【山雅2022レビュー】vsいわき|J3第14節
山雅もいわきもロングボールを多用するチームで、「5バックの山雅vs4バックの山雅」というような試合だった。
そんないわき戦の大まかな内容、横山が改善すべきだと思ったポイント、そして山雅が得点できた理由について、振り返る。
2022.6.26
J3 第14節
松本山雅FC
×
いわきFC
※本ブログ投稿時点で、第16節まで終了していますが、最新の試合についての内容ではありません。
※第15節以降は観ていない状態でのレビューとなっています。
~スタメン~
~試合展開~
お互いがロングボールを放り込み、セカンドボールを争う展開となった。
それぞれのロングボールにおける選手配置を振り返る。
山雅GK・DFからのロングボール
まずは、山雅側がロングボールを入れる場合を振り返る。
山雅は5-3-2の形でセットし、小松にロングボールを放り込む。
片方のWBは、セカンドボールを拾った後の攻撃に備えて少し高い位置を取る。
いわきは両SHが中に絞り、ボランチの宮本が少し前に出て、4-1-3-2のような形でセットする。
ロングボールのターゲットである小松に対してはCBが競り合いに行く。
ここからのセカンドボールの拾い合いに関してだが、まず、ボールがこぼれてくる可能性の高いエリアが、下図のピンクのエリアである。
見ての通り、山雅はセカンドボールの拾い合いにおいて数的不利となっている。
いわき側は、山下、宮本、岩渕の3人が、小松を囲むように立つことで、セカンドボールを拾いやすくなっている。
菊井や安東がなんとかボールを拾おうとしても、いわきの選手に両方から挟まれている形になっているため、すぐ奪われてしまう。
結果として、いわきがセカンドボールを回収することが圧倒的に多かった。
いわきGK・DFからのロングボール
次に、いわき側がロングボールを入れる場合を振り返る。
いわきは先程と同様に4-1-3-2のような形でセットし、FWの二人にロングボールを放り込む。
山雅も同様に5-3-2の形でセットするのだが、この時の菊井はやたら高い立ち位置を取る。
このとき、ボールがこぼれてくる可能性の高いエリアが、下図のピンクのエリアである。
やはり山雅は数的不利になってしまっている。
パウリーニョと安東は2vs3、あるいは2vs4の状況で常に戦わなければならなかった。
当然、基本的にいわきがセカンドボールを回収していた。
そして、菊井が高い位置を取っていることによって、右SH岩渕がフリーになっており、岩渕が前向きでボール持つことが多かった。
その岩渕に対して、山雅は素早く対応することができていなかった。
岩渕がボールを持つと、FWの鈴木と谷村は山雅DFの裏を狙ってくる。
そのため、常田は岩渕に寄せることができない。
また、外山は、谷村だけでなく、上がってくる右SB嵯峨の対応もしなければいけないため、こちらも岩渕に寄せることができない。
そして、菊井はそこまで急いで戻ってくるわけではなかった。
結果として、パウリーニョが対応していたのだが、パウリーニョも数的不利の状況でうまく的を絞ることができないため、かなり遅れて対応する形になっていた。
山雅にとっては、セカンドボールを毎回拾われ、その度にピンチを迎えるという、相当きつい展開だった。
安東の退場
山雅にとって厳しかったのは、やはり安東の退場だろう。
パウリーニョもそうだが、前半のうちにイエローを1枚もらってしまっていたのが痛かった。
安東とパウリーニョの二人で3枚もカードをもらってしまったのは、今まで振り返ってきた通り、中央で常に人数不利となっていたからである。
相当理不尽な環境で働かされていたのだから、当然の結果である。
2枚目に関しては勿体無いようにも見えるが、試合展開からすれば、退場は妥当だったと言える。
とにかく横山
セカンドボールの勝負ではほとんど勝てていない山雅だったが、なんとかボールを奪ったあと、とにかく横山を裏に走らせ、そこにボールを送り込むことでチャンスを作っていた。
横山がサイドで仕掛け、小松、WBの外山と前、IHの菊井または安東の4人がペナルティエリア内へ入っていくことで、シンプルだが人数をかけた迫力のある攻撃になっていた。
