【山雅】山雅の今後を憂う|J3第15節【レビュー】
イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている戦術オタクによる、松本山雅のレビュー。
2023.6.24
J3 第15節
いわてグルージャ盛岡
×
松本山雅FC
監督・選手のコメント↓
~スタメン~
~はじめに~
前回のレビューで、シンプルにサイドからクロスを上げ続ける今のサッカーでは、相手のレベルが高ければ勝てなくなるし、小松も活躍できなくなるだろう、という話をした。
そして、いわて戦はまさにその通りの試合になってしまっていた。
いわては個々の選手のレベルが高く、守備時の集中力も非常に高かった。
そのため、山雅の選手たちをゴール前でフリーにしてくれることはほとんどなかった。
もちろん、小松も相手CBの執拗なマークに苦しんでいた。
チャンスらしいチャンスは、後半ロスタイムのヘディングシュートくらいしかなかった。
やはり、相手のレベルが高い場合、今のサッカーでは厳しい。
~監督のコメントから察する~
監督の試合後コメントから、山雅の限界が見えてしまったような気がする。
横から裏を取る
「横から裏を取る」というのは、おそらく、高い位置を取ったSBから、相手DFの背後に抜けるSHへパスを通す、ということだろう。
しかし、そもそも、CBとSBの距離が遠すぎることが非常に多く、SBはパスを受けようと思ったら、下りてくるしかない。
つまり、SBは高い位置を取り続けることができない。
低い位置から強引に裏を狙っても、相手は対応しやすい。
そのため、この状況で「横から裏を取る」のはほぼ不可能だ。
それでも、低い位置から強引に裏を狙おうとするプレーが繰り返し見られる。
「横から裏を取れ」と監督から指示されているから、諦めずにやり続けてしまうのだろう。
仮に、SBが高い位置を取れている場合。
SB(下川)が相手SB(石田)を釣り出すことができれば、その背後にスペースができるので、SH(滝)が裏に抜け出すという選択肢が生まれる。
(とはいえ、基本的にはSHに対しては相手ボランチやCBがついてくるので、タイミングは選ぶのだが)
ただ、ほとんどの場合は、相手SH(桐)がSBに対して寄せてくる。
そのため、SHが背後を狙っても、相手SBに対応されるだけであり、うまくいく可能性は低い。
この場合は、無理に裏へパスを通そうとするのではなく、横に繋いで相手を揺さぶっていく必要がある。
揺さぶり・ブロックの中に刺す
SBに対して相手SHが寄せてくる場合は、横に揺さぶる必要がある。
そのためには、当然、SBの横に味方がパスコースを作らなければいけない。
ただ、今の山雅はそれができない。
可変せず、2CB+2ボランチでビルドアップしている場合、ボランチ(パウリーニョ)がサポートに行っても、相手FW(佐藤)がついてくるので、パスを受けられない。
可変して3バック+1ボランチになっている場合、中央にいるボランチ(安東)は、サイドに流れていくと中央に誰もいない状態になってしまうので、カウンターを受けることを考えると、中央を離れづらい。
そもそも、遠すぎてなかなかサイドに行けないことも多い。
どちらにしても、横に揺さぶる形を作ることができていない。
解決策の一つとしては、菊井がサイドに流れてパスを受けに行く、というのが考えられる。
菊井がパスを受けることで、相手のブロックの中に刺すような縦パスを出していくことができる。
この形ができている時も試合によってはないわけではないのだが、再現性が高くないということは、戦術ではなく菊井の気まぐれなのだろう。
また、縦パスが刺せそうな状況を作ることができたとしても、実際は刺すことができていない。
なぜなら、ライン間にいる選手たちのポジショニングが悪いからである。
菊井のポジショニングが悪いという話は前回のレビューでしたが、他の選手たちも基本的に良くない。
相手DFにすぐ寄せられてしまいそうな立ち位置を取っていることが多い。
もう少し下りてくるだけでも、縦パスが入りやすくなるはずだ。
「横から裏を取れ」と言われているせいで、裏抜けを狙うための立ち位置ばかり取ってしまうのかもしれない。
ロングボール
常田からロングボールで右サイドへ展開するシーンはよく見られる。
このとき、SB(宮部)には、基本的には相手SH(藤村)が寄せてくる。
このときも、やはり横に揺さぶるためのパスコースがない。
場合によっては、SH(榎本)が下りて受けにくることもある。
ただ、そうなると、今度はライン間に人がいなくなるため、縦パスを出すことができなくなる。
ロングボールを使っても、山雅は攻撃をスピードアップさせることができない。
いつもできている?
