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【山雅2022レビュー】vs藤枝|J3第12節

山雅にとって、今季ここまでのベストゲームではないだろうか。
試合を通して、よく守れていた。
一方で、無失点に抑えられたのは、藤枝の攻撃が完璧ではなかったから、というのもある。
藤枝の攻撃面の問題、そして、今季リーグ戦初出場となった、田中パウロ淳一という選手の印象について、振り返っていきたい。


2022.6.11
J3 第12節

松本山雅FC
×
藤枝MYFC


※本ブログ投稿時点で、第15節まで終了していますが、最新の試合についての内容ではありません。
※第13節以降は観ていない状態でのレビューとなっています。

スタメン

山雅(緑):4-4-2
藤枝(白):3-4-3

試合展開

・藤枝の攻撃

藤枝は攻撃時、前線に5人以上いる時間が長く、それだけ人数をかけて攻撃を行う。
CB秋山や小笠原が積極的に上がっていくのが特徴的で、人数のかけ方が強引だなと感じられることもあった。
それでも、山雅が4バックで守っていた間、藤枝はチャンスを何度も作っていた。

サイド攻撃において、藤枝は人数をかけながら、ハーフスペースを狙いにいくことが多かった。
山雅は4バックのとき、基本的にはボランチ、SH、SBの3人が、藤枝のサイド攻撃に対応していたが、ハーフスペースを狙ってくる選手に対して、誰が対応するかが曖昧だった
CBに関しては、中央の守りを優先するため、ハーフスペースで対応できる場合とそうではない場合があった。
藤枝はハーフスペースを狙うことで、サイドを突破することができていた。

15'35"のシーン
サイドで人数をかけつつ、横山がハーフスペースを狙う。

前半26分に、山雅はシステムを5バック(5-2-3)に変更する。
左右のCBが、ハーフスペースを狙いにくる相手選手を受け止める形で対応し、守備が安定するようになった。

同じような場面を作られても、ハーフスペースで山雅CBが待ち構える。

山雅がシステムを変更して以降、藤枝がうまく山雅の守備を崩すようなシーンはあまり見られなくなってしまった。

・藤枝の攻撃の問題点

藤枝の攻撃がうまくいかなかった理由を4つ振り返る。

①WBの背後をうまく使えない
山雅が毎試合のように狙われているWBの背後を、藤枝としても狙っていないわけではなかったが、うまく利用していくことができていなかった。

藤枝はWBの背後に元々選手を配置していなかった。
WBが前に出て行ったときに、内側にいる選手が外に流れていくという形を取っていた。
この形だと、パスを受ける選手は、体が外向きになる
そうすると、ついて行った山雅の選手が厳しく体をぶつけて対応することができてしまう。

60'11"のシーン
鈴木は体が外向きになってしまう。

もし、WBの背後に元々選手がいる場合、状況は変わってくる。

WBの背後でパスを受ける選手は、内側を向いてボールを持つことができる
そうすると、山雅DFはなかなか寄せることができない。
突っ込みすぎると、簡単にかわされ、大ピンチになってしまうからである。
DFが寄せてこないので、この位置で攻撃の起点を作ることができる。

WBの背後に元々選手がいる場合
DFは、かわされるのが怖いので、迂闊に飛び込めない。

山雅はこのやり方でいつもチャンスを作られ続けていたわけだが、今回藤枝がこのやり方をしてこなかったのは少し幸運だった。

②FWとMFの間のスペースをうまく使えない
FWとMFの間のスペースに選手がいなかったり、入って来るのが遅かったり、いるけど遠かったり、とにかく、このスペースをうまく使えていないことが、特に前半は多かった。

主な原因としては、ボランチの鈴木と水野の動きにある。
鈴木は前線に上がっていき、水野は下がってボールを受けにいくことが多く、中央に誰もいないシーンがよく見られた
他の選手がこのスペースに入ってきたりもしていたが、いてほしいタイミングで誰もいないということが多かった。

