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赤信号が沁みる夜 #ハッピーになるかもしれない朝エッセイ

「じゃあ、春から楽になりますね」

先日、社内で久しぶりに会った友人から、こんなふうに言われた。
下の娘が大学受験を迎え、春には家を出るだろうと話したときのことだ。

たしかに、娘が家を出れば、娘の学校行事のあれこれも、日々のいろいろも、ほとんどなくなる。
相当、静かになるだろう。
休日の朝に「朝ごはん作って!」と起こされることもないから、朝寝、夜更かしし放題。送り迎えもなくなって、自分の時間が増える。このご時世が落ち着けば、いつでも旅をすることもできる。

「でもね、さみしいものよ」
私は友人にそう返した。
一戸建てに夫と2人は広すぎる。
4人家族用に作った家は、2人で2部屋使ってもまだお釣りがくる。それに、知り合って四半世紀の夫と、たった2人で会話がめちゃくちゃ盛り上がるなんてことも、ない。

だから「犬が飼いたいな」と呟いたら、「仕事の帰りが遅いくせに、誰が世話をするの? それ、在宅勤務の僕になるんでしょ? 勘弁してよ」と止められる。

同世代の友人は、今、元気な小学生を育てている。野球少年だそうだ。
きっと、まだまだ子育てに忙しい。「早く終えて自由になりたい」という思いでいっぱいだろう。子育てのゴールが見えた私をうらやましいと思っているかもしれない。

でも、今が一番いい時だよ。


子育てに明け暮れてたころ、年配の人に言われた言葉が頭に浮かぶ。
ああ、私もついに、そっち側になったか。

子育ては一回きり。
今振り返ると、後悔と反省ばかりだ。楽しかった日々より、悩んだ日々のほうが多かった気がする。
やり直せるなら、もっと優しく、存分に甘やかす母親になりたい。

でも、子供の成長を見守りながら、試行錯誤して、がむしゃらに暮らした日々は、本当にいい時間だった。

親子の関係は一生続くけれど、子供のこの社会での生きるすべを教える「子育て」は、おしまい。

ここからは、人と人、大人同士の関係、ここで一緒に生きていく関係をを築いていく。

夜、オフィスを出ると冷たい北風が吹きつけた。マフラーをギュッと首に巻きなおして、肩をすくめて赤信号が変わるのを待つ。

赤信号 寒さがやけに身に染みる きみの門出と 私の後悔

歌を詠んでしまいそうな、そんな、1月の夜。

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RUMI
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