【山雅】繰り返される采配ミス|J3第20節【レビュー】
イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている戦術オタクによる、松本山雅のレビュー。
2023.7.29
J3 第20節
愛媛FC
×
松本山雅FC
監督・選手のコメント↓
~スタメン~
~はじめに~
山雅は得点後の最後の数分間を5-4-1で守ることで逃げ切ろうとしたが、結果的には同点弾を許してしまった。
書きたいことは色々あるのだが、全て書いていたらキリがないので、今回は
なぜ失点したのか
という点に絞って書いていきたい。
-失点シーン振り返り-
左サイドで森下に起点を作られ、エリア手前の深澤へ。
エリア内に侵入した石浦へ深澤からパスが出て、石浦がそのままフィニッシュ。
このような流れで失点してしまった。
-ポイント-
この失点のポイントは、大きく分けて3つあると思っている。
菊井の守備
常田の守備
采配ミス
一つずつ見ていきたい。
~1. 菊井の守備~
得点者である石浦を直前までマークしていたのは菊井である。
その菊井が、エリア内へ走っていく石浦に対して、全くついていこうとしていなかった。
ついていくか、あるいは石浦へのパスを出しづらくさせるために、パスコースを限定しながらボールホルダーの深澤に寄せていくくらいはしてほしいシーンだった。
菊井は普段から簡単にマークを外したり、寄せてほしいところで寄せずにのんびり走っていたりと、守備の甘さがかなり目につく。
頑張る時もあればそうでない時もあったりとムラがあり、正直、守備面では信頼の置けない選手である。
そして、疲労が溜まった試合終盤になると、その度合いはひどくなる。
菊井の守備が甘いせいでピンチを作られたり、失点してしまうシーンを何度も見てきた。
今後も菊井の守備のせいで致命的な失点が続くなら、昇格は難しい。
~2. 常田の守備~
左WB喜山がサイドに出ていったことにより、内側には大きなスペースができていた。
そして、このスペースを使われたことにより、失点してしまった。
このスペースを埋めなければいけないのは、本来なら3バックの左である常田の役割になるはずだ。
しかし、常田はゴール前の守備に専念していたため、それができなかった。
4バックから5バックへの変更に、常田が適応しきれていなかったのかもしれない。
~試合結果~
愛媛FC 1
90+2' 石浦大雅
松本山雅FC 1
88' 小松蓮
~3. 采配ミス~
5バックに変更した結果、失点してしまった。
だからと言って、5バックにしたから失点したというのは結果論じゃないか、という意見もあると思う。
この1試合だけを見れば、結果論だという捉え方もできるのかもしれない。
しかし、これまで何度も試合終盤に失点してきたということを思い出してほしい。
終盤の失点に関して、監督は
「気持ちが足りない」「魂がこもっていない」「勝負強さがない」
などと、選手に原因があるかのような発言をしてきていた。
もちろん、選手に原因がある場合もある。
それでも、何度も終盤の失点を繰り返していて、それが全部選手だけの責任だと考えるのは無理がある。
相手の戦い方の変化に対応できなかったのではないか、と考える方が自然なのではないだろうか。
というわけで、自分が特に印象に残っている2試合(相模原戦、琉球戦)を振り返り、その後、今回の失点についても考えていきたい。
-相模原戦-
まずは12節の相模原戦について。
5点取ってからの3失点という、後味の悪い試合になった。
以下、自分の過去のレビューより一部コピペするので、思い出していただければと思う。
(コピペここから)
おそらく、63分の選手交代のタイミングで、相模原はシステムを3-4-3に変更していた。
右WB佐相にボールが入ると同時に、3トップが背後を狙う。
その3トップに対して、山雅のDFたちがついてくる。
状況次第で、佐相は下川の背後に走るデューク・カルロスにパスを出したり、あるいは逆サイドの若林にロングパスを出したり、という選択をしていた。
これに対して、山雅は最後まで守備を修正しなかった。
修正案としては、いくつか考えられる。
案①:相手WBに対して、SHがマンツーマン気味についていく
案②:5バックに変更し、各選手のマークを明確にする
修正していれば、ロングパスでひたすら崩され続けるということは防げたはずだが、最後まで修正は見られなかった。
(コピペここまで)
逆サイドへのロングボールで何度も繰り返し崩され続けていたのだが、最後まで修正されることはなかった。
5-2-3にシステム変更して、ミラーゲームにしてマークをはっきりさせるのが一番手っ取り早いかなと思っていたが、特に修正はされなかった。
修正しないせいで流れが終始相手に渡っていたし、失点もしてしまった。
-琉球戦-
次に、17節の琉球戦について。
序盤に先制するも、終盤の2失点で逆転負けとなった試合。
(記憶が正しければ)琉球は初めFW阿部拓馬の1トップ気味のシステム(4-2-3-1)で攻撃していたが、62分の選手交代を機に、2トップ(4-4-2)で戦うようになった。
阿部拓馬は171cmと小柄だが身体の使い方が上手く、キープ力のある選手。
