【山雅2022レビュー】vs福島|J3第17節
基本的に、福島がボールを握り、山雅が守るという展開になっていた。
この試合における、福島のビルドアップの改善案と、今の山雅における一番の問題点だと考えている、パウリーニョのプレーについて、振り返る。
2022.7.17
J3 第17節
松本山雅FC
×
福島ユナイテッドFC
※第19節は観ていない状態でのレビューとなっています。
~スタメン~
~試合展開~
両チームの攻撃について振り返る。
福島の攻撃
まず、ボールを支配する時間が長かった、福島の攻撃について。
・基本的な動き
福島はビルドアップの際、ボランチやCBでパスを回して時間を作りながら、左右CBの雪江あるいは堂鼻が高い位置を取り、2-3-5のような形になることが多い。
山雅はプレスをほとんどかけてこないので、福島としては基本的にボールを保持することはできていた。
ただ、山雅の5-3ブロックをいかにして崩すかという点において、苦戦していた。
・狙っていた形
福島は、主にサイドを崩そうと何度もトライしていた。
例えば、7'35"〜のシーン。
右WB田中に対して、山雅のWB外山が出ていく。
外山の背後にできたスペースに対して、シャドーの新井が流れていく。
新井に対してはCB常田がついていくが、その常田が空けたスペースに対して、ボランチの樋口が飛び込んでいく。
しかし、その樋口に対しては、CB大野が、FW高橋のマークを住田に任せてスライドし、対応する。
結局、このシーンでは、新井に対してパスを出すが、常田が対応し、スローインに逃れていた。
福島は、山雅WBが出てくる動きに合わせて、このように複数の選手がスペースに入っていく形を何度も作っていた。
おそらく、チームとして狙っていた形だったのではないかと思う。
ただ、その度に山雅DF陣がうまくスライドして対応し、ピンチを防いでいた。
・苦しむシャドー
シャドーとして出場していた長野や新井にとっては、非常に難しい試合だったかもしれない。
高い位置にいれば、基本的に山雅CBにマークされてしまう。
だからと言って下りていくと、今度はIHにマークされてしまう。
いい形でボールを受けるのが大変そうな試合展開になっていた。
・チャンスは作る
ビルドアップで山雅のブロックを崩すというのは難しそうだったが、果敢に仕掛け続けることにより、チャンス自体は作っていた。
崩しきれなくても、クロスを上げればこぼれ球の行方次第でシュートチャンスができるし、山雅の選手がうまくクリアできなければ、コーナーキックになり、セットプレーのチャンスにもなる。
山雅のゴールを脅かすシーン自体は複数見られていた。
山雅の攻撃
次に、山雅の攻撃について。
・基本的な動き
山雅がビルドアップを行う際、菊井、住田、パウリーニョの誰かが最終ラインに下りていくことが多い。
そして、右WBの前が前線に上がっていき、CB下川がWBのようにサイドに流れる。
その下川から、とにかく福島DFの背後にロングボールを送り続ける。
当然、福島側も裏抜けを警戒しているので、起点を作ることを全力で阻止しようとしていた。
それでも、横山のスピードや、後半から出場したルカオのフィジカルを生かし、強引に起点を作ることに成功していた。
・カウンター
ブロックを作って守りながらボールを奪い、うまく横山にパスが入ったら、ひたすらにドリブルで仕掛けて、ボールを前へ運んでいた。
~試合結果~
松本山雅FC 1
3' 住田
福島ユナイテッドFC 0
~ハイライト~
~福島の改善案~
山雅の守備ブロックを崩し切ることがなかなかできていなかった、福島の攻撃について考えていきたい。
先述した通り、この試合ではシャドーの選手たちが、山雅IHやCBに常にマークされ、活躍しにくい展開になっていた。
シャドーの選手がいい形でボールを持てるようにするために、もう少し工夫が必要だったのではないかと思う。
その工夫として方法は色々あると思うが、一つ挙げるなら、FW高橋のポジショニングである。
例として、右WB田中に対して、左IH菊井が寄せてくるシーンについて考える。
