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【山雅2022レビュー】vs宮崎|J3第33節


昇格が絶望的な状況となってしまったが、そうなっても文句を言えないような問題点を、チームはいくつも抱えていた。

ということで、今季の山雅を象徴するようなシーンをこの試合の中からピックアップすることで、今季の振り返りをしていきたい。
(振り返りなので、これまでのブログの内容と重複する部分もあります)


前回の対戦↓



2022.11.13
J3 第33節

テゲバジャーロ宮崎
×
松本山雅FC



~スタメン~

宮崎(白):4-4-2
山雅(緑):5-2-1-2



~試合結果~

テゲバジャーロ宮崎 4
41' 岡田  50' 岡田  77' 薗田  85' 橋本
松本山雅FC       1
34' 菊井


~5-2-1-2の問題点~

複数のシステムを使い分けてきた山雅だが、今季の山雅と言えば5-2-1-2(3-4-1-2)だと思うので、このシステムの問題点を振り返っていきたい。

以下の①〜④は守備面、⑤〜⑥は攻撃面での問題点になっている。


問題①:対ロングボール

相手のロングボールに対応する時、セカンドボールの拾い合いにおいて、相手が数的優位、あるいは、良くても五分五分の戦いにどうしてもなってしまう。

少なくとも、山雅側が有利になることはない。

そうなってしまうのは、5-2-1-2の場合、DFラインの前を守るのが、ボランチの二人だけだからである。


例えば、42:53の、宮崎のGKによるフリーキックのシーン。

橋本がヘディングで流し、北村が受け、徳永が最終的にボールをキープする。

このシーンでは北村がうまくボールをコントロールし、徳永に繋いでいる。
だが、そうではない場合、つまり、ボールを山雅DFが弾き返していた場合でも、宮崎側がセカンドボールを拾っていた可能性が高い。

それは、セカンドボールを狙う人数が、宮崎の方が多いからである。

宮崎側は徳永、橋本、岡田の3人がセカンドボールを拾える位置にいる。
対して、山雅側は、ボランチの佐藤とパウリーニョの2人だけである。

宮崎の方が、セカンドボールを狙える選手が多い。

山雅のDFの選手たちは、どうしてもDFラインの背後を最優先で警戒するので、なかなか前には出ていけない。
そのため、基本的にセカンドボールの勝負では不利になってしまっていた。


ロングボールを多用するいわきとの試合では、特にセカンドボールの問題が顕著に見られていた。


無理に繋がなくていいからリスクも少ない。
絶対に五分以上の勝負に持ち込める。
セカンドボールを拾えれば即チャンスになる。

山雅と対戦するチームにとって、ロングボールは相当コスパのいい戦術だったと言える。


問題②:サイドの選手への対応

5-2-1-2の場合、サイドにいる相手の選手に対して、誰が寄せていけばいいのか、毎回選手たちが判断に迷ってしまう。

サイドの相手選手に、誰が寄せればいいか迷う。

選択肢としては、FW、トップ下、ボランチ、WBになる。
ただ、どの選択肢を選んでも致命傷を負いかねない、というのが、5-2-1-2の厳しい部分である。


a)FWがサイドに出ていく場合

17:38のシーン。
FWの横山がサイドに出ていく。

このとき、菊井は、ボランチの位置にいる徳永と大熊の二人を見なければいけない状態になる。

菊井が、一人で二人を見なければいけない。

そのため、菊井が片方に寄せれば、もう一方の相手を見ることができなくなり、フリーにしてしまう。

菊井が徳永の方に寄せれば、大熊がフリーに。


b)トップ下がサイドに出ていく場合

先程と同じシーン。(もっといいシーンを見つけられませんでした)

