お嫁さんのお菓子をご存じですか? #ハッピーになるかもしれない朝エッセイ

子供のころ、近所に結婚式があるともらえるお菓子がありました。

それが、お嫁さんのお菓子。
パッケージにも、「花嫁菓子」と書いてありますね。

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まあ、令和の時代から考えると、「家にお嫁に来る」「花嫁さんを近所の人にお披露目する」という考え方はどうかと思いますが、昭和の時代に子供だった私は、ふだん目にすることのない綺麗な花嫁衣裳を着た人が見られて、このお菓子がもらえるのがうれしくて、結婚式があると聞くと、わくわくしたものです。

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中身は、こんなお菓子。ふ焼きというやつでしょうか。
一般的なふ焼きより少し厚め。

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材料は、もち米と砂糖と着色料のシンプルなお菓子。

噛むとサクッと軽い音がして、じゅわっと消えていく。
砂糖の甘みが、口の中に残ります。
いくらでも食べられそうなのに、たった数枚しか入っていない。この物足りなさが、お嫁さんのお菓子のにくいところ。
寸止めされると、よけい美味しく感じちゃう。

素朴で優しい味と色合い。
いつも食べているポテチやポッキーやアイスクリームのほうが、だんぜん味も満足感も見た目も豪華です。でも、このお菓子には、結婚というハレの日の空気が閉じ込められているようで、私の中では特別感がありました。

お嫁さんのお菓子を製造している、浅井製菓所さんのHPによりますと、

徳島では婚礼の時に、花嫁さんが実家や嫁ぎ先の近所に挨拶をしながら練り歩く"初歩き"という習慣があります。この時に花嫁さんが、お祝いをしてくれる近所の方々や子どもたちに「花嫁菓子」を贈ります。

県民の間では"およめさんのお菓子"と呼ばれ親しまれています。

どうやら、徳島だけの風習のようです。
花嫁さんの初歩きは、住み慣れた村を離れ、新しい村の住人になったご挨拶だったんですね。

今、地方都市は高齢化と少子化が進んでいて、街から若い人がいなくなっていて、結婚式に出会うことが少なくなりました。
また、結婚が個人同士のものになって久しくなりましたし、村や集落の構成員という感覚も薄れてきました。
結婚式は結婚式場で行われるようになり、花嫁さんが近所を練り歩く風習もなくなって、近所でお嫁さんのお菓子が配られることはなくなりました。今では作っているお菓子屋さんもずいぶん減ってしまったそうです。
なかなか手に入らないお菓子になりました。

それが、先日、久しぶりにスーパーのお菓子売り場で見つけたんです。
1袋99円(税別)

買ってしまいました。

「懐かしいなあ」と言う私たち夫婦と「それ何?」と尋ねる子供たち。
ここに、大きなジェネレーションギャップが……

だけど、食べれば、
「おいしい」
と、意見が一致。
チョコや洋菓子のような、強烈な甘さやコクはないけれど、ふんわり柔らかな、春の陽だまりのような美味しさです。

浅井製菓所さんのHPによれば、最近は、結婚式のプチギフトや引き出物として、親しまれているそう。

なるほど。場所は変われど、結婚式に来てお祝いしてくださった方々に「これからもどうぞよろしく」という気持ちを送っているのですね。

お嫁さんのお菓子の本来の意味は、形式は変わってもずっと受け継がれているようです。なんだか、ほっとしました。

私は、友人の誕生日など、お祝いにちょっとしたものをあげたいとき、このお嫁さんのお菓子をプレゼントしたりします。(定番で売っているお店がなかなかないので、見つけたらですが)
同年代かそれ以上の年齢の人なら「懐かしい!」と、若い人なら「珍しい!」と、話のきっかけになりますし、「寿」のパッケージにお祝い感がこもっていますので、ちょうどいいんです。
名前は「お嫁さんのお菓子」ですが、結婚に限らずお祝いしたい気持ちは同じです。もっと、お嫁さんのお菓子が、人の「おめでとう」に活躍してもらいたいものです。

今度、誰かに会うときにも、お嫁さんのお菓子を持って行こうかな。


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RUMI
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