庭の椿が復活した話 #ハッピーになるかもしれない朝エッセイ
先日、庭の小さな鉢植えの椿が新芽を出した。
水滴が肉厚の葉に乗って、きらりと光っている。
数か月前。春先のスーパーの花売り場で見つけた。
すっと伸びた幹、均等に伸びた枝と葉の凛としたたたずまいが気に入ったので、買って帰った。
それから数日後、椿は、無残にも根をむき出しにして、地面に横たわっていた。
前夜の春の嵐の強い風に吹き飛ばされ、鉢が倒れたらしい。根はカリカリに乾いていて、青々と茂っていた葉は、軽く触れるだけで枝からぽろぽろとはがれ落ちた。
ネットで調べたら、どのサイトも「こうなったら、もうだめです」と書いてある。
「だめか……」
そう思いつつも、どうしても諦めきれず、庭に転げた鉢を拾い上げる。幸い、鉢は割れていなかった。新しい土を入れ、椿を手に取る。根と葉に付いた泥を丁寧に手で払い落として、鉢に植えなおした。
「生き返って」と念じながら、水をたっぷりとやって、元の位置に戻した。
数週間後、梅雨の晴れ間の週末に、久しぶりに庭に出た。椿の鉢植えの前にかがみこんでよく見たら、赤ちゃんの指先ほどの小さな葉が数枚出ていた。
それから、どんどん新芽が出で、次第に元の姿に戻りつつある。
残念ながら、買ったときのように、葉は均等でもなくなったし、幹も少しゆがんで伸びているけれど、そのいびつさは、力強く再生した証。
私は植物を育てるのが下手なので、案の定なかなか成長しないけれど、できるかぎり大事に育ててやりたい。
明日晴れたら、薄緑色の小さな新芽は太陽に照らされて、誇らしげにキラキラと輝くだろう。
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