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老いぼれルンバと
購入して9年のルンバさんの調子が悪い。
ルンバとは、言わずと知れたお掃除ロボットのこと。
我が家のルンバさんは、毎週火曜と金曜の朝8時に掃除を開始するようにセットされている。
時間が来ると、「ピーピー」と充電器からバックし、掃除を開始。1時間ほどリビングを掃除して、充電器に戻る。
9年間、きっちり同じルーチンをこなしてきた。
ルンバさんは、与えられた仕事をきっちりとこなす、非常に真面目なハウスキーパー氏だった。
そのルンバさんの調子が悪い。
9年の長きにわたって酷使してきた体にガタがきたようだ。
作業後、自力で充電器に戻れなくなってしまった。充電器と床とのほんのわずかな段差に乗る力がなくなったのだ。
充電器に戻れなくなったルンバさんは、なぜかまた掃除に戻ろうとする。だけど途中で力尽きて、リビングの真ん中で充電切れしてダウン。まるで、家に居場所のなくなったお父さんが、仕方なく会社に入り浸っているようで、気の毒でならない。
原因は分からない。
センサーの故障か、タイヤを回すモーターが弱っているのか。
最近はタイマーを解除し、平日の作業は中止。週末に、私や夫の目の届くときにルンバを走らせることにしている。
掃除が終わって、ルンバが充電器に戻りそうなそぶりを見せると、こっそり後ろをついてって、充電器に乗れるよう、そっと押してやる。
そろそろ買い換え時なのは明白なのだけれど、どうもすんなりと買い換える気になれない。
それは、老いぼれたルンバを自分に重ねるからだ。
日に日に衰えていくルンバと、老眼でモノが見えなくなった目、無理が利かなくなった体、弱っていく脳みそ、年々老化が進み、AIだなんだと急激に進む時代の流れに取り残されそうな中年の自分がオーバーラップして見える。
ガタつきながらも、一生懸命仕事をしようとするルンバ、見えない目をこらして、ガタが来る体をいたわりながら、時代に置いて行かれないようにと必死に社会にしがみついている自分。
簡単に新しいルンバに替えてしまうことは、老いぼれていく自分を見捨てるように思えて、どうしてもできないのだ。
一蓮托生。
いつかルンバが本当に動かなくなる日まで、彼と共にいることは、自分を励まし社会に居続けることと同意義のような気がしている。
なので当分は、週末ルンバお尻を追いかけて、彼を充電器に押し戻してやる日々を続けるつもりだ。
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