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ぜひ聴いて欲しい音楽-台湾最大の音楽賞「金曲奨」ノミネート編(上)

今週、台湾最大の音楽賞「金曲奨 Golden Melody Awards」第31回のノミネートが発表されました。中華圏のグラミー賞と呼ばれ、中華圏では最も栄誉のある音楽賞と言われています。この「金曲奨」は、人気なポップ音楽シーンとしか関係がなかったのです。しかし、今年のノミネートのリストを見ると、サブカルチャーであるインディーズ音楽は、ポップ音楽シーンにも無視できないほどインパクトを与えていることが分かります。今回はそれをきっかけとして、今年のノミネートから是非聴いて欲しい、台湾の若者の間で人気の集まっているインディーズ音楽をピックアップしようと思います!

1.今年の最高品質は「9m88」です

台湾の「ダサくてカッコイイ」デザイントレンド、という記事でも紹介した台湾女性シンガー「9m88」(ジョウエムバーバー)は、「金曲奨」で新人アーティストが一度しかノミネートされない「最優秀新人賞」にノミネートされました。さらに、「最高品質靜悄悄(最高品質は静かである)」という曲で「年度楽曲賞」、「最優秀シングルプロデューサー賞」この二つの賞にノミネートされました。

▲昔の香港アクション映画をオマージュし、ふざけているように見えるが、実は、静かで落ち着いていて、自分の修養を積むことが最も賢い生き方だということを伝える曲なのです。▲

ここで簡潔に「9m88」の背景を紹介しようと思います。英語の名前「Joanne(ジョウエム)」や学生時代のニックネーム「88(バーバー)」を組み合わせて「9m88」という名前が生まれました。台湾私立実践大学のファッションデザイン学科を卒業し、ニューヨークのThe New School音楽学院のジャズや現代音楽専攻に所属している「9m88」は、2016年に台湾の人気ラッパー「LEO王(リオワン)」とコラボした「陪你過假日(休日を一緒に過ごす)」という曲でデビューし、インディーズシーンで一気にブームになりました。

▲この曲がきっかけとなり、LEO王とよく一緒にライブをするようになりました。バーバーの洗練されたR&Bボーカルは、LEO王の落ち着いた歌声と重ねると最高な雰囲気になると思います。先程紹介した曲「最高品質靜悄悄」でもLEO王とコラボしました。▲

そして、ジャズやポップ両方とも得意なバーバーは、次々と有名な歌手に誘われてコラボ曲をリリースしました。その中で、「馬念先」というポップ・ジャズアーティストとのコラボ曲「你朝我的方向走來(あなたは私の方へ歩いてくる)」が最も知られています。

デビューしてから3年間のライブやコラボ活動を経て、2019年7月に彼女は自らのアルバム「平庸之上(中庸の上)」を出し、台湾のR&Bシンガーとして注目されていきます。ファッションデザイン出身である彼女は、独特なファッションスタイルを持ち、レトロや前衛の間で彼女なりのイメージを作り上げました。どのようなスタイルでもお洒落なバーバーは、もはや台湾の若者世代の憧れのファッションモデルだとも言われます。

▲お洒落なイメージにユーモアなセンスが溢れるところもすごく魅力があります。ちなみに、バーバーは大学時代でダンシングクラブに入ったことあったので、リズム感は非常に良いそうです!▲

▲レトロが好きなバーバーは、竹内まりやさんの名曲「Plastic Love」もカバーしました。日本の昭和テレビ美術をオマージュするビンテージシーンは最高でした。▲

▲女性をテーマとして活躍している台湾のイラストレーターYAWEN LIが描いたMVはとっても可愛いです。この世で一番お洒落な生理用品のCM曲になるかもしれないです(笑)▲

2.これからもバンドの時代です-告五人

「最優秀新人賞」、「最優秀バンド賞」、「最優秀ミュージックビデオ賞」、「最優秀パッケージデザイン賞」四つのノミネートを得た「告五人 Accusefive(ガオウレン)」は、男性ボーカル「潘雲安」、女性ボーカル「犬青」やドラマー「哲謙」との3人メンバーバンドです。ポップ・ロックをメインとして、フォーク・ロックやダンス・ポップなど多様な曲があります。

▲「披星戴月的想你(miss you day and night)」という曲で、男性ボーカル「潘雲安」の綺麗な歌声を聴き、愛している人への深い思いを感じて心が震えます。「披星戴月 pī xīng dài yuè」という言葉は元々「朝は早く出て夜は遅く帰るほど精一杯働いている」意味があり、ここではその精一杯の気持ちで人への思いを描写します。▲

▲「你要不要吃哈密瓜(メロンを食べませんか?)」という曲は、元々ある人がメロンを持ってトイレの中にいる友達に「メロンを食べませんか?」を繰り返して聞くというビデオでSNSの上で流行っているネタをモチーフとして、「告五人」ならではのシンボルになりました。▲

▲「我肯定在幾百年前就說過愛你(私は、何百年も前に、愛していると言ったことがあった)」というアルバムの中で、一番気に入った曲は「愛人錯過(ラバーのすれ違い)」です。「潘雲安」が低い囁きのように「私は、必ず、何百年も前に、愛していると言ったことがあったが、君はそれを忘れた。私も思い出せなかった。」を歌ったイントロはすごくチャーミングで、「犬青」のバックグラウンドボーカルを加えて、男声と女声を組み合わせたツインボーカルは完璧です。パンチラインの「君のお母さんは、人にぶつかると謝るはずだと言ってないか?」という歌詞も意味深いです(笑)▲

