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【FINAL FANTASY X】【感想】【レビュー】シンプルだけど奥深い、決意と覚悟の物語

皆さんこんにちは、コウスケです。今回は過去の名作をやってみようの回。
神ゲーと名高いFFX HDリマスター版をプレイした感想とレビューを書いていく。
クリア時間は大体30時間で、1周目のみのプレイ。

まずは注意点。
私のFFシリーズプレイ歴は「FF7R」と「FF16」のみです。そして今回は、現代のゲームの価値観や技術などに照らし合わせての感想やレビューになります。
そして本記事はシナリオについてのネタバレをかなり含みます。

「10代の学生がFFXをやってみた」という感じの記事になります。ご了承を。

https://www.jp.square-enix.com/ffx_x-2HD/sp/

戦闘:バトル中の行動順や行動回数で深まる戦略性

本作のバトルシステムはJRPGの王道システムをさらに進化させたものになっていて、ターン制でコマンド式の戦闘になっている。

本作の通常戦闘の特徴として、味方キャラや敵のすばやさで行動順や行動回数が決まるという点がある。

「すばやさ」ステータスが高いキャラクターから先に行動できる。この際にパーティメンバー内で敵より先に行動できるキャラ、敵の後に行動できるキャラと分かれる。
下の例で通常戦闘について解説していく。

主人公(手前左)は敵Dに先制を取れるが、ワッカ(手前右)は先制を取れない

画面右上で、上のアイコンから順に行動できる。上のシーンだと、敵Dを優先して倒すことで敵から受けるダメージが1回少なくて済む
しかし、主人公が一撃で敵Dを倒せない場合は敵から余分にダメージを受けることになる。したがって、その場合は主人公とワッカが2人がかりで敵BかCを倒すのが最善策ということになる。

本作の戦闘におけるミソはこれだ。どの敵を誰で攻撃すれば被害を最小限に抑えられるか

この考えを念頭に置いてキャラの行動を選択するのが非常に面白い。
キャラのステータスがきちんと戦闘に分かりやすく反映されているため、キャラ育成の指針にもなる。
よって、このシステムはFFXというゲーム全体の進め方に戦略性をもたらしている、完成度の高いものだと言える。

次にボス戦について。
ボス戦はどれも歯ごたえがあり、気を抜いてるといつの間にかやられてしまうようなものが多かった。
大体のボスはしっかり戦略を練って戦えば初見でクリアできるが、中には繰り返しゲームオーバーになったものもあった。

個人的最強ボスのシーモア終異体
完全なる破壊で何度ゲームオーバーにされたことか…

こういった最強格のボスでは、味方にバフがかかった状態を維持しながら隙を見てコツコツ攻撃を仕掛けていくことが不可欠だ。
敵の大技をどうしても避けられないときはユウナの召喚獣でクッションにしたりと、とにかくボス戦ではプレイヤーに求められるスキルが多いため非常にやりごたえのある戦闘になっている。

しかしこういった高難易度ボス戦における不満点が1つ。

ゲームオーバーからのリスタートのスピードが遅い

1度ゲームオーバーになってしまうと、直前でセーブしたスフィアからやり直しになるのだが、その際に戦闘に至るまでのムービーをスキップできないため、繰り返しゲームオーバーになる高難易度戦闘では非常にストレスがかかった。

ただ、単純に戦闘面だけでいうと
やりごたえのある完成度の高いシステムだと感じた。

キャラ育成:現代基準でも自由度が高いと感じる育成システム

個人的に本作で最も評価したい要素が育成システムだ。
「スフィア盤」というシステムを使った育成システムは非常に自由度の高いものとなっている。

広大なすごろくの盤のようなものでキャラを強化していく

戦闘で経験値を得て、レベルを上げ、キャラのステータスをあげるというのは一般的なRPGと同じシステムだ。
本作におけるスフィア盤システムはすごろくのようなものとなっており、キャラクターの上がったレベルの分だけマスを進むことができる。

スフィア盤は7人の各キャラでスタート位置が異なっており、各マスで強化できるステータスが異なっている。
「HP」や「物理攻撃」、「魔法防御」など、プレイヤーは自分の強化したいステータスに合わせて進むマスを決めることができる。

