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【レビュー】vs沼津|J3 第7節【松本山雅2023】

どんどん不安になっていく。

そんな試合を、イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている、戦術オタクな自分の視点で振り返っていきたい。



2023.4.16
J3 第7節

松本山雅FC
×
アスルクラロ沼津



~スタメン~

山雅(緑):4-2-3-1
沼津(白):4-3-3


~はじめに~

今回は山雅のビルドアップに絞って書いていきたい。


~山雅のビルドアップの現状~

3-1のビルドアップ

山雅はビルドアップの時、ボランチが一人DFラインに下りて、3-1(3バック+1ボランチ)の形になることが多い。
おそらく、守備時2トップで守ってくる相手に対して、3バックにして数的有利を作るためだろう。

ただ、そこからが問題である。

3バックの左右どちらかの選手がボールを持った時、相手FWはパスコースを消しながら寄せてくる。

持井が住田へのパスコースを切りながら寄せる。

この図では、相手の2トップ持井と和田が、住田と野々村へのパスコースを切っているため、パウリーニョには横に繋ぐという選択肢はない。

かつ、ライン間で受けようとする榎本や鈴木に対しては、相手のボランチがスライドしてマークにつく。

相手のボランチがスライドする。

そのため、パウリーニョとしては、せいぜいサイドで張っている藤谷にパスを出すくらいしかできることがない。

藤谷へパス。

そして、藤谷にパスが入った後も問題である。

このとき、相手の2トップは、藤谷から比較的近い住田とパウリーニョのマークにつく。

住田とパウリーニョをマーク。

そのため、藤谷にはサイドチェンジするという選択肢はない。

この状況において、山雅のSHは相手SBの背後を取りに行くような動きをする。
藤谷がボールを持ったら、右SH榎本が相手SBの背後に走り出す。

藤谷が相手SBを釣り出すことができていれば、それでうまくいくだろう。

相手SBを釣り出せれば、その背後にスペースができる。

ただ、藤谷に対して寄せてくるのは、基本的にはSBではなくSHである。

相手SH鈴木が藤谷へ寄せる。

この状態で榎本が相手SBの背後に走ったところで、相手SBやCBがついてくるだけである。

相手SBを釣り出せない状況で背後を狙っても難しい。

つまり、今のままでは、山雅のビルドアップはうまくいかない。


必要なもの

3-1の形でビルドアップするのは非常に難しい。
それでもなお、今の形に山雅がこだわるのなら、必要なものがある。

それは、選手たちの圧倒的な技術である。
六つ紹介する。


一つ目は、SBからのロングボールである。

藤谷がボールを持った時、逆サイドの常田や野々村はフリーになっている。
そこに浮き球でロングパスを通せれば、左サイドから攻め込むことができる。

ロングパスでサイドチェンジ。


二つ目は、CBやボランチのボールコントロールである。

SBからロングパスが飛んで来る時、当然相手は必死でスライドしてボールを奪いに来る。
その状況でも完璧にボールをコントロールし、相手に追いつかれないようなドリブルスピードで運んでいく技術が必要になる。


三つ目は、CBやボランチのキープ力である。

ちょっと寄せられたくらいで焦ってバタバタして視野が狭まったり、あるいはそのままボールを奪われてしまうようではビルドアップなんてできない。


四つ目は、相手をいなす力である。

ボールを運ぼうとすると、相手が横から寄せてくる。
反転することでその相手をうまくいなし、フリーの味方へ繋げば、前進していくことができる。

ターンして相手をいなす。


五つ目は、寄せてきた相手をかわしてしまう力である。

迂闊に突っ込んできた相手を簡単にかわし、そのまま運んでいくことができれば、一気にチャンスが生まれる。

相手をかわし、入れ替わる。


六つ目は、3バックからのロングボールである。

一つ目と似ているが、下図のようにパウリーニョがボールを持っている時、逆サイドで常田はフリーになっている。
そこに浮き球でロングパスを通せれば、左サイドから攻め込むことができる。

