分かっていたのに
不十分な戦術で戦わなければならず苦しむ選手たちを見てきて、自分もずっと苦しかった。
戦術が甘いから勝てない。
しかし、監督は自分の戦術に自信を持っている。
だから戦術が変わらない。
監督が自信を持っているから、選手たちも信じて戦うしかない。
でも戦術が変わらないから勝てない。
しかも、勝てない時に選手たちの責任であるかのような発言を繰り返す。
選手たちが仕組み通りに動かなかったから勝てなかったということなのか。
仕組み通りに動いていれば勝てたのだろうか。
そうではないはずだ。
仕組み通りに動けば勝てるのなら、選手たちは絶対にそうしている。
仕組み通りにやってみてもなかなか上手くいかなくて、だから選手たちが試行錯誤するけど解決策もなかなか見つけられない。
だから勝てないのではないか。
選手たちも完璧ではないし、改善すべき点は多い。
それでも、
「勝ったら仕組みのおかげ」
「負けたら選手のせい」
と取れるような発言が多いのは、選手たちがあまりにも気の毒である。
ただ、監督も必死なのかもしれない。
山口や大宮で思ったような結果が残せなかったため、少しでも自分の力を証明したいのかもしれない。
だとすれば、同情できる部分もないわけではない。
とはいえ、自分が非常に気になっているのは、試合後の振る舞いである。
映像やSNSで見ている限りでは、試合後に選手たちがサポーターからブーイングや罵声を浴びせられている時、監督は選手たちの遥か後ろでただ眺めているだけである。
本来なら、選手たちの誰よりも前に立って、サポーターの声を受け止めるべきではないのだろうか。
部下を守るのが上司の仕事なのではないのだろうか。
自分たちのやってきたことが正しいと、心から信じることができているのなら、それができるのではないだろうか。
下の動画は、自分の考えているイメージに近いものである。
一つ目は、ACミランが試合に負けて、来季CL権を逃しかねない状況になった時の映像。
スキンヘッド・白髭・黒Tシャツの人がACミランのピオリ監督。
そして二つ目は、サポーターにメッセージを発する、SC相模原の戸田監督。
もちろん、監督が頑張っていなかったとは思わない。
選手個人としてもチームとしても、去年より成長していると思う。
それでも、
勝てるほど選手を成長させたのか
勝てるほどチームを成長させたのか
と考えると、そこまでできたわけではない。
例えば、米原は今季成長した選手の一人だと思う。
戦う姿勢を以前より見せるようになった。
ただ、球際でめちゃくちゃ強くなったかと言われればそこまでではないし、守備時のポジショニングが気になる時もあるし、最近の試合ではボールを怖がってなのか、相手のシュートコースに入ろうとしなかったり(36節の3:45)、まだまだ成長の余地が残されていると感じる。
それに、誤解を恐れずに言えば、サッカーをある程度知っている指導者の元でプロの選手たちが一年間必死で努力したら、成長するのは当然と言えば当然ではある。
だから、「成長したかどうか」ではなく、「どの程度成長したか」が重要であり、これが評価軸であるべきだと考えている。
今季山雅を見てきて、内容が良かった試合は数えるほどしかなかった。
結果だけで内容が伴っていない試合は多かった。
それでも、なかなか目に見える改善は最後までできなかった。
だから昇格がどんどん遠のいていった。
去年も、負けて昇格が遠ざかり辛い表情をする選手たちを見て、心が苦しくなった。
今年はそうなってほしくないと願っていたが、最初の数試合を観た時点で、厳しそうだなと感じていた。
このままでは危ないと分かっていたから、何か変われと思って、自分なりに必死にブログで問題点を書き続けてきた。
ブログに書ききれなかったことも山ほどある。
しかし、毎週試合を観ていて、「今回も改善されなかったか」という点を見つける度に、しんどい気持ちが募っていった。
選手たちのことを考えると、やりきれない気持ちが強くなっていった。
そして、それに耐えきれなくなってきた。
だからブログを書くのをやめたし、試合を観るのもしばらくやめていた。
