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人類学の本を読みましょう

人類学といってもいろいろな本がありますが、私が特にお勧めしたいのは、まだ文明社会に組み込まれていない未開社会について記した本です。
ほとんどの地域が文明社会に組み込まれてしまった現在では、新しい本が出版されたとしても、昔の記録の収録しなおしであったりするので、当然古本が主体となります。

私が初めて触れたのは、本田勝一氏の『ニューギニア高地人』です。ニューギニアの高地でイモを栽培して住んでいる村に2週間でしたでしょうか、カメラマンや研究者を含めて滞在し、ペニスケースや腰ミノだけで暮らしていた人たちの生活の様子が記されています。縄文時代の日本も、少しこれに似た暮らしだったかもしれません。学校や会社のない世界で、人々がどのように生きていたのかを知ることができます。

南アフリカのボツワナ共和国に住んでいたブッシュマンについてはいろいろなところで少しずつ知っていきました。小学生の頃学校で見せてもらった映画に出てきたのがブッシュマンであったことを知ったのはそれから30年以上たってからでした。その映画は、私にとって完全に魅了されてしまった映画で、終わった後もまだフワフワとした感覚が続いていました。
やがて、同じ監督によって『ブッシュマン』と題する映画が撮られ、日本でも大ヒットしてニカウさんが来日したりしたものでした。
さらに年月が過ぎ、NHKの番組で野生スイカの水分に頼って乾季を乗り越える人たちのことを知りました。それもブッシュマンでした。まだ地球上にわずかに残っていた狩猟採集生活を送る人たちとして、貴重な存在がブッシュマンだったのです。
ブッシュマンの生活は日本の人類学者たちによょって積極的に研究されました。そこにある生活こそ、人類が長い歴史の間維持してきた生活であり、本来の人間の姿であると私は考えるに至りました。知恵を付けて周囲の環境から生活に必要なほとんどすべてのものを得ながら、人間関係のいざこざはその場を離れることによって軽減する。それこそ厳しいながらも生きる実感があり、楽しい暮らしでした。

そんな暮らしを破壊するのが文明であり、西洋社会であったということを人類学は教えてくれます。

世界各地の未開社会で本来の暮らしに近い生き方をしてきた人々に不幸が訪れるのは、文明社会に組み込まれようとしたときでした。

日本は、文明化してはいましたが、西洋文明に組み込まれたことによって、未開社会が経験したのと同じような不幸を経験しています。特に近年は、その傾向を強めています。

私が人類学の本を読むことをお勧めするのは、それによって人の本来の生き方を知ることができ、今の日本の状況を知ることができるからです。

ぜひ、未開社会の暮らしぶりや、それが文明化されていくときに何が起こるのかを、古い本でお読みいただければと思います。


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