”ラグビーインド代表監督で得た学び” #6 限界突破
日本ラグビーフットボール協会公認 S級コーチの神宮寺です。
今回は2018年にインド代表監督としてアジア選手権に出場した際のスペシャルな経験から得た学びを綴りたいと思います。私がコーチとして得た学びが皆さんのコーチングを豊かにするお手伝いができたら幸いです。
スタンダードをあげる
今回の合宿の目的は「インド代表の強化」そしてゴールは「インドラグビーの未来につながるラグビーをする」こと。
そしてミッションとして掲げた、彼らが「持続的にラグビーの強化が出来るような練習」を組むことにした。
話を聞く所によると過去の代表コーチはゲームライク(部内マッチ)のような形式の練習しかしていないとの事だったので(1-2ヶ月という短期間で強化する為には仕方がないような気がする)目標としてのアジア選手権はひかえているが、目的とゴールを見失わないように練習をデザインした。
まずはインドラグビーのスタンダードをあげる。
走る、ぶつかる、スクラムを組む。
本来ならば、Comfort Zone の壁は少しづつ壊したい所だが、スタンダードの基準作りだと考えて、最初から行けるところまでチャレンジしてみた。
(求める基準はここだよ、と線を引く)
フィットネス強化への取り組み
この日は朝方まで大雨が降っていて、いつものグラウンドが水浸し。
神宮寺調べによると世界ジョーク大好き国家ベスト5に入るインドの選手は、こんなことを言ってきます。
(水浸しのグラウンドを見て)
選手「コーチ、今日は水泳かな?」
神宮寺「バタフライさせたろか?」
あっさり日本語で返答し、会話を終了。(笑)
近くに公園があるからと、その日はそこで練習をすることになった。
公園につくと、四角形をイメージしていた自分の常識がここでも壊される。
自分の常識どおりに話が進まないのがインドだと改めて思った。
公園はやけに細長い。
横20m 縦100・・200・・300m 以上あるかな。
公園と言っていたが歩道だなこれは。
でも問題なし、今日はフィットネスやろうと思っていたし、ここで出来るフィットネスをやろうとプラン変更。
きっとこんな事はこれから日常茶飯事だろうと腹をくくる。
自分の歩幅 15歩で10m、ざっくり縦長の100mのグラウンドを作り「1644」というフィットネスを行なった。
内容はシンプル、16秒で100mを走り、44秒で100mの折り返し。
この200mのインターバル走を連続10本。
ちなみに横が狭い公園だったので渋滞を緩和する為に、フロントローは80m、他90m、SHとWTBは100m に設定し、激走した。
結果こうなった・・・
まずは80分間動き続ける為の体力強化を
継続的にしていこうと誓った瞬間でもあった。
ちなみにわかったことは、インドの選手はルールに甘い・・(笑)
100m 先で折り返して戻ってくるはずなんだけど、ほぼ全員、やけに手前で折り返してくるではないか。 なるほど、練習設定の工夫が必要だ 。。
練習設定の工夫
例えば他のフィットネスメニュー、私の目が全員に届くよう、20mの折り返しダウン走を5往復というメニューをした場合、だいたい4、ひどい時には3往復ぐらいで、終わった感をだして次のセットを待っている選手がいる。
「終わった?」って聞いても「YES!コーチ」と満面の笑みで返してくる。
悪気があるのかないのか、とにかく心の中ではやりやがったなと思いつつ、日本なら手を抜いてタイムに入らない選手はいるけど、そんな選手でも本数だけはちゃんと走るんだよな・・・と、やはり日本の教育はすげぇと思いならが、次の策を練った。
ちなみに1週走をやっても、平気でコーンの内側を走ってくるから気をつけろ。きっとグラウンド内に鉄柱を立てても同じ結果になる。
色々なフィットネスMenuで試したけど、結局辿り着いたのが、ゲームライクの練習に混ぜてしまう方法。
ゲームライクのトレーニング中に、笛の合図で進行方向のHポールを回って、攻防の方向を変えて再セットアップ、セットが早い方に攻撃権を与えるという設定にした。
ゲームライクの練習はそもそも大好きなので、競争のようなゲーム性をいれることでこの問題は解決した。
<学びのまとめ>
●スタンダードをあげる為、スタンダードの基準を示す
●インドのカルチャーにあわせた練習設定をおこなう