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愛される人の頭の中 #ハッピーになるかもしれない朝エッセイ

「こういうやつをちょっと買って持っていくと、喜ばれるんだよ」

先日、仕事関係のエライ方とお話していたときのこと。
偶然、仕事でご一緒したが、そうでなければ、一生お近づきになることなどできないだろうと思うくらい雲の上の人。
どんな偉そうな人だろうと思ってドキドキしていたのだけれど、お会いしてお話しすると、とても気さくで、どんな人にも態度を変えない心遣いのできる素晴らしい人だった。

その方と雑談になった時のこと。
ふと目に付いた、高級食パンのお店のチラシ。
最近、あちこちに出店していて美味しいと評判らしい。中には、毎朝開店前に行列ができるお店もあるとか。
金額は、1欣500円程度。
噂では、しっとり、甘くて、耳まで美味しいのだとか。
ふわふわ、もちもちで大好物のパスコの「超熟」の2.5倍。セールの時なら3倍か。庶民の私には、毎朝のトーストとしては買えない金額。
食べてみたいものよ。

そんな話をしていたところ、その方がおっしゃった。

「仕事の相手先に行く途中で、ここのパン屋のそばを通り掛かったら、3つ、4つ買うんだよ」
おや、この方は、仕事中に寄り道するほど、こちらの食パンのファンなのかしら?
ほうほう、とお聞きしていると、

「仕事先に持って行って差し上げるんだよ。こういうのを持っていくと、すごく喜んでくれるんですよ」
なかなか自分では手の出しにくい高級食パン。でも噂では美味しいと聞くし、食べてみたいと私と同じように感じている人はたくさんいるはず。
人はゲンキンなもので、欲しいものをそっと差しだしてくれる人がいたら、その人を嫌いにはなれない。

「ただ顔を見せるだけだと、相手先の人に、僕が来たことも、顔も名前も忘れられちゃうでしょ。高級と言っても、たかだか数百円じゃない? これで顔を覚えてもらって、仕事をさせてもらえるなら、安いもんよ」
照れ隠しのように冗談めかしておっしゃって、わははと笑った。

そういうちょっとした心遣いが、この方が人を引き付ける理由に違いない。

その方は、こうもおっしゃっていた。
「僕は、人にしてあげたことはすぐ忘れちゃうんだよ。10の頼まれごとのうち9してあげられたとして、1つできないことがあったら、できた9のことは忘れて、できなかった1が忘れられなくてね。いつかその1の頼まれごともやってあげられないかと、ずっと考えてしまうんだよ」

人に愛される人はこういう考え方で生きているのか。惜しげもなく人に与えて、自慢もしない。
なんて謙虚なんだろう。やはり、社会の上に立つ人というのは人格者だわ。
そりゃそうか、下から押し上げてもらい、上から引っ張ってもらえる人柄や人徳がなければ、長い間、こうして上の地位で居続けることはできないもの。

また、こうも言っておられた。
「でもね、相手からは、お世話した9つを忘れられて、できなかった1でもって『お前は何もやってくれない』って言われるんだけどね。わはは」

グサッときた。
旅行に行くと言えば、自分のために買うお土産のことばかり気にしているし、できれば人にあげるお土産を最小限にしようとしていた。
人に会うのに手ぶらで行ってしまったり、そのくせ相手から頂く手土産を期待していたり。
いつも誰かが自分にしてくれることばかり考えていて、あの人はああしてくれない、こうしてくれないと不平ばかり並べていた。
誰かが上手くいくのを見れば、勝手に自分が下がったような気がしたり、天狗になって、褒めてくれることを当たり前に思ったり。
なんとも、あさましい。
自分がもらうことばかり考えて、人に与えることを忘れていた。そんな人間が愛されるはずがない。

「これ、持って帰って。お疲れさん」
帰りに、その方が私に紙袋を差し出した。
中を覗くと、ちょっと高級なきんつば。常々、お店を横目で見ていたけれど、少し敷居が高く感じて買えなかったお店のものだった。
よくあるチェーン店の洋菓子でもなく、超高級な老舗和菓子店のお菓子でもない、気兼ねなく「ありがとうございます」と頂けて、すごくうれしい、この絶妙な金額のライン、さすがだ。
好感度、爆上がり。一生ついていきます。

その方の足元にも及ばないが、その方を少しでも真似しようと、先日、私も出張の帰りに、出張中の仕事を代わってくれていた同僚のために、いつもより多めにお土産を買って帰った。
こんなところに書いてちゃ、あげたことを忘れられないだろう。あかんなぁ。

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RUMI
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