アビリティ習得がスフィア盤を進める目安となる

ゲームを始めて間もないうちはどのキャラのどのステータスを伸ばせばいいか分からないプレイヤーが大半だろう。

しかし本作ではそういったプレイヤーの為に「アビリティ」習得のマスが設けられている。
ほとんどのRPGがレベルアップと同時に、決まったレベルで、決まったアビリティやスキルを覚えるのに対し、本作ではプレイヤー自身が自由に覚えたいアビリティを覚えることができる。サクサクレベルが上がり新しいアビリティを覚えるテンポもはやく飽きない。

しかもキャラクター全員が実質全てのアビリティを覚えることができるのだ。

つまり、やろうと思えばヒーラー設定のキャラをアタッカーとして育成することも、テクニカルなキャラクターをタンク役として育成することも可能なわけだ。

不満点があるとすれば覚えたいアビリティの効果の説明が書かれていないこと。
どういうアビリティか分からない状態でワクワクしながら育成できる仕様であると感じたものの、やはり、強いキャラを育成したいと思ったらアビリティの効果を考慮した上でスフィア盤を攻略したい、とも思ってしまった。

ステータス強化やアビリティ習得の際に「スフィア」というアイテムを消費することになるのだが、これが通常戦闘でかなりの確率でドロップするため余りがちになる。
しかし本作では余ったアイテムを有効活用するシステムが盛り込まれいて、それが「召喚獣育成」だ。

余ったスフィアを消費して任意のステータスを強化できる

先程、戦闘の解説で言及したように、ユウナはバトル中、召喚獣という強力な味方を召喚することができる。
基本的なステータスはユウナのレベルに依存するが、プレイヤーはそこからスフィアを使って召喚獣のステータスの底上げができる。

余ったアイテムが売られがちなRPGだが、本作では換金以外の選択肢を提示してくれている。
本作は様々なところで攻略、育成に自由度を持たせているのだ。

グラフィック:20年たっても圧倒される美しさ

今回私はPS4用のリマスター版をプレイしたが、元々本作は2001年発売のPS2用ソフトだ。よって現代のゲームと比較するとグラフィックはさすがに劣ってしまう。

それでも時折流れるムービーシーンでは非常に美しい映像が展開されて、本当に2001年のゲームかと疑ってしまうほどだった。

もう一度言うが2001年発売のゲーム

特に本作では「水」の表現に拘っており、水が流れたり光を反射したりするシーンは実写に近く感じた。
プレイ中のゲーム画面録画禁止区間でスクリーンショットを用意することができなかったが、例の「水中デート」のシーンでは鳥肌が立つレベル。是非実際にプレイして見てもらいたい。

マップ攻略の際は視点変更ができないので固定カメラになる。だが、どのマップもかなり作り込まれていて、製作側から見て欲しい所をしっかりと見させられている感じがして、むしろ本作では固定カメラの方が向いていると感じた。

また、マップの種類も豊富で、ジャングル、砂漠、雪山など様々な景観を楽しむことができる。

その他の要素:豊富なミニゲームとやり込み要素

戦闘だけでなく、謎解きやサブゲームなど、様々な要素で楽しませてくれるのがFFXだ。

適切な場所に適切なアイテムを置いて先へ進んでいく

寺院攻略では謎解きパートが始まり、頭を抱えながら様々なギミックを解いていく。
謎解きは寺院ごとに特徴が異なっていて、飽きることなく楽しむことができた
(中には30分くらい立ち往生したものもあったので謎解きが苦手な人は苦労するかもしれない…)

そして以外と奥深いミニゲーム「ブリッツボール

ミニゲーム用のレベルまで用意されてる作り混み具合

これが意外と難しくて歯ごたえのあるゲームになっている。
このミニゲームのルールの説明だけでかなりの文量になりそうなので大幅に割愛するが、要は水中サッカーである。
パス、シュート、ブロックなどキャラごとに得意なことが異なっていて、キャラごとの長所を活かすのが勝利への鍵となる。
本気でやり込むと本編に匹敵するぐらいのプレイ時間になると思われる。

その他にも、他言語を操る部族の言語を学習したり、指定された敵モンスターを捕まえたり、チョコボという乗り物でレースをしたりと色々なアソビが用意されている
どれも本気でやり込めば相当な時間がかかるやり込み要素だ。

