【山雅】空回りするハードワーク|J3第21節【レビュー】
イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている戦術オタクによる、松本山雅のレビュー。
2023.8.5
J3 第21節
ガイナーレ鳥取
×
松本山雅FC
監督・選手のコメント↓
~スタメン~
~はじめに~
プレスが全くと言っていいほど機能していなかった。
原因は、FWのプレスのかけ方にある。
-①パスコースを切れない-
原因の一つ目は、FWがパスコースを切らずにプレスをかけてしまう、ということ。
相手CBにプレスをかけるとき、相手のボランチへのパスコースを切れていないことが多すぎる。
その場合、ボランチは見なければいけない選手が複数いるため、スライドができない。
その結果、パスを繋がれる。
-②遠くまでプレスをかけに行く-
原因の二つ目は、相手CBがあまりにも遠い位置にいるのにプレスをかけに行ってしまう、ということ。
状況によっては、相手CBと山雅の選手たちが遠く離れていることがある。
このような状況でも、FWが強引にプレスをかけようとしてしまう。
しかも、割と急いで寄せに行こうとする。
そのせいで、山雅の守備は大幅に間延びしてしまう。
すると、当然ボランチのスライドは間に合わず、パスが繋がってしまう。
コンパクトな守備ブロックを崩すのは難しい。
だからこそ、相手からすれば、「もっと出てこい」と思っているわけである。
にも関わらず、山雅の選手は簡単に出て行ってしまい、間延びする。
そして簡単に崩されてしまう。
相手の思う壺である。
-空回りするハードワーク-
プレスに緻密さが全く感じられない。
FWのプレスは空回りし続けている。
特に小松は前線から積極的にプレスをかけ続けるハードワークが持ち味の選手だと思う。
小松の守備がチームの助けになっていることが全くないというわけではない。
けれども、基本的には、小松含め2トップの選手たちの守備はチームを助けるどころか、むしろ苦しめてしまっている。
~試合結果~
ガイナーレ鳥取 2
17' 富樫佑太 37' 牛之濵拓
松本山雅FC 1
68' 菊井悠介
~過労死するボランチ~
FWのプレスがうまくかからないせいで、その皺寄せが来ているのがボランチの安東・安永である。
FWがプレスをかけたら、連動しないわけにはいかないから、ボランチも急いで前に出ていく。
しかし、プレスが雑だとボールを奪えず、むしろ運ばれてしまう。
そうなると、自陣に戻らなくてはいけない。
FWはゆっくり戻ってくることが許されるのかもしれないが、ボランチはそうではない。
ゴールを守るために、全力でダッシュして戻らなければいけない。
プレスが雑なせいで、ボランチはかなり走らされている。
そして、その雑なプレスが繰り返されるため、どんどん体力が奪われ、どんどん走れなくなっていく。
59分に安東が走れなくなって交代を余儀なくされたのも、そのせいではないかと思う。
ただでさえ暑いのに、毎試合のように必要以上に走らされていたことで、疲労も溜まっていたのだろう。
試合を観ていると、ボランチはもう限界なのではないかと感じるシーンは多い。
例えば、1失点目のシーン。
相手の左SH富樫がドリブルで運び、カットインしてシュートを決めていた。
このとき、ボランチの安東・安永は、全力で戻っていれば、カットインを防げたかもしれない。
少なくとも、攻撃を遅らせることはできていたはずだ。
しかし、二人ともダッシュで急いで戻り、守備に参加しようとしているようには全く見えなかった。
同じように、ボランチがもっと走るべきなのに走れていないシーンはかなり多い。
単純にサボっているだけかもしれないし、そうだとしたら選手たちが悪いのだが、自分はそうではないと思っている。
プレスが全くハマらないせいでボランチに求められる運動量が尋常じゃないこのチームでは、ある程度力を抜いてやっていかないと90分間戦い切れない、と考えているのかもしれない。
だから、走るべきシーンでも走らない、あるいは、走りたくても身体が動かない、ということになってしまっているのではないだろうか。
~終わりに~
本当に勝ちたいと思うのなら、
「今のサッカーを信じてやり続ければ勝てる」
という考えから脱却しなければいけないのではないか。
戦術が本当に完璧で、選手たちが適応しきれていないだけ、というのであれば、そのままやり続けるべきだ。
でもそうではない。
改善しなければならないのは明らかだ。
その状態でやり続けても、限界がある。
今回取り上げたプレスにしてもそうだ。
今のやり方を続けたところで、相手がある程度ボールを繋げるチームなら、今回のように簡単に崩壊する。
「アグレッシブ」と言えば聞こえはいいが、実際はただの猪突猛進なプレスになってしまっている。
なぜ修正しない?
FWのプレスは空回りし続けているのに、なぜ監督は改善してあげないんだ?
気づいているなら、改善するはずだ。
というか、ダメと分かっているなら、最初からこのようなプレスをチームに落とし込んだりはしない。
改善されないのは、今のままで勝てると思っているから。
そして、なぜそう思ってしまうかと言えば、時々うまくいってしまうからだろう。
J1やJ2よりレベルの下がるJ3では、雑なプレスだったとしても、相手がそれをかわしきれないこともある。
だから中途半端に成功体験を得られてしまう。
しかし、うまくいくのは、J3だからだ。
安永玲央や滝裕太レベルの選手がゴロゴロいるであろうJ2で、今のプレスがうまくいくイメージは全く湧いてこない。
J3でそこそこ勝てれば満足、というのであれば今のままでも良いかもしれない。
でも山雅の目標は、5年後のJ1のはずだ。
J3どころか、J2でもしっかり通用するサッカーをしなければいけない。
J1を目指すなら、「今のままではダメだ」と気づけるようなチームであってほしい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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