”ラグビーインド代表監督で得た学び” #3 目覚めろ本能
日本ラグビーフットボール協会公認 S級コーチの神宮寺です。
今回は2018年にインド代表監督としてアジア選手権に出場した際のスペシャルな経験から得た学びを綴りたいと思います。私がコーチとして得た学びが皆さんのコーチングを豊かにするお手伝いができたら幸いです。
インドの洗礼 (インドのカルチャーにふれる)
日本からインドへの飛行機の時間はおよそ10時間。
出発前には覚悟を決めたものの知らないことが多すぎて、飛行機では一睡もできなかった。そもそもデリ空港に着いたら、誰がどこに迎えに 来んのよ。
写真はデリ空港の様子。 真夜中に着いたのに、人と車の多さは異常。
携帯がない、相手も知らない、連絡先も知らない、なんだったら金もない。
無敵のはずの円をポケットの中で握りしめ、空港の出口へ向かう。
人との待ち合わせでこんなに緊張するのは人生初だ。
空港の出口をでると、遠くから、うっすら聞こえる叫び声。
「とーる じんぐじー?」 「とーる じんぐじー?」
「とーる じんぐじー は、俺やで!」
いかにもラグビーやっていそうな 赤T 男子、こいつだ!
もう何ていうか、生き別れの弟と再開したときのような気分(知らんけど)
彼の名前は ”チョトゥー” 過去に代表キャプテンを務めたこともある、インドのスタープレイヤーの1人だ。 合宿では本当に助けられた。
軽く挨拶をすませたあと、駐車場から車を取ってくるから、ちょっとココで待っとけーと言われ、彼は足早に去っていった。
ものすごい不安。
そして、これがインドの洗礼か!?
再び彼が車で登場するのに 1・2時間以上、ロータリーで待ちぼうけ。
ちょっと待ての時間の感覚おかしない!?
インドに着いて早速の学び
それは ”インドでは自分が外人” と改めて認識できたこと。
知らず知らずに日本人を見るようなメガネをかけている自分がいた。
もうここはインド、インドの文化のなかに自分がお邪魔している。
そんな気持ちにさせてくれた1時間だった。
無法地帯の荒野を走る
何はともあれチョトゥーの運転で、荒野を走ること3時間。
トラフィックポリスはインドにはいないから、スピード出し放題だぜ!
みたいなことを言っていたような気がする。
そして、ナイトライダー みたいだろ? ってね。古いのひっぱってきたなぁ。
インドの交通事情は無法地帯なので日本人はマジで運転不可能だと思う。
最初の1時間は5分に1回はエアーブレーキ踏みつけた。
(でも、それも慣れるから不思議なもんだ)
出発前、中央道の高速道路 110キロでスピード違反で捕まった事をふと思い出し、あんなんでピーピー言ってんじゃねぇよとは口が裂けても言えませんが、インドを見てみ、これで事故おきねーんだぜ・・・とかなんとかが脳裏をよぎり、感覚も麻痺して意識が飛びかけた早朝4時ごろ、ハリアナ州ソニパットのホテルに到着。
(反省の念を込め、交通ルールは守りましょうインドだからOKなんです笑)
なぜかホテルのフロントには誰もいない。
そして、チョトゥーがこの部屋を使えと言ってきた部屋へ勝手に入り、1時間後に迎えにくるからと言い残し彼は部屋を出て行った。
チョトゥーありがとう。でも正直、この体験も何気に怖かった。。
(夜中はわからなかったけど、昼間に見るとゴージャスなホテルだった)
これがインド流
そして休む間もなく朝5時、予想通り迎えは来ない。 そう、これがインド。
ホテルの外で30分ぐらい待っていると、インド代表でアシスタントコーチ兼マネージャーをしている ”マナス” が車で迎えに来てくれた。
いざ、代表合宿をおこなっているというグラウンドへ。
グラウンドではすでに練習が始まっている様子だったが、グラウンドに入るると50名を超えるインド代表の選手たちが一斉に集合する。
簡単な自己紹介を済ませ、マナスに今日は何するの?っと聞いた瞬間
マナスに言われた衝撃の言葉 ”UP TO YOU”
UP TO YOU ほど居心地の悪いものはない
あぁそうか・・・ この UP TO YOU を聞いて全てを察知した。
代表合宿のスケジュールが未定なのも、飛行機の時間以外すべて決まっていないのも、”私に全部おまかせ” だったのね。。
それならそうと先に言ってくれよと心の中で思いながら、これはハードな合宿になりそうだと、脳みそに信じられないぐらいの汗をかき、
一番大事な初日の練習は、勇気を持って見学をした。
この居心地の悪さはインドにこなければ味わえなかった。
この居心地の悪さを居心地の良い空間にするために取った行動は
「相手を知ることに全力を注ぐ」こと。
インドのカルチャーに自分が馴染んでいくイメージを持って、五感の全てを使ってインドラグビーを積極的に取り入れることにした。
UP TO YOU・・・ 全然寝れなかったけど、一瞬で目が覚めた。
まずは 「相手を知ることに全力を注ぐ」 こと。
とにかく全員と話してみよう。そして俺もインド人になるしかない。
代表合宿はそこからスタートだ。
<学びのまとめ>
●自分専用のメガネで判断をしない
(ましてや海外の場合、自分が外人なのだから常識が違う事は当たり前)
●全力で相手を知る
・居心地の悪い場所から良い場所にするためのコミュニケーション
・インドの文化を積極的に自分自身に取り込む