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水着のススメ
夏は水着にかぎる。
もちろん、アラフォーになって急に海で泳ごうとしているわけではない。
台風が過ぎ去った翌朝、すっきりと晴れた天気のことを「台風一過」というが、最近の台風は、過ぎ去ってもまだぐずぐずと雲を居座らせ、あまつさえ、台風前より湿度を上げ、すっきりどころか、がっかりさせる日が多い気がする。
そういえば、子どものころ台風一過を「台風一家」だと思っていて、「巨人みたいな台風の家族が町を練り歩き、木々や家々をなぎ倒し通り過ぎていったくらい被害があった」という比喩だと思っていた。
そういう意味でいえば、最近の台風一家の一団は、どうやら隊の統率がうまくいっていないらしい。台風の息子あたりが親台風の列からはみ出て、町をうろついているのではなかろうか。
先週末に、隊の乱れた台風一家が通り過ぎたおかげで、今日もお天気雨が降っているし、気温も湿度も上がる、上がる。不快指数もうなぎ登り。
でもせっかくの日曜日、平日にできない家事を少しでもやっておきたいのが、兼業主婦(夫)である。
先日買った住居用洗剤「ウタマロクリーナー」を試したい気持ちもあり、床掃除を始めた。
暑い。とにかく暑い。エアコンを切り、窓を全開にして風を入れても、少し動くと汗が噴き出し、息が切れる。
ジャージの部屋着のワンピースの裾が、汗で足にまとわりつく。
ああ、そうだ。あれだ。
手にした掃除道具を放り出して、2階へ駆け上がり、タンスから取り出すのは、「水着」
といっても、ビキニやワンピースではなく、水着のショートパンツだ。
我が子がまだ小さかった頃、一緒に海やプールに入るため買ったものだ。
ラッシュガードと水着素材のスパッツとショートパンツ。
ラッシュガードとスパッツは、まったく着る機会がなくなってしまったが、ショートパンツはあれから十数年たっても未だ現役。
夏の大掃除の日は必ずこのショートパンツを履いて作業する。
動きやすく、濡れてもすぐに乾くし、汚れも付きにくい。
風呂掃除やこういう床の拭き掃除のときは何より重宝する。
ベージュの単色なので、見た目には普通のショートパンツに見える。もし作業中に宅配便の人が着て、そのまま出て行っても違和感がない。
夏の大掃除にショートパンツを履こうと思ったのは、たぶん何年か前の雑誌「暮らしの手帖」の生活のアイデアを記した小さなコーナーで読んだからだ。わりと真面目な内容の多いこの雑誌に、堂々と「大人もショートパンツを履きましょう」と書いてあって、「あ、いいんだ」と許可された気がした。
以来、タンスの奥から引っ張り出してきたこの水着のショートパンツとともに、夏の暑さと湿気と闘い、家事をこなしている。
割と捨て魔なので、十年も前に買った洋服はほとんど残っていないのだが、このショートパンツは重宝すぎて捨てられない。
もちろん、冬に着るのは無理なので、夏限定。
これを着るようになったら夏を実感するので、もはや私にとっては夏の季語。
もはや、海で水着を着られる時代は過ぎてしまったが、こうして家で海の気分を味わってみるのも悪くない。
でも、ひょっとしたら、来年夏はこのショートパンツを着て、本物の海にいるかもしれない。
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