【山雅2022レビュー】vs富山|J3第16節
榎本の髪色が落ち着いて、なんか格好良くなった。
それはさておき、システム変更の応酬となったこの試合の展開と、山雅がよりチャンスを作るためにどうすべきかについて、振り返る。
2022.7.9
J3 第16節
松本山雅FC
×
カターレ富山
※本ブログ投稿時点で、第17節まで終了していますが、最新の試合についての内容ではありません。
※第17節は観ていない状態でのレビューとなっています。
~スタメン~
~試合展開~
両チームがシステムを変更していく中で、お互いのシステムの噛み合わせがどうだったのか、時系列に沿って振り返る。
前半開始〜
山雅:5-2-1-2
富山:5-3-2
・富山のプレス
富山はプレスをかける時、2トップが縦に並び、吉平はCB大野へ、川西はボランチのパウリーニョと浜崎の間に立つ。
IHのアルトゥール・シルバと姫野は、それぞれパウリーニョと浜崎をマークした状態から、CB常田あるいは下川へ寄せていく。
ボールサイドのWBは、山雅WBの外山や前をマークする。
富山のプレスはうまくハマることが多く、よく機能していた。
・富山のビルドアップ
富山がビルドアップを行う際、CBの3人は左右のどちらかにずれることが多い。
これにより、鎌田または今瀬が、実質SBのような立ち位置になる。
あるいは、IH(特にアルトゥール・シルバ)が、サイドに流れて起点を作ることも複数回見られた。
・山雅の守備
山雅は5-2-1-2で守っていたのだが、サイドに開いた富山CBやアルトゥール・シルバに対して、誰が寄せていくのかがはっきりせず、自由にボールを持たせてしまうことが多かった。
結果として、自由に攻撃を組み立てることを許してしまっていたし、あるいはそのままボールを運ばれ、サイドで2vs1の人数有利を作られていた。
前半32分〜
山雅:5-2-1-2 → 4-4-2
富山:5-3-2
・山雅の守備
山雅はサイドの人数を増やすため、4-4-2に変更する。
これにより、富山のサイド攻撃にある程度対応できるようになった。
ただ、2トップの守備に関しては不安が残る。
FWが相手CBに寄せていく時、CB間のコースを切るように出ていく。
そうすると、当然ボランチへのパスコースが空き、簡単にボランチを使われてしまう。
この問題は以前から見られているが、まだしばらくは直らないかもしれない。
・山雅のカウンター
前半を通して、山雅はカウンターから何度もチャンスを作っていた。
富山は攻撃の際、IHが積極的に前線に上がっていく。
その分、アンカー碓井の両脇にスペースができてしまう。
山雅はそのスペースでうまく起点を作り、カウンターに繋げていた。
後半開始〜
山雅:5-2-1-2 → 4-4-2
富山:5-3-2 → 3-4-3
・富山の守備
後半から、富山はダブルボランチに変更する。
この変更のおかげで、山雅のカウンターを遅らせることができていたシーンもあった。
68'10"のシーン。
常田のクリアボールを横山が拾って前を向くが、すぐにボランチの末木と碓井がプレッシャーをかけることで、素早いカウンターを阻止していた。
・山雅の守備
富山がダブルボランチに変更してから、山雅はうまくボールを回されることが多くなってしまった。
原因は、2トップの守備である。
基本的に、横山は守備の負担をなるべく少なくしている印象で、相方(小松や榎本)が相手のボランチをマークすることが多い。
相手のボランチが一人の場合はそれでもいいが、ボランチが二人の場合、両方を抑えることができず、どちらか片方は空けてしまうことになる。
結果として、簡単にボランチにパスが入るようになってしまっていた。
後半36分〜
山雅:5-2-1-2 → 4-4-2 → 5-2-1-2
富山:5-3-2 → 3-4-3
・山雅の守備
山雅はCB宮部と橋内を投入し、システムを5-2-1-2へ戻す。
変更の理由として考えられるのは2つ。
一つは、シンプルにCBの枚数を増やしたかったということ。
もう一つは、FW榎本とトップ下の佐藤の二人で、富山のダブルボランチをマークさせたかったということ。
ただ、前半5-2-1-2で問題となっていたのは、サイドに開く富山CBに対して誰が寄せるかはっきりしない、ということだった。
システムを戻したことで、再びその問題が見られていたが、途中出場の榎本や佐藤が頑張って追いかけることで解決しようとしていた。
後半43分〜
山雅:5-2-1-2 → 4-4-2 → 5-2-1-2
富山:5-3-2 → 3-4-3 → 4-2-3-1
・富山の攻撃
富山はDFの枚数を減らして4-2-3-1に変更し、最後まで得点を狙いに行った。
決定機もあったが、惜しくも同点とはならなかった。
~試合結果~
松本山雅FC 1
20' 常田
カターレ富山 0
~ハイライト~
~裏しかない~