トップ下の菊井が中央から外に流れていけば、中央に山雅の選手がいなくなってしまうので、当然中央のスペースを使われる。

トップ下の菊井が中央からいなくなることで、そこにスペースができる。


c)ボランチがサイドに出ていく場合

47:19のシーン。
ボランチのパウリーニョがサイドに出ていく。

このとき、相方のボランチである佐藤も、同じサイドの方へスライドしていく。

そのため、逆サイドには大きなスペースができてしまう。
サイドチェンジされて、そのスペースを使われる。

逆サイドにできるスペースを使われる。


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d)WBがサイドに出ていく場合

27:45のシーン。
WBの外山がサイドに出ていく。

外山の背後が空くので、そこを使われる。

外山の背後のスペースを使われる。

ちなみに、このシーンでは常田がスライドしてなんとか対応したが、その常田が空けたスペースも、北村が狙っていた。

常田が空けたスペースも狙われる。


a~dまとめ

どの選択肢を取っても、相手の前進を許してしまう結果になりやすい。

5-2-1-2に限らず、どのシステムにも、欠点はある。
ただ、5-2-1-2が他のシステムよりも特に厳しい点がある。

それは、サイドの相手に対しての距離が遠すぎるということ。

誰が行くにしても、遠すぎる。

サイドの相手に対して、誰が寄せるにしても、長い距離を詰めなければならない。

それはつまり、寄せるのに時間がかかり、その分、相手に考える余裕を与えるということになる。

「この選手が出てきたのか」
「じゃあここにスペースができるな」
「それならここに走ろう(パスを出そう)」

というように、相手は考えを整理することができる。


時間を与えてしまうのは、宮崎のようにビルドアップを志向するチームに対しては、特に致命的になりうる。


問題③:守備時のWBの負担

相手が押し込んできた状態でサイドを崩そうとする時、5-2-1-2の場合は、それに対応するのがWBだけになってしまうことが多い。

例えば、31:50のシーン。

サイドの広いスペースで、新保がドリブルで仕掛けてくる。
WB下川は、一人で守るしかない状況になっている。

もし、この状態で他の相手選手がオーバーラップしていたら、サイドで1vs2の形を作られてしまっていた。

サイドで数的不利になってしまっていたかもしれない。


ちなみに、山雅が5-2-1-2ではなく、例えば5-3-2で守っていた場合、IHがWBのサポートをすることができる。


10:30のシーン。
菊井が下がって5-3-2のIHのようになり、下川と共にサイドを守っている。


問題④:逆サイドに生まれるスペース

先程の話と少し被るが、ボランチの二人がボールサイドにスライドすることで、逆サイドに広大なスペースを与えてしまう。

ボランチの佐藤とパウリーニョが右サイドにスライド。
左サイドにスペースができてしまう。

これは、相手のビルドアップのときだけではなく、相手がサイドからクロスを上げる際にも、同じことが言える。


20:14のシーン。
サイドから入ってきたボールに対して、スペースで待っていた岡田が合わせる。

ちなみに、仮にクロス自体は山雅DFやGKがクリアできたとしても、同じスペースにボールがこぼれた場合、相手の選手に一方的に拾われ、同じように大ピンチになってしまう。


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問題⑤:前線の逆三角形

5-2-1-2の場合、前線の3人は、基本的に逆三角形のような形で並ぶ。

そうすると、2トップは、それぞれ相手のCBとSBの二人にマークされ、かつ、パスが入ろうものなら、ボランチもプレスバックしてボールを奪いに来る。
トップ下の選手も、相手のボランチ二人にマークされる。

横山、ルカオ、菊井が、それぞれ二人の相手選手にマークされる。

前線の3人が、この状況でパスを受けて仕事をするというのは、かなり難しい。


一方で、逆三角形の形ではない時は、攻撃がうまくいくこともしばしばある。

例えば、12:55のシーン。
このとき、前線の3人は逆三角形ではなく、むしろ通常の三角形のような形で並んでいる。

このシーンでは、ルカオが少し低めの位置を取っていることで、宮崎のCB代を、わずかではあるが釣り出している。
その結果、代の背後にスペースが生まれている。

そのスペースに、中央にいた菊井が走り込むことで、チャンスを作れそうになっていた。

CB代が空けたスペースを、菊井が狙う。


問題⑥:FWへのサポートの遅さ

5-2-1-2だと、サイドに流れたFWにパスが入った時の、味方のサポートがどうしても遅れてしまう。

例えば、33:45のシーン。
相手のDFを背負った状態のルカオに縦パスが入る。

このとき、ルカオからすれば、すぐ近くにサポートが欲しいところなのだが、近くに味方がいない。

ルカオの近くに味方のサポートがない。

下川がサポートに行こうとするが、それより先に、宮崎のSH岡田がプレスバックして、ボールを奪う…
はずなのだが、このシーンでは、ルカオがフィジカルのゴリ押しで強引にサイドを突破していた。