今季、開幕6試合で3勝3分無敗と、非常に良いスタートを切ることができた。
新体制になって戦術も変わった中でのこの結果は、期待感を持たせるものだったのかもしれない。
多くの人が、今年は昇格できると感じていたかもしれない。
それでも、自分はこのチームで昇格は厳しそうだと思っていた。
試合内容は全く十分なものではなかった上に、試合毎により良くなっているようには見えなかったからである。
チーム内外問わず、序盤から一貫して昇格に対して本気で危機感を持ち続け、問題を訴え続けてきた人は、果たして他にどれほどいたのだろうか。
自分は、世界で最もレベルが高いと言っても過言ではないイングランド・プレミアリーグを毎週10試合・年間380試合全て観ている。
それ以外も含めれば、毎年500試合以上観ている。
ただ観るだけではなく、気になるところは納得できるまで何度も見直して分析している。
強いチームがなぜ強いのか
弱いチームがなぜ弱いのか
良い選手はどういうプレーをするのか
というのが、世界トップレベルの試合をひたすら分析してきた自分なら分かる。
そんな自分だからこそ、個人レベル・チームレベルで山雅に足りないものが沢山見えていたし、そんな状況で昇格は厳しいとずっと思っていた。
それだけ分析には自信がある。
分析に自信があるのは、自分がこれまで論理的思考力を鍛えてきたからである。
自分は理系で、特に数学が得意だった。
数学は、与えられた条件から答えを論理的に導き出す科目である。
学生の頃は、結構勉強を真面目にしていた方だと思う。
国立大の医学部に合格するくらいには勉強して思考力を鍛えていた。
だから、論理的思考力にも自信がある。
このままの状況なら厳しいと分かっていたし、だからこそ、たとえ勝った時でも問題点を指摘して改善が必要だと訴え続けてきた。
決して、負けた時だけここぞとばかりに批判してきたわけではない。
ちなみに、山雅は両SBが上がって高い位置で幅を取り、最終的に6トップのようになることが多いのだが、ここ数年のプレミアリーグを観ていて、今の山雅と同じような形でビルドアップしているチームはほとんどなかった。
かつてサウサンプトンというチームが同じような形でビルドアップしていたこともあったが、良い時もあれば悪い時もあったりと波が激しく、最終的にどんどん順位を落とし、当時のハーゼンヒュットル監督は解任されている。
そして今季に関しては、同じ形のビルドアップをしているチームはただの一つもない。
世界最高峰のプレミアリーグにおいてその形が最適だと考えているチームは現時点で存在していない、という捉え方もできる。
プレミアリーグのサッカーだけが全てだとは思っていない。
けれども、選手だけでなく監督もトップレベルの人材が多く集まっているリーグにおいて採用されていない形を、山雅ではわざわざ採用しているのだから、そこには納得できるだけの相当な根拠があるのだろう。
そうであってくれなければ困る。
しかし、少なくともピッチ上でのパフォーマンスを観ている限りでは、それは伝わってこなかった。
少なくとも自分は、「確かにこっちの方がええやん」と思ったことは一度もなかった。
選手の質が低いのなら選手自身の問題だが、戦術が機能していなければ選手は苦しんでしまう。
そういうチームは、きっと山雅だけではないのだろう。
せめて山雅は戦術が選手を後押しするようなチームであってほしいと思うが、去年も、そして今年も、そうはならなかった。
昇格できずに辛い表情をする選手たちを再び見ることになってしまった。
あと何年、山雅は同じようなシーズンを繰り返してしまうのだろうか。
最後に、最終節の試合後、ブーイングが起こるのかどうか分からないのだが、せめて頑張ってきた選手たちに対してはブーイングをしないでほしいと思っている。
自分は昇格を逃した原因は戦術にあると考えている。
一番悪いのは選手たちではない。
そもそも、一番責任を負うべき人は選手たちではない。
ブーイングをするにしても、それをぶつける先は選手であってほしくない。