交代で入ったサダム・スレイは191cmの長身FWで、競り合いも強いしキープ力もある選手。
攻撃の際は、パスを繋ぐにしてもロングボールを蹴るにしても、この2トップが起点を作るところから攻撃が始まることが多くなっていた。
山雅としては、相手が1トップの場合は、二人のCBで協力して対応できる。
しかし、2トップになると、相手のFW一人に対してCBが一人で見る、という形にどうしてもなってしまう。
また、SBもそれぞれ相手のSHを見ることが多いため、DF陣はそれぞれが誰を見るか明確な状況になる。
それゆえ、ピンチになりやすい。
実際に1失点目のシーンを振り返ってみる。
相手のゴールキックをサダム・スレイと橋内が競り合い、こぼれ球を阿部がキープする。
そして阿部がそのままドリブルを始める。
すると、下川がどうしても阿部を見なければいけなくなり、右SH平松をフリーにしてしまう。
その結果、平松にパスが入り、エリア内に侵入される。
平松のクロスをクリアし損ねたところを、サダム・スレイに押し込まれ、失点してしまった。
つまり、2トップの相手に対して4バックで守る場合、その2トップが大柄だったりキープ力があったりすると、マークのズレが生まれてしまい、守備が破綻する危険性が高い、ということである。
5バックにしていれば、守りきれていたかもしれない。
5バックなら、3人のCBで相手2トップを見ることができるので、どちらのFWに対しても二人で対応することができる。
そのため、FWに起点を作らせる回数を減らすことができたはずだ。
また、失点シーンにおいても、5バックなら守れていた可能性が高い。
5バックなら、もう一人のCBが阿部のドリブルに対応することができていた。
そうすれば、下川は平松のマークに集中できていたはずである。
4バックのままで戦い続けた結果逆転負けとなったが、5バックに変更する価値は十分にあったのではないかと思う。
これは決して結果論ではないと思っている。
多少強引にでもFWのところで起点を作ろうとしてくる相手に対して、5バックに変更して守るというのは、割とよく見られる対応策である。
だからこの試合でも5バックへの変更は十分有用な選択肢だったのではないか。
-今回-
そして、今回の試合について。
先制するも、5バックに変更後、失点。
愛媛は63分に、186cmの長身FWベン・ダンカンを投入した。
これだけ見ると、琉球戦と同じような展開である。
じゃあ5バックで良いんじゃないのか、と思われるかもしれないが、そうではない。
琉球と愛媛には違いがあった。
それは、攻撃手段の違いである。
琉球は、先ほど説明した通り、FWに起点を作らせるような攻撃をしていた。
一方で、愛媛はそうではなかった。
愛媛は、パスを繋ぎながらサイドに運び、サイドで仕掛け、クロスを上げる、というようなサッカーをしていた。
FWに起点を作らせるような攻撃ではなかった。
ベン・ダンカンを投入してからも、それは変わらなかった。
だから5バックに変更する必要はなかった。
(少なくとも自分は感じなかった)
愛媛の攻撃は、大雑把に言えば
パスを繋ぎながら前進する
サイドで仕掛ける
という、二つの順序で成り立っていた。
これに対し、山雅は4-4-2で守ることで、終盤まではあまり多くのチャンスを与えないようにすることができていた。
特に愛媛は1つ目の部分で苦しんでいたように見えた。
山雅が4-4-2で前からプレッシャーをかけてくるので、なかなか思うように前進できないことも多かった。
しかし、山雅は5-4-1に変更したことで、前からのプレッシャーが皆無になってしまった。
おかげで、愛媛は常に山雅側の陣地でプレーすることができていた。
1→2という順序を踏まなければならなかったのが、2だけで済むようになった。
そのため、愛媛はサイドで仕掛け放題、クロス上げ放題となっていた。
その状態で、仮に失点せず勝ち切れていたとしたら、それこそ結果論だったのではないかと思う。
実際の失点シーンにおいても、4-4-2であれば防げていた可能性は十分にあった。
アシストを記録した深澤に対して、山雅の2トップの一人が寄せることで、少なくとも攻撃を遅らせることはできたのではないだろうか。
-まとめ-
個々の試合だけを見れば、結果論として処理されてしまうだけかもしれない。
それでも、これだけ失点が続けば、何か原因があるのではないかと考えるのは当然のことだと思う。
そして、しっかり振り返れば、采配ミスであった可能性が十分考えられるし、説明ができるだけの状況証拠も揃っている。
今後、采配による勝ち点のロスをいかに減らせるか、むしろ采配によっていかに勝ち点を増やせるかというのが、生死の分かれ目になってくるはずである。
それは、監督にとって重要な仕事の一つのはずだ。
~終わりに~
その通りで、相手に多くのチャンスを与えてはいなかった。
4-4-2で上手く守ることができていた。
守れていたにも関わらず、その守備を自ら壊し、そして失点した。
結果論という言葉では、もはや片付けられない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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