下川のサポートより、岡田のプレスバックの方が早い。

しかもそのまま得点に繋がったのだが、点を取れたから良かったというのは結果論でしかない、と個人的には考えている。


~個人の課題~

チームのシステムの話だけではなく、選手個人のプレーについてもいくつか触れたい。
(以下の課題は、宮崎戦に限らず、以前から見られていたものを取り上げています)


パウリーニョ

パウリーニョの課題は、予測・ポジショニング・判断の質である。


まずは、16:20のシーン。
岡田がパウリーニョの目の前をドリブルで運んでいくのを、簡単に許してしまう。

「ドリブルしてくるかもしれない」という予測が欲しかったし、その上でポジショニングを修正してほしかったシーンである。

岡田のドリブルを止められるようなポジション取りをしたかった。


次に、19:48のシーン。
下図のように、大熊から北村にパスが入る。

その後、パウリーニョは、外を走る大熊についていく。
そのせいで、北村に中央へドリブルで運ばれてしまう。

パウリーニョには、「まずは外ではなく中を優先して守る」という判断が欲しかった。

まずは中央を守ることを優先したい。


そして、51:44のシーン。
押し込まれた状況で、サイドでボールを持つ岡田から、中にいる下澤にパスが入ってしまう。

この場面でパウリーニョが果たすべき役割は、
1. ポケットを狙って走ってくる相手選手がいたら、ついていくこと
2. エリア内の相手選手へのパスコースを切ること
3. 岡田のカットインに対応すること

このように考えると、パウリーニョはもう少しポジショニングを修正すべきだったと思う。

下澤へのパスコースを切るような立ち位置を取りたかった。


下川

下川の課題は、「下川と味方CBの間にいる相手選手」への注意力が弱い、ということ。

22:05のシーン。
この瞬間、篠原と下川の間にいる岡田をマークしているのは、篠原である。

この時点では、篠原が岡田をマークしている。

この直後、ボールを持っている新保から、横にいる下澤へパスが入る。

この時、篠原の身体の向きが、右向きから左向きに変わる。
そして、篠原は北村をマークするようになる。

篠原は、岡田ではなく北村をマークするようになる。

逆に言えば、篠原は岡田のことをマークできなくなっている。

この場合、岡田をマークしなければいけないのは下川なのだが、下川はそれができていない。

その結果、ゴール前で岡田にシュートを打たれそうになってしまう。

橋本の落としを岡田が狙う。
間一髪のところで、常田がクリア。

このシーンでは常田がギリギリのところでクリアしたが、もし常田がクリアできなかったとしても、下川が絶対に岡田についていき、対応しないといけなかった。


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横山

横山の課題は、相手ゴールから相当遠い位置だとしても、強引にシュートを打ってしまうということ。

例えば、22:59のシーン。
ペナルティエリアの角付近からシュートを打っているが、遠いし、角度もきつい。

もう2,3歩分運んだところからシュートを打つだけでも、だいぶ変わるのではないだろうか。

少し内側から打つだけでも、だいぶ期待感が変わってくる。

あるいは、無理にシュートを打たずに、味方を使うという手もある。
32:54のシーンでは、クロスを上げて、あわやゴールというシーンを作っていた。


おそらくだが、「とにかくシュートを打っていけ」と言われているのだと思う。
ただ、あまりにも強引すぎるシュートに関しては、もう少し控えてもよかったのではないだろうか。

横山はJ3でシュート数が1位ということらしいのだが、強引なミドルシュートで本数を稼いでいるイメージが強い。

強引すぎるシュートの本数は、正確には分からない。
仮に15本だとする。
その15回分のチャンスにおいて、味方へのパス、あるいはより良い位置からのシュートを選択していたら、チームとして、もう2,3点くらい取れていたのではないか。

もう2,3点取れていたら、昇格争いの状況が今と変わっていた可能性はある。


昇格できないのは横山の責任だ、と言いたいわけでは全くない。
明らかにチームの戦い方に問題がある。

ただ、横山個人として、改善できる部分もあるのではないかと感じている。
超一流のFWは、結構アシストも多い印象である。
この一年の経験が、横山にとってプラスになってくれればと思う。


~終わりに~

今季の山雅の問題を、全てではないけれども、ある程度振り返ることができたのではないでしょうか。

最終節は、純粋に楽しみたいと思います。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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