いつもできているけど今回はできなかった、というのはよく分からない。
仕組みは変わっていないから、サッカーの内容自体も特に大きな変化はない。
できていたかどうかの判断軸が、「結果的に点が取れているかどうか」になってしまっているように、自分の目には映る。
そして、いつもできているけど今回はできなかった、と考えていることは気がかりだ。
これはつまり、
「いつもはうまくいっているから仕組み自体に問題はない。今回できなかったのは選手たちがうまくやれなかったからだ」
と考えている、ということになる。
即ち、仕組みを改善することは考えていないということだ。
まとめ
「横から裏を取れ」と言うけどできない。
「揺さぶりを」と言うけどできない。
「ブロックの中に刺せ」と言うけどできない。
「ロングボールをうまく使え」と言うけどできない。
どれもできない。
仕組み上、できないのである。
でも監督は「やれ」と言うし、できなければ「できないなあ」と嘆く。
仕組み上できないのだが、監督は仕組みに問題があるとは思っていない。
選手のクオリティの問題だと思っている。
だから、山雅のサッカーが今後良くなっていくとは考えづらい。
~試合結果~
いわてグルージャ盛岡 1
16' 和田
松本山雅FC 0
~心配な未来~
今年昇格できなければ、本当にゲームオーバーかもしれない。
戦術がしっかりしていれば、今年がダメでも来年なら…とも思ったが、現時点では戦術が十分機能しているようには見えないし、改善しようという姿勢も感じない。
去年、そして今年と、戦術が機能しなくても選手の質で殴り勝つようなサッカーをやってきた。
今年昇格を逃し、複数の主力を失った場合、もう来年以降は質で殴り勝つというのもだいぶ難しくなってくる。
昇格を二度逃し、戦術も不十分となれば、「来年こそ一緒に頑張ろう」と言ったところで、能力の高い選手たちは山雅に残ろうとは思えないだろう。
去年、あれだけの戦力を有しておきながら昇格できなかったのは、致命的だったと感じる。
~昇格するための唯一の方法~
今の山雅のウィークポイントはボランチだと思う。
今の山雅のボランチには、核になれる選手がいない。
強いて言えば安東だが、安東はカバー範囲が広いわけではなく、展開力も高いというほどではないので、少し心許ない。
(もちろん能力が高い選手ではあるが)
しかも怪我がちである。
昇格のためには補強が必要だ。
そして、この試合で欲しいと強く思ったのが、いわての17番、李栄直(リ・ヨンジ)である。
山雅のボランチの誰よりも能力が高い。
特徴をいくつか挙げると、
カバー範囲が広い
スライドが早い
強度が高い
足元の技術がある
キープ力があり、簡単に失わない
展開力がある
キックが上手い
身長が高く(187cm)、セットプレーでも武器になる
など、とにかく何でもできるという印象であり、チームの核になれる選手である。
カバー範囲が広いというのがとにかく大きい。
山雅のボランチにそういう選手はいない。
李栄直をチームの核に据えて、横に安東・住田・喜山の中で調子の良い選手を添えるという形ができれば、山雅はかなり強くなる。
今の山雅は選手の質で殴り勝てるかどうかという部分が非常に重要な要素になっているが、李栄直を獲得できれば、殴り勝てる試合もだいぶ増えるだろう。
山雅は今のままなら昇格の可能性は25%くらいかなと思っているが、この選手を取れれば45~50%くらいまで跳ね上がるのではないかと思う。
なぜJ3でプレーしているのか分からない。
それほどの選手である。
今のサッカーで今年昇格したいなら、死ぬ気で取りに行くべき選手だと感じた。
(現実的な話ではないかもなあと思いつつ)
~終わりに~
今のままでは明るい未来がなかなか見えない。
何か変化が欲しい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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