Tシャツでめぐる旅 #03 バリ島 ~ドラえもん・ブルー~
バリ島を訪れた8回のうち5回はジンバランの「インターコンチネンタルホテル」に泊まっている。初めて宿泊した時の印象がとてもよかったのもあるし、HIS初夢フェアの格安ツアーで使われていたこともあって、たびたび利用することとなった。ちなみに最後に泊まった時、ちょっと嫌な想いをしたので、今はこのホテルを選ぶことはない。それについてはまたの機会に書くことにして、ホテルの朝食時の話。
朝食会場はタマンギタテラスという広いレストラン。
朝、ここを訪れる度に、私の心は揺すぶられ、深い苦悩が胸に広がる。
エッグスタンドからはじゅうじゅうと卵の焼ける音、味も良ければ種類も豊富と評判のパンコーナーからは香ばしい匂いが漂い、ヌードルコーナーからはシェフのお兄さんが笑いかけてくる。
カレーもあるしナシゴレンもあるし和食もあるし、一体どれを食べればいいのだっ!?
なぜ人間には胃袋がひとつしかないのだろう。これだけごちそうが並んでいるというのに、食べられる量に限りがあるというのは、なんと虚しいことか。とにかく食べられるだけお皿に持って席に戻ると、亭主がいつものセリフを言う。
「お前、朝からよく食うなあ」
旅先で毎回、毎朝聞いているおなじみの言葉は、何の効力も持たない。お皿が空になったら、早速、おかわりを求めて私は席を立つ。ああ、バッフェスタイルの食事って、本当に罪深い。
あれはいつのことだったか。タマンギタテラスで食事をしていた時のこと。
亭主が突然、
「おい、あのドラえもんのシャツのお父ちゃん、すごいぞ!」
と。
振り向くと、本当にすごい。しかも、お父ちゃんだけではない。お母ちゃんも、娘も。
親子3人ドラえもんである。シャツの前面ほぼいっぱいにドラえもんの顔があって、他は真っ青。
アニメで見るドラえもんの色そのものの派手な青だからすごく目立つ。それが×3である。
「あの青って、独特な色だよね」
「いやむしろドラえもん色だよ」
ということで、ドラえもん・ブルーと呼ぶことにした。
ちなみに亭主は子供の頃からドラえもんが大好きで、私と結婚したのも、
「ドラえもんに似ているから」
なのだそうだ。
そんな亭主のスーツを買いに、先日、紳士服の〇山に行った。エントランスの前にワゴンセールのシャツや靴下が置かれていて、そこになんともかわいいドラえもんのTシャツを見つけた。バリで見た衝撃のドラえもん・ブルーとは違う、ちょっと渋い感じの青だ。これは大人ドラえもん・ブルーとでも名付けようか。
まだ着ていないTシャツがたくさんあるので、しばらくは買わないようにしようと思っていたのに、980円という値段に心が折れた。ジャイアンTシャツも買ってしまった。
あの親子は今もドラえもん・ブルーTシャツを大事に取ってあるのかな。時々はお揃いで出かけたりするのだろうか。
それにしても、あのド迫力のドラえもん・ブルーのTシャツは、以後、見たことがない。