菊井が田中に寄せる時、MFパウリーニョと住田は、当然左にスライドしていく。
このとき、左シャドーの長野は、下川から離れるように立ち位置を取ることによって、フリーになっているように見える。
だからと言って、長野までパスを繋ごうとすると、その間に住田のスライドが間に合ってしまう。
この住田のスライドを、FW高橋のポジショニング次第で遅らせることができる。
高橋には、タイミングよく、パウリーニョと住田の間に顔を出すように下りてきてほしい。
急に高橋が下りてくることで、住田は高橋と長野のどちらに寄せるべきか一瞬迷う。
長野よりも高橋の方がゴールに近い分、むしろ高橋の方に寄せてしまうということも十分ありえる。
そうすれば、長野はいい形で前を向いてボールを持つことができる。
この状態であれば、シャドーの選手たちは、ドリブルなりパスなりシュートなり、自由に仕掛けていくことができる。
このような形を作ることができるようになれば、決定的なチャンスは増えていくのではないか。
ちなみに、FWが下りてくる動きは、プレミアリーグではハリーケイン、フィルミーノ、そして移籍したがマネやラカゼットあたりが非常に上手い。
J3では、藤枝のFW土井が、少なくとも第12節の山雅との試合においては、頻繁に下りる動きをしていたのが印象的だった。
~パウリーニョへの疑問~
パウリーニョはパスコースを作ろうとする意識が低い。
中央の選手がパスコースを作らないのは大きな問題になっている。
という話をブログで度々している。
味方へのサポートがあまり上手ではない選手なのかな、くらいに最初の頃は思っていたのだが、山雅の試合を継続的に観ていく中で、
「パウリーニョは、パスを受けることを怖がっているのではないか」
という疑問を感じるようになった。
そう感じる根拠となるプレーは、主に以下の4つ。
首を振って他のところを見ているという雰囲気を出すことで、自分にパスを出させない
相手選手の陰に隠れるように、あるいは相手選手の近くにいるように動く
相手選手から離れようとしない
パスを受けるために寄って行くスピードが明らかに遅い
パウリーニョはこれらのようなプレーが繰り返し見られているし、今季試合を観てきた限りでは、あまり改善しているようにも見えない。
それぞれの根拠について、どういうことか補足していく。
根拠①
首を振って、他のところを見ているという雰囲気を出すことで、自分にパスを出させない
味方がパスを受けて、顔を上げるのとほぼ同じタイミングで、パウリーニョは首を振って周りを見始め、ボールを持つ味方となかなか目を合わそうとしない。
周りの状況を把握するのは当然必要なことなのだが、パウリーニョの場合は、首を振るタイミングが良くないだけでなく、首を振ってから正面を向き直すまでの時間が長すぎる。
普通は一瞬だけ首を振って、すぐ正面を向き直すものなのだが、パウリーニョの場合はしばらく首を振ったままである。
パスコースを探している味方からすると、パウリーニョが全然自分の方を見てくれないので、仮にパウリーニョがフリーであったとしても、パスを出すことができない。
根拠②
相手選手の陰に隠れるように、あるいは相手選手の近くにいるように動く
味方がボールを持った時には、普通であれば、相手選手にコースを切られないようにしながらパスコースを作ろうとする。
しかし、パウリーニョの場合は、むしろ相手選手の背後に移動してパスコースを自ら消してしまったり、相手選手にわざわざ近づいて、自らマークされるような位置に立つ。
当然、味方はパウリーニョにパスを出せなくなる。
根拠③
相手選手から離れようとしない
相手選手にマークされているのであれば、基本的にはその相手から離れるように動いてパスコースを作るべきなのだが、それをしようとしない。
根拠④
パスを受けるために寄って行くスピードが明らかに遅い
もっと急いでパスコースを作りに行くべきだと思われるシーンでも、パウリーニョはゆっくりジョギングしているだけであることが多い。
具体的なシーン