▲映像スタジオ「Spacebar Studio」が制作した「紅 LOVE(赤)」は「最優秀ミュージックビデオ賞」にノミネートされました。▲

3.少し変わったが最高です-イルカポリス

「最優秀新人賞」にノミネートされたアーティストの中で、個人的におすすめしたいのは「海豚刑警(イルカポリス)」や「傷心欲絕 Wayne's so sad」この二つのバンドです!元々「海豚刑警(イルカポリス)」は、男性ボーカル「徐子權」と女性ボーカル「伍悅」のツインボーカルの形で形成されました。女性ボーカルの「伍悅」はすごく変わった人ですが、実は明るくて繊細な歌声がギャップ萌えです!ソングの雰囲気は少しアニメ曲っぽくて、「伍悅」のボーカルにリードされ、軽くて爽やかなサウンド・エフェクトを合わせてさっぱりしています。

▲2019年にリリーズした「豚愛特攻隊 Call me when Night go blue」というアルバムのバンドメンバー写真です。左からのメンバーは、ベーシスト「檳榔」、ボーカル「伍悅」、ボーカルかつギタリスト「徐子權」、ドラマー「鬼鬼」です。しかし、このアルバムのツアー終わった後、「徐子權」はイルカポリスから卒業し、自らのプロジェクトを続けているようです。▲

▲メンバーのイメージを元に、台湾の人気イラストレーター「Peter Mann」にデザインしてもらったキャラクターは超可愛いです〜〜〜〜▲

▲「イルカポリス」としてデビューする前に、ボーカルの「伍悅」は「透明雜誌」というバンドの曲「少女」をカバーする動画で知られていました。いつもライブでテンション高そうに見えるので、このように落ち着いてる彼女を見ると逆に違和感が感じますね(笑)▲

▲一番気に入った曲「大家都唾棄ㄉ低能婐愛ㄋ(皆に唾棄されてバカな愛している)」のライブ動画を是非観てください!イントロのベース・ラインは最高です。▲

▲「當ㄋ沈睡ㄉ時候告訴婐ㄋ夢到ㄌ婐(寝ている時のあなたは、私があなたの夢に出てきたと言った)」という曲で、おもちゃ楽器でりんりん鳴る音は、イルカポリスの無茶な個性のように可愛すぎます。▲

▲台南の「安平(アンピン)」という海辺の街を元に書かれた曲「安平之光(安平の光)」です。バイクを乗り、安平の街でのんびりするのは最高な青春を感じます!イルカポリスは、歌詞で青春・恋・日常の中で大したことないことばかり描いていますが、泣きたいなら泣こう、笑いたいなら笑おう、逃げたいなら逃げようと思わせるような魅力があります。▲

▲三角関係を描いている「Young Folks Die Late」のMVは、まるで青春のテーマ曲ようで、観たら恋したいなぁーと思わせますね!!!▲

ちなみに、普段イルカポリスのSNSで書いてある文章はかなりクレージーで、漢字に注音符号を交え、間違う漢字を使う中学生みたいなキャラです(笑)このような感じです→「真抖..要芬倒==❣️💞💞!!!終於口以...表演叻:‘’)...淚>0<~~~~<ะะัแแ🐡🐡!!!!!想到可以債安平唱安平就快ㄅ行叻.. 再加上超久沒表演^^整ㄍ已經慾火焚身到可以在懶趴上BBQ=="🍖🍖🥓」→絵文字も多すぎてマジ面白いです!

4.やはり偉い人になりたいなぁ-傷心欲絕

中国語の四字熟語「傷心欲絕」とは、「悲しくてたまらない」という意味です。台湾のパンク・ロックシーンを代表できるバンド「傷心欲絕」は、この名前の通り悲しくてたまらないことをいろいろ歌っています。生ビールを飲みながら、「傷心欲絕」を聞くと間違いなく最高です。ボーカル「許正泰」が低く沈んだ声で、人生の様々な絶望を語ります。

▲シングル曲「下一步絕望(次は絶望だ)」は、「傷心欲絕」の中では、珍しいスローソングです。ドラムの緩やかなテンポは、人生をいろいろしくじった絶望を表しました。悲しい曲ですが、MVでの台北の街の撮り方はすごくよかったです。▲

▲2017年のアルバム「還是偶爾想要偉大(たまに偉くなりたいんだ)」の中で、一番好きな作品は「搖滾糾察小隊長(ロック・ピケ小隊長)」です!偉い人になりたいなぁーと思うが、実は何もできなくても間違っていないという気持ちです。この世界では正しい答えはない、答えられないので、ロックな精神を持つ誰でも偉い小隊長になれるぞというような感じです!▲

▲最近のソング「台北流浪指南 Wanderer Guide In Taipei 」のMVがお気に入りです。生活や仕事などいろいろなことに追われ、陰鬱な日々を過ごしている都会人は共感できると思います。▲

▲ちなみに、ボーカル「許正泰」はすごくイケメンで、女性のファンが多いそうです(笑)歌うだけではなく、「許正泰」はいろいろなコラムでエッセイを書いてて、才能が溢れるアーティストです!▲

これらのインディーズ・アーティストは大体自らのチームで、音楽を制作したり、MVを作ったり、作品を発表したり、ライブやツアーを行います。最初の100人のライブから、1000人の規模のコンサートになり、今度は金曲奨までノミネートされたのは、感動としか言えないですね。大手レコードブランドのような豊かなリソースはないですが、作品が素晴らしければ必ず人々の心を打つことを信じています。また、自分がこれらの音楽に救われたことがあるので、もっと、もっと、もっとたくさんの人に聴いて欲しいと思っています!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ノミネート編でいろいろ音楽を紹介したいので、「上」と「下」二つの記事を分けようと思います。次の「ぜひ聴いて欲しい音楽-台湾最大の音楽賞「金曲奨」ノミネート編(下)」において、方言の台湾語を歌う人気バンドやヒップホップを続けて紹介します!乞うご期待!


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