それはつまり、自分軸がみんな違うということ。これが多様性。だから、自分と誰かを比べて優劣をつけてもしようがない。それぞれ軸の違う者同士が一緒に勉強しているのだから。

みんな各々の軸に沿って勉強していけばいい。みんなそれぞれ違うから、合わされば面白いことができる。『疑う』と『考える』が一緒になるから面白くなる。『つくる』が加わればもっと面白くなるかもしれない。だから、自分の真ん中にある言葉は何かということをいつも考えてほしい。成長すればそれは変わるかもしれない。経験値が上がれば変わって当然。それは構わない。変わっていい。だけど常に、いま真ん中にある言葉が何なのかは意識しておいてほしい。そのためには自分が世界に提供したいことを動詞ひとつで考える。この考え方を忘れないで」。

いまの自分の真ん中にある言葉を常に考え、意識する。大人になっても大切です。

説得力のある意見の伝え方
次は「意見の伝え方」の秘訣です。最近問題となっている「ぼそっと言葉」。一言ぼそっと言っただけで意見を言ったような気になっている、これがいま問題になっていると先生はおっしゃいます。その筆頭例が「ヤバい」。これは意見ではなく心の悲鳴みたいなものだと先生は言います。ではどうすればいいのか? 秘訣は「結論と理由」。

「自分の真ん中にある言葉とその理由、その2つを考えれば自分の存在意義がはっきりする。存在意義がはっきりすれば自分が進む道を考えられる」とその意義についても教えてくれました。

ここで先生から課題です。「頭をよくするにはどうしいたらいいか」。結論と理由をセットで答えてもらいます。

「毎日必ず復習する。なぜなら毎日の頑張りが成果に出るし、復習することによって頭に刻まれていくから」

「自分自身で考える。他の人に聞くだけでなく、自分の頭もしっかり使うことが大切だから」

「何事にも興味を持つ。なぜなら興味がなければ何も頭に入らないから」

「楽しむ。なぜなら楽しまなければ定着しないから」

「考える。理由は考える力が重要やから」

「楽しむ。なぜなら楽しんだほうが気分が上がるから」

会場にもオンラインにも、それぞれが考える「頭をよくする方法」が上がってきます。

「どうもありがとう。このように、何をどうすればいいかということを結論と理由で考えて、自分なりの結論を出しつづけることによって考える力はついてくる」と先生は結びました。

世界の論文に挑戦しよう

大谷翔平の言葉から始まった講義も終わりの時間が近づいてきました。最後は、アメリカとフランスを例に、海外の論文にはどのような傾向があるかというお話です。

「アメリカという国はリーダーシップを育てるのが大好きです。開拓精神というものをだいじにしている。そこで問われるのは『あなたならどうするか』ということ」。

先生はそう話し、ハーバード大学で哲学を教えているマイケル・サンデル教授が提議した「トロッコ問題」を類塾生に問いました。

「制御不能になったトロッコが走っています。運転士であるあなたは進路を変更できます。疾走するトロッコの先にはボロい車に乗った貧しい5人家族がいて、進路を変更すれば5人の命を助けられますが、変更した先にはベンツに乗ったお金持ちのおじさんがいて彼がトロッコにひかれて命を失うことになる。あなたならどちらに舵を切りますか?」。

類塾生「お金持ちのおじさん。助けたらお金をくれそうだから」。

ユニークな答えに笑いが起こります。

「なるほど! でもこれ、笑っちゃいけないんです。サンデル先生はなぜこんな授業をするかというと、たとえば将来、車がすべて自動運転になるかもしれない。そのときにどちらに道を切るかは人間が決めるわけ。技術的にはどちらにも切ることができる。金持ちのおっさんを殺したら訴訟とか大変そうだなあ、と思ったら、人類はもしかしたら5人家族のほうを殺すことを選ぶかもしれない。自動運転というものを推進していけばそういうことが出てくる。そこで問われるのは正義、公平、人間の命という問題。そういう究極の状況を想定し、『あなたならどうするか』ということをアメリカの大学では考える。これには正解はない。大学で学ぶとはこういうことなんです。