シナリオ:単純明快で奥深いストーリー

開発陣が最も力を入れたであろうシナリオについて解説、というか語らせてもらう。

物語全体の構成について、
本作ではとにかく濃密なストーリーが味わえる。濃密で奥深いほど重層的で難解なストーリーになりがちだが、本作は始めから最後まで「シン」という超常現象的なモンスターを倒す、という大筋をもとに物語が進行していくので、単純明快で分かりやすい内容になっている。また本作ではサブキャラに焦点を当てたサブミッション的要素が存在しないため、メインのストーリーに集中できる。

かと言って、単に表面的なストーリーではない。様々なシーンで各キャラの内面を掘り下げる場面があり、各々の戦う理由を考察できるので物語にのめり込むことができる。

また、プレイヤーが物語に置いてけぼりをくらうことが無いように、主人公が所々でその時の心情を語ってくれる親切な要素もある。

タイトルにも書いたように、私は本作が決意と覚悟を持って前に進む物語であると感じた。
どのキャラも始めは、迷いや葛藤を抱えながら冒険していた。

我々プレイヤーは物語を進める中でキャラそれぞれが正面から迷いを克服し、決意と覚悟を胸に成長していく過程を見ることができる。物語終盤では至るシーンで「この人成長したなぁ…」という感情を持てるぐらいだ。

以下ネタバレ注意



という訳でここからは細かいシーンに分けて心に残ったシーンなどに語らせていただく。

1.眠らない街の本当の意味
物語のスタート地点である街「ザナルカンド」は眠らない街と言われていた。(主人公は元々その街のブリッツボールチームのエースだった)

その街は機械で煌びやかに彩られていて、常に活気が絶えることが無いため「眠らない街」といういわれに至ったことが容易に考察できる見た目だ。

夜でも明るい都市

主人公は「シンのこけら」要はシンの排出する敵モンスターに襲われて何故か1000年後の世界に飛ばされる所が物語の起承転結の起の部分になる。主人公はザナルカンドは1000年前に滅び、現在は人1人存在しない街だと知る。

1000年後のザナルカンド

という感じのストーリーが展開されて、私は自然と
1000年前のシンのこけらに襲われてこんなボロボロになったのだろうかと思いながら終盤までプレイしていた。

しかし物語終盤で衝撃の事実が発覚する。

1000年前のザナルカンドに機械なんて存在しなかったのだ。

逆にザナルカンドは1000年前に他国から機械を使われて滅ぼされた街。

主人公があると信じていたザナルカンドは1000年前のザナルカンドの人達が願った夢であるということが発覚。
要はあまりにもスケールのでかい妄想上の街に過ぎなかった。
誰しも夢の中で眠ることはできない。だから「眠らない街」ザナルカンドというわけである。そして人の夢の存在である主人公もまた…

この事実を知った時の衝撃はとてつもないものだった。今まで思ってたことを全て覆されたわけなのに、その事実が物語と辻褄の合うことに納得してしまえるのもこのゲームのシナリオの凄いところ。

機械に滅ぼされた人たちの願いが、機械に囲まれた賑やかな街というのがまた皮肉的だ。

2.主人公の、父に対する思いの変化
元々主人公は、自分に対する母親の愛を奪っていき、「泣き虫」と馬鹿にしてくる父親「ジェクト」の事が大嫌いだった。さらにいつの間にか母と自分を置いていってどこかに消えたわけだから嫌いになるのも納得がいく。

だがジェクトも1000年後の世界に飛ばされていたこと、ユウナがジェクトを慕っていたことを知り、徐々に自身の父親に対する考えを改めようとしていく。
そんな最中にシンの正体はジェクトであると衝撃の事実が伝えられる。それを知った主人公の

「くっだらねぇ!なんだよそれ!バカバカしい!」

というセリフ。せっかく父親のことを認めようとしてたのに父親がよく分からないバケモノになってる事実。それなら父親への評価を改めても無駄だし、そもそもとして理解が追いつかないというぐちゃぐちゃな感情を表現した秀逸なセリフだと思う。

それでも主人公は前に進んでシンを倒すことを目指して旅をするわけです。しかも周りに心配させまいとその事実を隠して。主人公の心の強さに感服である。

シン(ジェクト)との最終決戦で涙ながらに戦うシーンにはうるっと来てしまった。

最後は召喚獣となったジェクトと戦闘。かっこいいBGMの中、歯ごたえのある難易度で盛り上がる場面

3.ユウナの成長
主人公が1000年前から飛んで流れついた臨海の村「ビサイド」で出会った召喚士ユウナ。

世界に脅威を与えるシンを倒すために旅をするという召喚士の役目を全うしていく真摯な姿勢を終始見ることができる。
主人公もシンを倒すことに大賛成で始めはノリノリでユウナの旅のお供をしていたわけだが、これまた途中で衝撃の事実。

