【山雅2022レビュー】vs相模原|J3第34節
前節のレビューで、今季の山雅についてある程度振り返りを行った。
その付け足しのような形で、この試合におけるいくつかの選手のプレーについて振り返っていきたい。
(この試合に限らず、シーズン通して何度も見られたようなプレーをピックアップしています)
前回の対戦↓
2022.11.20
J3 第34節
松本山雅FC
×
SC相模原
~スタメン~
~試合結果~
松本山雅FC 1
90' 中山
SC相模原 0
~個人のプレー振り返り~
今回は佐藤、大野、そして田中隼磨のプレーについて振り返る。
佐藤
佐藤は攻撃の時に、
「どこにポジションを取れば味方を助けられるか・パスを受けられるか」
ということを考え、それを実行する能力が非常に高い。
例えば、13:55~のシーン。
まず、下川からパスを受ける。
そして、ダイレクトでルカオへ縦パスを送る。
パスを出すと同時に前方へ走り出す。
ルカオが菊井に繋ぎ、その菊井から、上がってきた佐藤がパスを受ける。
その後の、佐藤から横山へのパスは惜しくも通らなかったが、山雅の攻撃が一気に加速するシーンを作れたのは、佐藤の動きがあったからこそだった。
また、25:30~のシーン。
佐藤が、近くにいる菊井にボールを預ける。
そのままサイドを駆け上がっていき、相手のDFラインの裏でパスを受け、クロスを上げる。
必要なら、自分の本来のポジションを大きく飛び出してでも攻撃に絡みに行く。
そんな佐藤の働きは、今季の山雅の攻撃における生命線だったと感じる。
大野
大野(に限らず、山雅のほとんどのCB)は、たとえフリーの状況でボールを持っていたとしても、ドリブルで運ばず、焦って味方にパスを出してしまう。
例えば、29:35のシーン。
大野はフリーだが、運ばずに、右サイドの下川へパスを出す。
これがなぜ問題かというのは、相模原の左SH渡部の気持ちになって考えると見えてくる。
渡部からすると、まず警戒しなければいけないのは、ライン間で待つ選手(このシーンでは菊井)への縦パスになる。
ただ、このシーンでは、大野が菊井へパスを出す可能性はかなり低いと考えられる。
大野と菊井の距離が離れており、無理に縦パスを通そうとすれば、渡部か、ボランチの川上がパスカットできるからである。
渡部からすると、この状況では、大野は外にいる下川にパスを出すという選択肢しかない、と予想がつく。
そのため、渡部は、あらかじめ下川の方に身体を向けておき、パスが出たら、すぐに下川に寄せていくことができる。
そして、渡部のプレスに合わせて、相模原の他の選手たちも、目の前の山雅の選手たちを一気に捕まえに来る。
結果として、相模原のプレスがハマり、ボールを奪われてしまう。
(その後、下川が一瞬で奪い返してはいるのだが)
要約すると、大野の
「ドリブルで運ばずに、焦ってパスを出す」
というプレーが、相手のプレスのきっかけを作ってしまっている、ということになる。
仮に、今回のシーンで大野がドリブルで運んでいた場合を考える。
ドリブルで運ぶことにより、菊井との距離が近くなり、パスを通しやすくなる。
左SH渡部からすると、縦パスを通さないようにするために、より中に絞らなければいけなくなる。
また、どこかのタイミングで渡部が大野に寄せなければいけないため、身体の向きも内向きになる。
つまり、下川にパスが出たとしても、渡部はすぐには下川に寄せることができなくなる。
また、相模原のDFの選手たちも、大野が運んでくることによって、楔のパスはもちろん、裏への一発のパスもより警戒しなければならなくなる。
そのため、とにかく中央を固めなければ、という考えになり、選手たちは中に絞る。
結果として、サイドにスペースができる。
サイドにスペースができることで、下川はより高い位置に立つことができる。
また、そこで大野からパスを貰えば、即クロスを上げることもできる。
つまり、大野がドリブルで運ぶことで、チャンスを作ることができる。
大野は契約満了で山雅を離れることになるが、よりレベルの高いチームへの移籍となれば、ドリブルで運んでいくというプレーは今後求められてくるのではないかと思う。
田中隼磨
87分から途中出場し、必死にプレーしながらチームを鼓舞し続け、チームの決勝点も演出してしまう。
この選手がプレーしていないということが山雅にとってどれほどの損失なのか、たった数分で強烈に実感させられた。
そんな田中隼磨の、すごいと思ったプレーを、一つ取り上げたい。
87:25のシーン。
田中隼磨も含め、多くの選手が相手のゴール前に入ってきている状況で、宮部が右サイドからクロスを放り込む。
だが、クロスはふわっとした山なりのボールだったため、キーパーの圍にキャッチされる。
この時の田中隼磨の切り替えの早さがとにかくすごい。
田中隼磨は、クロスの軌道を見て、圍がキャッチしに出てくるのを確認すると、キャッチするよりもかなり前に、自陣へ向けて走り出し、相手のカウンターに備えている。
このような細かいプレーの一つ一つが、田中隼磨を一流の選手たらしめているのだろうなと感じた。
~終わりに~
無事、今季の全試合のレビューを書き終えることができました。
自分は今季から山雅を観始めたので、以前の山雅と比較するような考察はできなかったのですが、以前の山雅を知らないからこそ、よりフラットな目線でのレビューになっていたのではないかなと思います。
読んで頂いた方々、本当にありがとうございました。