腕時計の最新事情
最近の時計に関する話題で、僕がもっとも驚いたのは、ジュネーブで開催された時計オークションで、パテック・フィリップ社によって1940年代に作られた、ステンレス・スティールのシンプルな時計が、日本円に換算すると、なんと3億円以上という高値を付けて落札されたことだった。
確かにその時計は、作られたばかりのような、素晴らしいコンディションを保つたままの見事な逸品であり、ゴールドやプラチナ製のケースのものよりレアな、製造本数の少ないスティール製ケースを纏っているのは理解できるが、いくら希少性が求められる世界だとしても、想像を絶するその価格に、多くの時計フアンは驚いたのであった。
僕などには想像もつかないし、また縁遠い世界だが、ビットコインや株などで、確かに巨額の収益を上げている人々の世界もあるだろう。
そんな世界の住人にとって、希少価値があり、将来性がある投資対象として、このような時計が選ばれ始めているのかも知れない。
また近年製作された時計の中にも、こうした投資対象となるものも結構あって、購入時の5倍、10倍という価格が付くから、投資好きの人には、面白くてはならないのだろうとは思う。
その典型がロレックスのデイトナというモデルのクロノグラフで、昔の定価は60万円程度だったものが、今では一千万円以上という価格にまでなってしまった。
僕が腕時計の世界に興味を持った1970年代には、ポケットウオッチや豪華な装飾が施された置時計などがコレクションの対象で、まだまだヴィンテージ腕時計のコレクションをする人は少数派だったし、1970年代の初めごろには、少し昔の売れ残りの輸入時計などが、市中在庫として残っていた。
だから今から思えばそのような時計を、ずいぶん安価で買い求めることができ、僕などにも時計蒐集をするチャンスがあったわけだ。
その頃に集めた時計に、バブルバックと呼ばれるスタイルのロレックス・オイスター・パーペチュアルアルもある。
また友人のアンティーク商と物々交換をした、1940年代のパテック・フィリップの、防水ケースのものがあり、このタイプも希少性から近年かなり高価で取引されているようだ。
ヴィンテージ時計の値上がりはまだまだ続くに違いなく、おいそれと手が出ないことになるだろう。
それならば今生産されている時計の中から、良いものを探すのがよかろうということになる。さてそれでは今、どのような時計を選べばいいのだろうか。
実は今モニターをしている、夏向きの時計がある。それはイタリア発のダイバーズ・ウオッチで、時計の心臓部に日本のSEIKOムーブメントを用いた“スピニカー”という時計だ。
今風のデザインをまとったスポーテイ―な時計で、価格がなんと5万円未満という、コストパフォーマンスの良さに驚く。
これからの暑くなるだろう夏に、最新の防水ケースを纏った時計は心強い味方となってくれるだろう。