”ラグビーインド代表監督で得た学び” #2 目的とゴール
日本ラグビーフットボール協会公認 S級コーチの神宮寺です。
今回は2018年にインド代表監督としてアジア選手権に出場した際のスペシャルな経験から得た学びを綴りたいと思います。私がコーチとして得た学びが皆さんのコーチングを豊かにするお手伝いができたら幸いです。
目的 と ゴール と ミッション を明確にする
今回のインド代表Camp、JRFU(日本ラグビーフットボール協会)からのオファー内容が軸になるのは当然のことだが、ラグビーインド代表における私のコーチングの指針として目的/ゴール/ミッション を設定した。
時間はないけど最高の準備はしたい。
「インドに行って監督をしてきました」で終わってしまっては、誰がインドに行ったって同じだろう。
ただ、2ヶ月という短期的な強化で最大の結果をだしたいのが第一なのだけど、エディージョーンズが日本ラグビーに革命をおこしたように、「インドラグビーの未来につながるラグビー、インドラグビーが持続的に成長できるようなコーチング」をしたいと心に決めた。
ドタバタの出国劇
突然、1週間後にインドで代表監督をする。飛行機のチケットはJRFUに取ってもらったけど、そもそもビザ 間に合います?というぐらい切羽詰まっていた。(実際ビザが届いたのも出発の2日前)
もちろん想定できる範囲で準備を行う。準備と言っても、私が持参する 2つのスーツケースのうち 1つ はトイレットペーパー。
もう1つは、幼馴染がくれたレトルトのボンカレー10個。
カレーの国で日本のカレーの美味さ伝えてどうすんじゃい(怒)
そりゃコメントも辛口になりますわい。
事前の合宿計画などの詳細、知らん。
インドで対応してくれるマネージャーみたいな人、知らん。
誰が、何時に、どこに、デリの空港に迎えに来てくれるか、知らん。
インドのどこで合宿するか、知らん。
どこのホテルに泊まるのか、知らん。
何人のインド人の選手をコーチングするのか、知らん。
練習環境、なんの道具があるか、知らん。
そんなことある?
JRFUの担当者からは「インドを強化してきてね」「この飛行機に乗ってね」「あとは現地で相談して」の 3つの情報しか聞かされていない状態。
まるでTVのドッキリのような、、、
こんな Comfort Zone の壁の壊し方ある? と今更ながら思う。
普通のコーチならパニックゾーン行きやぞ。
ようこれでインド行ったな!と自分を褒めたくなるぐらい何も知らない状態の中、気づいたら成田空港を出発し日本は小さくなっていた。
*ちなみに協会批判じゃありません!笑
きっと協会もバタバタしていたんでしょう。。
相手を知ることの重要性
コーチングで必要なことの1つに、フィールドに立つ前の事前準備がある。
その中でも「相手を知ること」「相手(組織/集団)の文化を知ること」があげられると思う。特に、この2点は 欠かすことのできないキーファクターになるだろうと早くも感じていた。
孫氏の有名な教え「彼を知り己を知らば、百戦して殆うからず」(相手を知り、自分をよく知れば、物事はすべてうまくいく)という言葉がありますが、初めての海外でのコーチング、予備知識のないインドラグビーに対して、まずは 自分の出来る/出来ないの線引き、そして自分自身のマインドも整理して、相手の文化(競技力だけでなく、価値観・育った環境・宗教的なもの)を理解しないと、アジア選手権出場どころかチーム崩壊もあるだろうな、という恐怖があった。
実際、私が知っていた情報はWebにあるような一般的な情報だけで、これはもう現地に行って「相手を知る」ことに全力で取り組もうと誓った。
今の心境を例えるなら、裸に果物ナイフ1本で戦場に行くようなもの。
総人口13億人のインドにおいて、競技人口 1億人をほこり、人気NO1に君臨するスポーツはクリケット。日本のプロ野球より平均年俸が高いという。現地でTVをつけてもクリケット、クリケット、時にカバディ、クリケット。
対してラグビーは、競技人口 5万人ということで、インドでは、かなりのマイノリティグループということになる。だからこそ、今回のゴールは「インドラグビーの未来につながるRUGBYをする」に設定した。
<学びのまとめ>
●どんなプロジェクトも目標設定(ゴール設定)をすることから始まる
●第1に自分を知ること、次に相手を知ることでスタートラインに立てる