こういうふうに、結論の出ないことを考えるのが大学の勉強。みんなはいま結論の出る勉強ばかりしているけど、その先にある、本当の学びには結論の出ないことについても考える。それは本当に楽しく面白い」。

学ぶことの楽しさ、勉強の醍醐味が伝わってくるお話です。

次はフランスです。フランスは哲学の国です。そういう国では何を論ずるかというと、「何々とは何か」だと先生は言います。ものの「根源」です。だから定義をしないといけない、と話したところで、先生は類塾生に問いました。

「あなたにとって類塾とはなんですか?」。

類塾生「心の支えと勉強の支えになるところです」。

素晴らしい答えにひきた先生もうれしそうです。

「先生方聞きましたか? 類塾とは心の支えと勉強の支えになるところです。そう、フランスはこう聞いてくる。これがアメリカなら『あなたが類塾に入ったら、どういうことを学習しますか?』ということを論ずる。勉強するにあたり、あなたならどうするか、と聞いてくるのがアメリカで、勉強とは何かと聞いてくるのがフランスです」。

勉強の先にある勉強

今日の最後の講義です。みんな真剣なまなざしで先生の話を聴いています。

「勉強とは『あなたならどうするか』そして『何々とは何か』という“正解のない問い”に対して、自分なりの考えを一生懸命導き出すことです。いまの数学を解いたり漢字を覚えたり年表を覚えたりするのも勉強、だけどその勉強の先にはもっと楽しい世界が待っている。いま、いろんなことを覚えるのは大変だろうけど苦しいことではない。なぜならその先の楽しい世界へ行くために必要なことなのだから。

今日は大谷翔平の話から始まって小論文、そして論文というものについて勉強しました。たぶん少し難しかったと思います。なぜならこの授業は、私が大学で教えている内容だから。慶応義塾大学、明治大学、大阪芸術大学で教えている内容を、小学生、中学生の皆さんに教えました。だから難しくて当たり前。だけど皆さんは現役の大学生と同じように興味を持ち、くらいついてきてくれた。いまや大学の勉強も決して怖くはないだろう?

今日の授業が少しでも面白いと感じた人は、きっと大学に入って学ぶ人間になるということを僕は保証します。勉強を超えた勉強、そういう勉強をしたいと思うなら、いまの勉強を頑張って、進学していってください。いま苦しくても、未来には楽しい勉強が待っているから。自分軸をしっかりさせるために、根源を追求するために、自分ならどうするかということを書くために、この類塾で学んでいってほしい」。

「類塾は学校も学年も関係ないだろう? そしてそこで教えているのは、ほとんどが法哲学や心理学、脳科学といった内容。わかりやすく教えているから気がついていないと思うけど、ほとんどがそういう内容です。ここでは本当の意味での学ぶということを教えているんです。受験の先にある学び。学ぶことで生きる力をつけて度胸のある人間になってほしい。それをぜひみんな、ここで学んでいってほしいと思います。

小さな枠にとらわれず、どんどん学んで人生を愉快にしよう。言葉が変われば未来を変えることができる。今日はみんな自分軸を見つけることができた。それに対して結論と理由で説明できるようになった。自分ならどうするか、何々とは何かという問いも立てられるようになった。こういう勉強を進めて、ぜひみんな大学で一緒に学びましょう。生きる力を強くしてもっと大きな学びをしよう。類塾はそのためにあるのだから。私の講義を終えます」

先生からの熱く、強く、優しいメッセージに会場中が感動に包まれています。オンラインチームも「深かったね!」「いや、すごいわ」と感嘆の声が上がります。

講義終了後も「楽しかった」「面白かった」「これから生きていく上で何が必要になってくるのか、自分にとって何が大切なのかが学べてよかった」「大学の勉強は厳しいと思っていたけど、今日の話が理解できれば大丈夫だと聞いて安心した」「大谷話法がグループ追求の授業で生かせそうだなと思った」「自分が受けたかったような授業だったので本当に楽しかった」「学ぶことが生きる力になるということが知ることができてよかった」などなど、こちらも熱い思いがたくさん寄せられました。





ひきた先生、今回も大切なことを惜しみなくみんなに授けてくださって、本当にありがとうございました。

ぜひまた来てください。

みんなで待っています。

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