【山雅2022レビュー】vs今治|J3第10節
2022.5.29
J3 第10節
松本山雅FC
×
FC今治
※本ブログ投稿時点で、第13節まで終了していますが、最新の試合についての内容ではありません。
※第11節以降は観ていない状態でのレビューとなっています。
スタメン
前節からの変更点
4-4-2 → 5-2-2-1
安東、パウリーニョ、横山 →宮部、外山、榎本
試合展開
山雅の守備、今治の攻撃について振り返る。
小松の圧力
今治の4-3-3の形でのビルドアップに対して、山雅は5-2-2-1のブロックを組んで守る。前線の3人は、プレスにはあまり行かずに、待ち受けるような守り方だった。
ファーストディフェンダーである小松は、相手のアンカー楠美へのパスコースをなるべく切るようにポジションを取っていた。
楠美は小松のマークを嫌がり、小松の後ろではなく、前に出てきて、パスを受けようとしていた。
ただ、楠美が下りていくのは、山雅としては好都合だった。楠美が中央からいなくなれば、山雅ボランチの住田と前は、それぞれ相手IHの山田と島村への対応に集中できるようになる。
FW中川が、住田と前の間にもっと顔を出せていれば、二人を困らせることができていたかもしれないが、あまりできていなかった。
今治の狙い
中央に関してはうまく使えていなかった今治だが、DFのロングフィードをうまく使いながら攻撃を展開していた。これは、山雅WBがどんどん前に出てくるという守り方をうまく利用した攻撃だった。
例えば、右WB下川が左SB上原に出ていくとき、山雅DFは右サイドにスライドする。
上原がCB飯泉にボールを渡すと、右WGインディオまで一気にロングキックでボールを送る。山雅DFは右にスライドしていたので、インディオにボールをコントロールする余裕を与え、起点を作られてしまう。
山雅の対応
ロングキックによる展開が何度か続いていたので、自由にロングキックを蹴らせないように、山雅は少しずつ今治DFに対してプレスをかけるようになった。
プレスをかけに出ていくということは、その分スペースができるということである。この辺りから、今治はSBが少しずつ高いポジションを取り始めた。
今治はDFが右肩上がりのスライドをしたり、アンカー楠美が最終ラインに下りて3バックになったりすることで、SBに高い位置を取らせることが多くなった。
今治が3バックの形になっている時、山雅の前線の3人(小松、菊井、榎本)は、その3バックに対してプレスに行く。
例えば、菊井はCB安藤に対してプレスに行くことが多かったのだが、そうすると、SB野口が空いてしまう。
この時、野口に対しては、WB外山か、ボランチ住田が対応することになる。
外山が野口に対して出ていく場合、WGインディオが空いてしまい、前を向いて仕掛けられることになるが、常田がスライドし、「なんとか」対応する。
常田と大野の間にスペースができ、IH山田が狙ってくるが、こちらは住田がついていくことで、「なんとか」対応していた。
住田が野口に対して出ていく場合、中央は前だけでカバーしなければならなくなる。
時にはインディオが中に入ってきたり、中川がボールに寄ってきたりと、相手からすると選択肢が多い状況になっていた。
ただ、前の集中力が非常に高く、どこにパスが来るかという予測をしながら守ることができていたため、ピンチになりそうな場面でも「なんとか」潰してくれていた。
終盤
試合が進んでいくにつれ、リードを守り切ろうという雰囲気が山雅の中で高まってきたのか、今治DFに寄せていくことが少なくなった。
相手SBに対してはシャドーが見るようになり、そのおかげで、WBやボランチが釣り出されなくなった。結果として、守備は比較的安定するようになった。
試合結果
松本山雅FC 2
10' 榎本 38' 菊井
FC今治 1
19' 中川
ハイライト振り返り
ハイライトに載っているシーンから、気になった部分をピックアップして振り返る。
試合時間17'53"~
この試合の失点シーン。
常田が滑ってしまい、ボールを失ったところから始まっているのだが、失点は常田だけの責任ではないと感じた。