中央に誰もいなくなる。

FWとMFの間のスペースに選手がいることで、相手のMFを釣り出せる。
そうすることで、ライン間にスペースができるのだが、藤枝はこれができている時もあれば、できていない時もあるという、中途半端な状態だった。

③同サイドで攻め切ろうとしすぎる
山雅が5バックに変更して、サイドを簡単に突破することができなくなった。
その場合、サイドチェンジをしながら、相手の隙を探していく必要があるが、藤枝は強引に同じサイドを崩そうとチャレンジし続けてしまう場面が多かった。
人数をかけて攻撃している分、近い距離に味方が多くなっているので、いけそうだなという判断をしてしまうのだろう。
しかし、山雅の選手たちもその分密集してきているため、ワンタッチプレーが連続で成功するとか、守備側のミスがあるとか、そういう場合しかうまくいかない状況だった。

④サイドを変えようにも、プレースピードが遅い
無理して攻撃せず、横に繋ぐという判断をした場合も、スムーズな展開がなかなかできていなかった。
CBがボールを受けたときに、次にどこへパスを出すのか、それとも自分で運んでいくのか、などのプレー選択が遅いように感じた。
せっかくサイドチェンジをしても、その後のプレーに時間がかかってしまうので、山雅の守備が整ってしまっていた。


藤枝の攻撃がうまくいかないときは、いずれかの原因でうまくいっていないということが多かった。


・山雅の守備

WBの背後を藤枝がうまく狙ってこなかったとはいえ、この試合の山雅の守備は非常に安定していた。
選手たちが集中して、うまく守っていたと思う。

特に良かった選手を一人挙げるなら、安東だろうか。
縦や横へのスライドが非常に早く、ピンチの時には、危険な位置を予測してカバーに入るなど、獅子奮迅の活躍だった。

一方で、不安なプレーをしていた選手もいる。

まず菊井
出ていくべきではない場面で、プレスに出ていってしまう
具体的には、14'22"のシーン。
左後ろと右後ろの両方に藤枝の選手がいて、しかも味方がその二人へのスライドが間に合っていない状況で、菊井はCBの小笠原に寄せに行ってしまっている。
そのせいで、結果的にピンチになりかけていた。

14'22"のシーン
菊井が出て行ってしまったせいで、このシーンでは鈴木が前を向いてボールを持つことができていた。

菊井の飛び出して行ってしまう癖はこの試合に限らず、定期的に見られる。
山雅の選手で言えば、例えば佐藤は、同じような場面で無理に出ていかず、我慢できることが多い。

そして、外山と住田
この二人は球際の弱さが気になってしまう。
球際の闘いで勝つこともあれば負けることもあるのは仕方ないのだが、それにしても、あまりにも簡単に負けてしまうシーンがある。
勝てないにしても、もう少し粘ることができれば、味方のカバーが間に合う可能性がある。
WBやボランチという、守備的なポジションでプレーしているので、もう少し球際の強さを求めたい。

来季J2で戦えることになった場合、こういうシーンが試合で出てしまうと、対戦相手は見逃してくれないのではないかと思っている。


試合結果

松本山雅FC 2
34' 小松  51' 小松
藤枝MYFC  0

ハイライト振り返り

ハイライトに載っているシーンから、気になった部分をピックアップして振り返る。

試合時間50'32"~

2点目のシーン。
菊井の外側を走っていく外山に対しての、菊井の浮き球のパスは見事だった。

ただ、外山の動きに関しては少し気になる。
外山は菊井にパスを出した後、菊井の外側を周っていくのだが、内側を走った方が良かったのではないか。

内側を走っていれば、もう少し菊井はパスを出しやすかったと思う。
また、外側を走ったことで、外山と対面していた久保を連れてくる形になったので、菊井が使えるスペースが狭くなってしまっていた。