山雅、富山ともに、より多くのチャンスを作ることができたはず。
それができなかったのは、両チームとも、裏ばかり狙っていたからだと思う。
前線の選手が裏を狙ってばかりで、ライン間でパスを受けようとする選手がいない(あるいは、いるけどタイミングが合っていない)シーンが多かった。
逆に、うまくライン間でパスを受けることができた時は、チャンスをうまく作ることができていた。
上のハイライトに載っているシーンでは、山雅側では13'37"の菊井、23'04"の横山、43'35"の菊井、富山側では72'32"のマテウスがライン間でパスを受けたシーンでチャンスを作っている。
裏しかない理由
裏ばかり狙うことになったのは、裏以外に選択肢がないからである。
そうなってしまう特に大きな原因が、2つ考えられる。
・パウリーニョのサポート
一つ目は、ボランチのパウリーニョについて。
この試合で目立っていたのは、ボールを持つ味方へのサポートが遅い、ということ。
例えば、8'21"のシーン。
外山がパスを受けるも、その後のパスコースが無く、裏に蹴るしかないという状況になっている。
このようなシーンで、ボランチの選手であるパウリーニョにはパスコースを作り、裏以外の選択肢を用意してあげてほしい。
一方で、同じくボランチでプレーしていた浜崎は、味方にパスコースを作ってあげるようなサポートが上手な選手である。
パスを受けてからのプレーや判断が物足りないと感じることはあるが、こまめなサポートでうまく味方を助けることができていた。
・菊井のジレンマ
二つ目は、菊井のポジショニングである。
菊井はビルドアップの時に、よく低い位置まで下りてきてビルドアップに参加する。
それ自体は問題ないのだが、その後、中々ライン間に戻っていかない。
そうすると、前線は裏を狙う横山と小松だけとなり、ライン間で待つ選手がいなくなる。
結局、どこかのタイミングで裏に蹴るだけになってしまう。
例えば、51'15"のシーン。
菊井は下りてきてビルドアップに関わろうとしている。
この瞬間、菊井がもしライン間にいれば、菊井にパスが入って、チャンスになったのではないかと思う。
50'53"あたりから菊井はずっと低い位置に残っているが、そのせいで、ライン間でパスを受けることができていない。
最終的に、浜崎が裏に蹴らざるを得なくなっている。
菊井がライン間でボールを受けることができた時に、山雅の攻撃は加速するし、期待感が生まれてくる。
だからこそ、菊井にはなるべくライン間で待っていてほしい。
ただ、それができずに、下りてきてしまうのは、そうしないとボールがうまく回らないからではないかと思う。
それは、ボランチ(だけではないが)の問題でもあるし、チームとしてビルドアップの形がない(あるかもしれないが、機能しているとは言い難い)という問題でもある。
菊井の攻撃センスを生かすためにはライン間に残しておきたいが、下りていかないと、そもそも菊井にボールが届かないという、ジレンマを感じる。
それでも
最終的には裏を狙うしかなかった山雅だが、それでもこの試合は何度もチャンスを作っていた。
山雅の攻撃に対して、富山CB陣の対応があまり良くなかったように見えた。
具体的に挙げると、53'56"のシーン。
小松が外山へワンタッチで落とし、外山が裏へ蹴って、横山が追いかける、というシーン。
まず、今瀬の、小松への寄せが甘く見える。
簡単に入れ替わられてしまっているが、しっかり体をぶつけていたら、もう少し時間を稼げたはず。
入れ替わられた後の戻りも遅い。
そして、裏へ走る横山に対して誰もついていけていない。
林堂がついていくのか、鎌田がついていくのか、全くはっきりしていなかった。
具体的なシーンをもう少し挙げていく。
61'52"今瀬
横山の裏抜けを警戒できていなかった。
パスが出てから走り始めてしまっている。
62'31"林堂
寄せが甘く、裏を狙った横山に簡単に前を向かせてしまっている。
64'32"林堂
寄せが甘く、裏を狙った小松に簡単に前を向かせてしまっている。
このような感じで、山雅は裏ばかり狙っている状況でも、ある程度チャンスを作っていくことができていた。
~終わりに~
この試合では、富山CBの対応の甘さもあり、チャンスを作っていた。
ただ、昇格してJ2で戦うとなれば、裏を狙っているだけでチャンスを作れるような試合はほとんどないのではないか。
裏を狙うのは良いことだが、相手からすれば、裏抜けは最優先で警戒するポイントになる。
ただ、裏を警戒すればするほど、ライン間にはスペースが空いてくる。
だからこそ、ライン間をうまく使っていくべきだし、ライン間でこそ真価を発揮できる菊井という選手が、山雅にはいる。
菊井を生かしてあげられるかどうかに、山雅の未来は懸かっている。
…かもしれない。
最後まで読んでいただきありがとうございました。