具体的には、住田はもう少しできることがあったのではないか。
常田が運んでいるときに、住田は常田のすぐ後ろにサポートしにいったのだが、後ろに行く必要はなかったし、サポートの距離も近すぎた。
そのせいで、常田の中では、住田へのパスという選択肢が消えてしまっていたと思う。
この場面では住田は常田の横でサポートしてあげればよかったのではないか。後ろに関しては大野がパスコースを作ってくれたはずである。
そしてもう一つ、18'07"の場面で、住田は外で待っている山田の方に向かってしまっているが、この場面では、まずは中央の中川を最優先で見ておきたかった。
基本的にはサイドの選手よりも、中央の選手を優先して見るべきだと思う。
前節のレビューでは、パウリーニョに関して、「誰をマークすべきか」という判断を間違えてしまうという点に触れたが、今回は住田が同じような判断ミスをしてしまった。
ボランチという守備的なポジションでプレーするなら、守備時の優先順位の判断は常に正確に行うことが求められる。
なんとかなるのか
このままでなんとかなるのだろうか。J2昇格は可能なのだろうか。
この試合はなんとかなった。なんとか勝つことができた。
とはいえ、二つの得点はいずれも相手のミス絡みだし、守備に関しては、チームとしてうまく守っているというよりも、守備陣の奮闘でなんとか凌いでいるという感じである。
山雅の守備はWBが積極的に出ていくのが特徴だが、そのWBの背後のスペースを、どのチームにも相当狙われている。
そのスペースで待つ相手WGに対して、CBがスライドして対応するが、中央に寄っている状態からサイドに出ていくため、当然少し遅れて行くことになる。
相手WGは余裕がある状態となり、前を向いて仕掛けて行くことができる。
WGとしてプレーするのは、当然、攻撃能力の高い選手なのだから、そういう選手に、簡単に前を向かせてしまっているのは問題である。
また、CBがスライドしてできるスペースに対しても、相手は狙っている。
この試合では、そのスペースに入ってくる今治のIHに対してパスが出ると、ボランチがついて行くという対応をしていた。
その対応自体は問題ないが、深い位置までボールを運ばれているということ自体が問題である。
ある程度運ばせてしまうと、個人技、コンビネーション、あるいは守備側のミスなどで、シュートまで持っていかれるリスクが非常に高くなる。
ファウルで止めた場合、危険な位置でフリーキックを与えてしまうことになる。
こうなってしまうのは、やはりWBがどんどん前に出ていってしまうからである。
まずゴールに近づけないようにするということも重要なのではないか。
また、攻撃に関して、カウンターで素早く攻め切るというのは意識しているのかもしれないが、当然、それが毎回うまくいくわけではない。
速攻ができなかった時は、遅攻を行わなければならないが、その際にどのような形で組み立てていこうとしているのかが曖昧に見える。
決まり事としてありそうなのは、ボランチが最終ラインに下りたら、左右のCBがSBのように上がっていく、ということだろうか。
ただ、それも機能しているとは言い難い。
常田や宮部は高い位置での攻撃参加で能力を発揮するようなタイプではないからである。CBが本職(だと思っている)の選手に無理をさせてしまっているだけのように見える。
ビルドアップはまだまだ構築しきれていないのではないか。
そのせいか、選手たちの立ち位置が毎回違うし、ポジショニングが甘いと感じることも多い。
攻撃面ではビルドアップの問題、守備面ではWBの背後の問題と、ほぼ毎試合同じような問題が見られる。
その中で、選手たちが「なんとか」してくれれば勝てるし、そうでなければ勝てないという試合が続いている。
この状況で、J2昇格は可能なのだろうか。
余談
山雅にはまだまだ強くなれる余地がある。
もっと強い山雅が見たい。
首位を独走している山雅が見たい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。