外山が内側を走っていれば、菊井は浮き球という難しいパスをしなくても、チャンスを作れていた可能性がある。

田中パウロ

今季リーグ戦初出場を果たした田中パウロについて触れていきたい。
この選手のプレーを観たのは今回が初めてなので、印象が今後変わっていく可能性は十分にあるのだが、今のところは、プレーしていないのが勿体無い選手だと感じている。

・特徴

田中パウロは、ドリブルもできるが、ドリブラーというよりはストライカー寄りのウイング、というイメージである。
プレミアの選手で言えば、ウエストハムのボーウェンに似ている。
サイドで起点を作りつつ、チャンスの時には中にも入って行くという感じである。

まず、田中パウロの長所を挙げていく。

  • ボールが来る直前に相手に体をぶつけ、自分のスペースを作ることができる

  • キープ力がある

  • 奪いに来る相手をかわすことができる

  • 周りの味方を使える

  • シュートや、それにつながるボールコントロールが上手い

  • シュートのアイデアを持っている

  • 守備で貢献できる

  • 攻→守の切り替えが早い

この試合で長所が分かりやすかった場面として、まず43'50"の決定機のシーン。
うまく守られてしまってはいるが、股抜きを狙うアイデアは良かったと思う。

そして、8'50"、45'32"、58'55"のシーン。
ボールを奪われた後の切り替えが非常に早く、カウンターを未然に防ぐことができている。

せっかくなので、天皇杯のハイライトから良かったプレーを振り返る。

vs北陸大学

前半31分
シュートも、シュートまで持っていく形も上手い。

前半45分
決してサボることなく、全力でダッシュして自陣ゴール前まで戻っている。

後半15分
相手に体をぶつけてスペースを作り、そこからのトラップとシュートが上手い。

vsジュビロ磐田

前半4分
相手GKに止められないようにするために、左足アウトサイドでシュートを打っているのが上手い。


次に、短所を挙げていく。

  • スピードがない

・・・他に思いつかない。

・横山との比較

山雅の中でポジションを争うライバルとなっているのは、横山だろう。
その横山と比較して、違いを見ていく。

田中パウロの方が優れている点としては、まず、味方を使う意識が高いという点である。
横山は、ボールを持った時に、目の前の相手に集中しすぎて、周りが見えていないことが多い。
田中パウロの方が、味方とのコンビネーションで崩していくプレーは期待できる。

そして、守備面の貢献度も田中パウロの方が高い。
横山は、ある程度守備を免除されているかもしれないので、一概には言えないのだが、少なくとも田中パウロに関しては守備面でも信頼できる選手である。

逆に、横山の方が優れている点としては、やはり、圧倒的なスピードである。
雑なクリアボールも、スピードを活かして拾ってくれるし、カウンターを一人で完結させてしまうこともできる。

そして、それこそが、横山が起用される理由だろう。

今の山雅は、攻撃手段がカウンター(とセットプレー)しかないため、ロングボールに追いついたり、長い距離を一人で運んだりして、そのまま点を決めてきてしまう横山の能力は必要不可欠である。

田中パウロを起用した場合、スピードはないが、キープ力はあるので、ボールを保持することはできる。
ボールを保持したら、そこからビルドアップを行うことになるが、山雅にはその形がない。
そのため、田中パウロのキープ力は、時間を作ることでチームを助けてはいるが、その先の結果には繋がりづらい。

・今後

田中パウロは、ビルドアップの形を持っているチームであれば、もっと活躍できる選手である。
シーズンを通してプレーすれば、二桁得点も十分狙える選手だと思う。

山雅で試合に出るためには、山雅がビルドアップの形を持つようになるか、田中パウロが俊足になるかのどちらかが必要である。
そもそも、カウンター適性もないわけではないし、横山との共存もできると思うのだが、いずれにせよ、今後どうなるかは見てみなければ分からない。

余談

チーム事情があるにせよ、いい選手がプレー機会に恵まれていないのは純粋に寂しい。
アーセナルでスミスロウがなかなかスタメンになれないのと同じような寂しさである。
今後ぜひともプレー時間を増やしていってほしい選手である。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

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