ロングパスでサイドチェンジ。


可能なのか

3-1の形でビルドアップするには、相当な技術が必要である。
特にCBやボランチに求められるものは多い。

これらの技術が山雅の選手たちにあるかと言われたら、残念ながらそうは見えない。

喜山はある程度技術があって落ち着きもあるように見えるが、スタメンで出ていた住田・パウリーニョ・常田・野々村では3-1のビルドアップは厳しい。

一応、技術のある菊井・喜山・安東あたりから二人選んでボランチを組めば、もう少しうまくいくようになるかもしれない。


ちなみに

3-1のビルドアップを行うチームとして、プレミアリーグではマンチェスター・ユナイテッドが挙げられる。

CBのラファエル・ヴァランとリサンドロ・マルティネス、そしてボランチのカゼミロとクリスティアン・エリクセン(あるいはブルーノ・フェルナンデス)の4人で組み立てをするシーンが多い。
(SBも絡んでくるので一概には言えないが)

見たことある方は分かると思うが、この4人、全員技術がえげつない。
山雅のように相手の守備がハマりそうな場合でも、個人の力で大体なんとかしてしまう。
というか、技術があるのを相手も分かっているから、迂闊にボールを奪いにいけない。

大金を使って世界トップレベルの選手たちを集められるビッグクラブだからこそ可能なのが、3-1のビルドアップなのだなとつくづく感じる。


~試合結果~

松本山雅FC     3
24' 小松  43' 榎本  82' 山本
アスルクラロ沼津 4
15' 鈴木  26' 和田  86' 篠崎  87' 森


~改善案~

形を変える

3-1のビルドアップが厳しいなら、形を変えればいい。

3-2(3バック+2ボランチ)の形でビルドアップを行えば、今よりも安定するようになるはずである。

3-1の形の場合、例えば下図のようにパウリーニョがボールを持ったとき、左へ展開するためのパスコースは、住田と野々村の二つ。

パウリーニョからのパスコースは2つ。

ということは、相手の2トップがその二つのパスコースを消しながらパウリーニョに寄せていけば、ボールは奪える。
(回避方法はないわけではないが)

相手は2トップで二つのパスコースを切ることができる。

一方、3-2の形(ここでは菊井を二人目のボランチと考える)の場合、パウリーニョがボールを持ったとき、左へ展開するためのパスコースは、住田と野々村、そして菊井の三つ。

パウリーニョからのパスコースが3つに。

相手の2トップは、どうやっても三つのパスコースを同時に切ることはできない。
だからパスが繋がるようになる。

3-2の形にしたからといって技術が不要になるわけではもちろんない。
それでも、3-1の形の時のように、理不尽なほどの技術が要求されるようなシーンは減らすことができるはずである。


ヒントは以前の試合にもあった

これまでの試合でも、菊井がしっかり下りてパスを受けていた時はビルドアップがうまくいっていた。

そのシーンを以前のブログでも紹介したし、菊井が下りる形を増やしたいという話もした。

その話をしたのは、菊井が下りることによって、3-2の形を作ってほしかったからである。


~どこに向かっているのか~

うまくいったシーンを分析していれば、菊井が下りてくるとうまくいくというのは分かるはずだし、「その形を再現性高くやっていこう」という考えになってもおかしくないはず。

でもこのチームはそうしていない。
3-1の形に今もこだわっている。

それでうまくいっているなら全く問題はないが、うまくいっていないという現状がある。

下川のプレーが良くないと考えていたのかもしれないが、だからといって山本を起用したところで、根本的にはあまり変わっていない。
(というか、下川ほどの選手がいても機能しないってよっぽどだと個人的には思うが)

そして、山本を起用するようになってから、急激に失点が増加している。

もちろん山本一人のせいだとは思っていない。
山雅の守備は課題だらけである。

それでも、下川を起用しなくなったことは大きいはず。
多少チームに問題があったとしても、ある程度一人でなんとかしてしまうだけの守備能力が下川にはある。

それだけ下川は(少なくともJ3においては)別格の選手だということ。

その下川をわざわざベンチに置く理由が、よく分からない。
「確かに、これなら下川は出れないよなあ」と思わせるような何かを、自分は見つけられない。
(もしかして怪我でもしてるのか)

山雅の目指す形がはっきりとは見えてこない。


~終わりに~

今の山雅は明らかにカウンター(やロングボール)でチャンスを作っている。

しかし、以前のレビューでも触れたが、カウンター向きの人選にはなっていない。
するつもりもなさそうに見える。
それだけビルドアップにこだわっているのだろう。

ビルドアップを諦めないのであれば、何かしらの変化は必要である。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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