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初めての鬼 【毎週ショートショートnote】工作員ヤンの潜伏記 7


工作員ヤンに初めての任務が発令される

清除員(スウィーパー)

バイト先の居酒屋で急用ができたとエリサに言って下宿を出る

埠頭の倉庫へ向かう



縛られて意識がない中年の男

訓練どおり、脊髄に鋭利なワイヤを差し込み、心肺停止にする

そしてポンプにつないだチューブを動脈に繋ぐ

血液を抜くと腐乱が遅れ、死体処理が容易になる

「活け締め」、教官はそう言っていた

日本人が考案した、効果的で残酷な死体処理だと


液体抽出を完了し、死体を冷蔵庫に移す


任務以外の余計なことは命取りだが、気になって男の上着のポケットを探る

身分証明があった

公安警察、山田六郎

「覆盖脱落」、身ばれの工作員がやむなく消したのか


任務執行では心を鬼にしろと、教官は言っていた


不思議なことに無感情だった
非現実的な夢のようだった

色即是空

眼の前の存在に実体はないと釈迦は説いた

留学生揚子河としての虚構
チワン地区ニャ族の孤児チシャとしての真の存在

初めての殺人
もう戻れない
鬼になってしまった

(408字)


たらはかにさんのショートショート企画に参加です。

先月、カミングアウトコンビニというシュールなテーマでテキトーに登場させた工作員の留学生ヤンくんが何故か気になって勝手に連作にしてますが、ショートショートの趣旨から毎回それぞれ独立してそれなりに完結させようとしてます。工作員としてのえぐいハードボイルドな部分をいれたいなと思っていたら、「初めての鬼」というお題。

10数回で悲劇の最期へと展開できれば。

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