いわきDF陣が横山の裏抜けをあまりにも許しすぎていたのは気になるのだが、山雅からすれば、似たような形で2点取れたことは良かった。
横山の改善点
大活躍の横山だったが、直した方がいいかなと気になったプレーがある。
それが、7'33"のシーンでの、パスの受け方である。
このシーンで横山は少しずつ下りてきて、後ろ向きでパスを受けている。
ただ、後ろ向きだと、相手からすると仕掛けてこられる怖さがない。
だから横山をガッツリ潰しに出て行くことができる。
実際、このシーンで横山は24番の山下に強く寄せられてボールを失い、カウンターを受けそうになってしまっていた。
横山には、前向きでトラップできるように、もう2,3歩下がってパスを受けてほしかった。
横山が前向きでトラップできれば、相手からすると、突っ込んでかわされてしまうのが怖くなるので、迂闊に飛び込めなくなる。
そうすると、横山はフリーでしかもゴールに向かってプレーができるので、チャンスに繋がりやすい。
エースだからこそ、パスの受け方にもこだわっていってほしい。
~試合結果~
松本山雅FC 2
45+2' 外山 52' 外山
いわきFC 1
39' 日高
~ハイライト~
~速攻に懸ける~
本来なら
いわき側のロングキックの時の選手たちの配置をもう一度振り返る。
このままだと、右SH岩渕をフリーにしてしまうことが問題となっていた。
それは、菊井を高い位置に残していたからである。
本来、しっかり守ろうと思うのであれば、当然岩渕をフリーにしたくはない。
そのため、菊井をしっかり戻らせて、岩渕をマークさせたい。
また、ボランチの選手たちもフリーにしておきたくないので、小松に少し下りてきてもらって、ある程度見れるようにしておきたい。
なぜ、そうせずに、2トップと菊井を高い位置に残したのかと考えると、一つは、右SB嵯峨の攻め上がりを躊躇させたかったというのもあるかもしれない。
ただ、最大の理由は、やはりカウンターだろう。
しっかり守り切るというのではなく、殴り勝つというイメージだったのかもしれない。
山雅の現状
そう考えられる(ただの深読みかもしれないが)理由は、これまでの山雅の得点パターンにある。
鳥取戦のレビューでも触れたが、山雅の得点パターンは大体速攻とセットプレーであり、遅攻では点を取れない。
つまり、しっかり守ってボールを奪ったとしても、うまくカウンターできず、遅攻のフェーズになってしまったら厳しいのである。
だからこそ、リスクを冒してでも、菊井を高い位置に残し、素早いカウンターを狙っていたのかもしれない。
実際
しかし、菊井を高い位置に残す事によって、実際に得点に繋がったのかというと、実はそうではない。
菊井のポジショニングを中心に、得点のきっかけとなるシーンを順に振り返っていく。
まず1点目。46'22"のシーン。
GK鹿野のロングキックを、菊井が競りにいった流れから、ボールを奪う。
このとき、菊井はいつもの位置より下がり目で、いわきの岩渕や宮本を見れるような位置にいる。
そして2点目。50'55"のシーン。
GK鹿野のゴールキックを常田が競り勝ち、セカンドボールを菊井が拾う。
このときも、菊井はいつもの位置より下がり目で、宮本を見れるような位置にいる。
つまり、菊井も守備にしっかり参加することで、ボールを奪うことができ、そこから得点に繋がっていた、ということである。
~終わりに~
菊井の立ち位置の変化がたまたまだったのか、修正が入ったのか分からないが、とにかく、点を取るためにはまずはしっかり守るということが、当たり前かもしれないが重要なのだと再認識させられる試合であった。
安東やパウリーニョに過剰な負担をかけないためにも、IHとして出場していた菊井は、もっと二人を助けることができたはずである。
そして、それとは別に印象に残ったのは、外山の決定力が高いということ。
2点ともこぼれ球を押し込んでいるだけなのだが、「決めて当然」のようなシュートを、当然のようにしっかり決めてしまうのは、チームにとって非常に助かるプレーである。
これからも外山の得点に期待したい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。