この試合における、根拠となる具体的なシーンの試合時間は以下の通り。
(重複しているシーンもあり)
①首を振って他のところを見ているという雰囲気を出すことで、自分にパスを出させない
4:03、4:07、13:07、13:16、23:07、
24:24、24:27、59:15、61:31
②相手選手の陰に隠れるように、あるいは相手選手の近くにいるように動く
11:01、13:11、61:31
③相手選手から離れようとしない
24:40
④パスを受けるために寄って行くスピードが明らかに遅い
23:07、59:15、59:18、61:26
~パウリーニョの問題点~
「パウリーニョは、パスを受けることを怖がっている」というのが本当なのかどうかは、本人にしか分からない。
仮に本当だとして、では、なぜ怖がってしまうのかと考えた時に、やはり、パウリーニョの技術面に問題があるからではないかと思う。今回、問題点として2つ挙げる。
問題点①
一つ目は、視野が狭いということ。
パウリーニョは首を振って周りを見てはいるのだが、それがプレーに生かされていないと感じるシーンが多い。
フリーなのに前を向けない
フリーなのに、焦ってしまって、味方に押し付けるようにパスをしてしまう
フリーで待っている味方を使えない
これらのようなシーンがパウリーニョは多い。
問題点②
二つ目は、細かいボールタッチが得意ではない、ということ。
ボランチであれば、
ファーストタッチで次のプレーをしやすい場所にボールを置く
細かいドリブルで相手のプレスをいなす
スペースがあればドリブルでテンポ良く運んでいく
といったプレーが求められるが、パウリーニョは、特にプレッシャーがかかっている場面では、繊細なボールタッチができていないように見える。
まとめ
視野が狭く、細かいボールタッチがあるわけでもないので、360°どこからでも相手が寄せてくる可能性のあるピッチ中央でのプレーは苦手なのではないかと思う。
パウリーニョ自身も、苦手だと自分で分かっているからこそ、あまりパスを受けたがらないのではないか。
解決策
なかなかパスを受けてくれないパウリーニョだが、「今は100%安全だ」と分かっている状況では、結構積極的にパスを受けようとする姿勢が見られる。
なので、「ビルドアップの時は必ず最終ラインに下りる」ように、パウリーニョの役割を固定してあげてもいいのではないか。
最終ラインであれば、背後から相手が来ることはあまりないので、前方180°を見ていればいいことになり、パウリーニョも安心してプレーしやすいはずである。
こうすることで、パウリーニョの負担を減らしてあげることができるのではないかと思う。
~終わりに~
パウリーニョがパスを受けるのを怖がっているかどうかは分からないが、パスコースを作れていないという問題は確かに存在している。
この問題に関しては、なかなか改善が見られないので、チームとしては、問題として捉えていないのかもしれない。
ただ、そうなると、最近の得点力不足は、前線の選手たちの責任にされてしまっているのではないか、という不安がある。
もちろん、決めていれば、というシュートはあるし、フリーの味方にパスしていれば、と思えるシーンもある。
ただ、どんな状況でも、シュートは外れるときは外れるものだと思う。
そもそも、横山がいなければチャンスすらできていなかった、というようなシーンも多い。
ひたすら決定力を求めるだけではなくて、チャンスの数を増やすことで、シュートの本数を増やす、ということももう少し求めていきたい。
チャンスを増やす上で、ピッチの中央にいるボランチがどれだけ顔を出せるかというのは死活的な問題だと思っている。
ボランチがパスコースを作らないのは、一時的に10人vs11人でサッカーをしているようなものだと言っても過言ではない。
その状況で、前線の選手たちが結果を残せず苦しんでいるのを見ると、少し切なくなってしまう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。