シンを倒すための「究極召喚」をした召喚士は死ぬ

この事実を知った主人公はものすごく自責の念に駆られてしまう。ユウナは自分が死ぬと分かっているのに周りに笑顔を振りまいて旅をしていたこと、その事実を知らずに「究極召喚」に乗り気でいたこと。ユウナのために頑張ってきたことがユウナを苦しめる結果に繋がることを知ってしまったが故の感情である。
(ルールーが主人公に、ユウナのことを好きになるなと言った理由のひとつなのかもしれない)

しかしユウナはこの責任や辛さを全部自分で背負おうとする。だから至る所で周りに迷惑わかけまいと無理した行動をしていた。

「水中デート」のシーンまでは。

そのシーンでは主人公がユウナの悩みや責任を一緒に背負っていくことを言葉にせず伝えた場面。
その後改めて旅を続けることを伝えるユウナだが、その言葉は今までと違って決意と覚悟が固く現れていた。
昔のゲームなのでキャラの表情は特に変わったりすることは無かったが、そのシーンではユウナの強い覚悟が伝わってくる、素晴らしい場面だった。

「ここまで感情を揺さぶってくるかFFX」
なんて言葉もさすがに出てしまう。

このシーン以降、ユウナは自分の気持ちを臆せず言うようになり、ユウナの大きな成長を実感できた。

4.過去と向き合う
主人公が共に旅をするメインキャラのほとんどが過去に何かしらのしがらみを持っている。

例えば
ワッカは弟がシンに殺されていて、弟がエボンの教え、つまりその世界の宗教に背き機械武器を使ったことで異常なまでにエボンの教えに固執するようになっていた
だが異界(死人と向き合える世界)で弟と向き合い、ユウナのガードを全うするという強い覚悟によって、迷いを断ち切っていく。

常に主人公の指南役として立ち回っていたアーロンも過去に囚われていた。
ジェクトとユウナの父であり、究極召喚を行ったブラスカを救うことができなかった過去を悔やみ、1度死んでもなお、現世に残っていた。

(他のみんなが異界で過去と向き合ってる中、アーロンが異界に行かなかったのは、過去と向き合いたくないからと既に死人だからという2つの理由があったことに後から気づいた時は鳥肌が立った。)

はじめは自分が成し遂げられなかったことを主人公にやり直しさせる意図が垣間見えたが、最終的には主人公と過去の自分を重ね、自分と同じ道を辿らせはしないと決意するシーンも中々に粋な場面。
最終局面の

「自分の心で感じたままに物語を動かす時だ!」

というセリフはその強い思いを感じられる名言だと思う。


5.最大の敵であり最大の被害者
シンを倒す過程で幾度も主人公の前に立ふさがる「シーモア」始めから明確な悪役として描かれるキャラである。(例のキスシーンで全プレイヤーのヘイトを買う最悪な悪役)

彼は最悪の悪キャラでもあると共に本作最大の被害者でもあると思う。
彼は人間とグアド族のハーフということから人種差別を受けていた。

そんな中幼くして母親を犠牲にして究極召喚を行ったが故に運命そのものを憎むようになってしまった。だから自身がシンそのものになって世界を滅ぼそうとしていた。

終盤でその事実が明かされ、いたたまれない気持ちになってしまった。
運命を打ち破って未来を手に入れた主人公たちと、運命に囚われ現在を破壊しようとするシーモア。

シーモアも過去ときちんと向き合えていたら救えたのかもしれない…そう思えてしまった。

総評:JRPGの完成形

これはもうJRPGのあるべき姿を体現した作品と言っても良いのではないだろうか。幅広い戦略を考えることのできる戦闘、近年のゲームでも中々ない、自由度の高すぎる育成システム、見るものを圧倒する映像美、そして涙無しでは見られない濃密なストーリー。

ゲーム全体として、シンプルな分かりやすさとのめり込んでしまう奥深さを兼ね備えている。普段ゲームをあまり触らない人にこそやって欲しい1作だと感じた。
それでは最後に

「いなくなってしまった人たちのこと、時々でいいから思い出してください」

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