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僕がラグビー登山家になるまで 20歳 | 慶應BYBへ入部した話。

僕は医学部を目指し、2浪していた。しかし、入学試験で落ち、結果的に慶應大学理工学部に入学することになった。

3浪も考えたのだが、この時は母親と喧嘩をしてしまっており、精神的に続けることは限界を感じていた。高校の同級生がサークルや合コンでいかにも学生生活を満喫しているのを横目で見ており、華の大学生活というものを一秒でも早く経験したかったのが本音だったのだと思う。

入学式の大学の門を抜け瞬間から、数多くのサークルの勧誘を受けたのだが、現役よりも2つも年上である僕はリア充サークルはとても怖れ多く、ラグビー以外、自分を受け入れてくれる環境は正直ないものと思えてしまっていた。

慶應には体育会である蹴球部の他に、慶應BYB、慶應JSKS、慶應理工学部ラグビー部、SFC漠の会、慶應医薬学部ラグビー部と6つのラグビーの選択肢がある。慶應BYBには入った理由は、高校時代の愛知県決勝戦で負けた相手が一つ上の学年におり、高校時代から元々知り合いから勧められたらからだ。戦前からある学生クラブ(サークル)であり、今の日本を牽引するリーダーたちがこのコミュニティから輩出されている。各学年に花園出場経験者が少なくとも1人おり(僕の同期は10人中、3人いた)、1学年上には全国大会の準優勝のメンバーもいる。しかし、キャプテンは大学からはじめた初心者の方であり、ラグビーの門戸拡大を体現している素晴らしきクラブチームだ。

新歓の時に2つ上の学年の先輩に過去の高校時代、対戦した相手がおり、僕の入部を歓迎してくれて2人で飲んでいた。2年に渡る浪人生活も終え、色々と舞い上がっていたこともあり、そのお店のテキーラを全部飲み干し、後輩でありながらも「今も負けはしないぞ」との意思表明を示していた。高校時代、先輩のチームに圧勝した記憶が僕には残っており、ラグビーのスキルアップと勝利への貢献こそがチームには求められると思っていた。しかし、それを感じとった先輩は、

「ラグビーの上手い、下手といったことだけがラグビーの価値ではない」「このチームをどうやってみんなに愛着を持たせ、居心地を良くするか考えて行動することも立派なチームへの貢献なんだ」

強い、弱いのみの尺度でラグビーを見ていた自分を恥じた。

その先輩は音楽が好きでDJをしながらラグビーをしていた。個人でやりたいこともチームとして認めながら、ラグビーをやる時はしっかりやる。

ラグビーを通して居心地の良いコミュニティを作るという考え方は、おそらく体育会のコアな部分と真逆な考え方である。しかし、ラグビーを拡大していくためには絶対に必要なものだと思う。おそらくこのようなプロジェクトをするに至ったのも慶應BYBでラグビーをやっていた土壌があったからこそ生まれたものだ。

ラグビーが好きではあるが、そこを極めるとなると同世代の体育会である蹴球部には敵わないとわかっていた。自分の年齢や実力を鑑み、学生の間でやりたいこととバランスを取りながらラグビーと向き合うことを考慮すると僕の場合は学生クラブ(サークル)がベストな選択であった。しかし、ラグビーを思う気持ちは体育会と変わらないため、ラグビーの価値を上げるゲリラ的活動を僕たちは水面下で行い、このクラブの文化として継承していこうと努めていた。

イケメンであった後輩をミスター慶應の候補に祭り上げ、EXILEのガンちゃんこと、岩田剛典を破り、準優勝させるにまで至った。

後輩がタレント事務所にスカウトされ、それを後押し、三井住友SMBC等の数多くのCMに出演。

2012年の年の瀬に放送された「絶対に笑ってはいけない熱血教師24時」ではその番組の中で松本人志から初笑いをとったのは後輩たちである。


社会全体にラグビーをアプローチさせたいとの思いは昔からあった。しかし、自分たちのパフォーマンスを上げ、そのことでみんなに見てもらい、興味を抱いてもらうというのは学生クラブ(サークル)の立場では難しいことであると充分にわかっていた。だからこそ、正面からの突破ではなく、何か別のものに乗せて、コラボさせて、ラグビーを盛り上げようとの活動は今のこの活動だけではなく、学生時代から虎視眈々と狙っていた。

もちろんこのような取り組みは議論が分かれるところであると思う。ラグビーの魅力というのは濃縮された熱い人間ドラマであり、それを希薄させるような取り組みはやっていた人間からしたら、面白くないのとも理解する。

しかし、誰もが今のままではいけないと思うように、ラグビーの魅力を拡大させるためにも興味がない方への接点を拡大させることは重要なことだと思っている。誰も成功モデルを確立させてないからこそ、色々な取り組みをゲリラ的に行うべきである。



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