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『コブラ会』シーズン3 米国の分断から和解へ?

正月休みに、新たにリリースされた『コブラ会』シーズン3を一気見した。

なかなか楽しめた。一連のスターウォーズ映画みたいに、70年代・80年代のヒット作のドラマが新たなクリエーター達によって掘り下げられ肉付けされて、シーズン1と2に続いて、一大サーガ(年代記)として再生産されている。一流のクリエーター達によって娯楽性たっぷりに。特にその時代に青春をおくった世代には、とても懐かしく、それだけでツボにはまる部分も多い。

シーズン3でも、主人公のダメ男ジョンがかつてのガールフレンドのアリーと30数年ぶりに再開してこんな会話を交わす。「80年代に高校生でよかったと今でも思うのは、音楽があの頃は最高だったから」。まあ、当時の古いロックを今でもカセットで聞いている主人公をからかったようなセリフなんだが、ぐぐっと来た。そうだよな、あの頃カーラジオから流れてたロックは最高に良かったなと同感。REO SpeedwagonとかThe Carsとか。そんな世代が、いまは親になって高校生の子供への接し方に頭を悩ます。

ネタバレは避けるが、シーズン3では、シーズン2の終わりで示唆された、かつての二人のガールフレンドだったアリーがコブラ会にさっそく初登場かと期待したらなかなか出てこず、意外に、30数年前よりさらにまた時代が遡った敵味方双方の由来の物語が挿入される。沖縄がでてきたり、ベトナム戦争がでてきたり。オビワンケノビとダースベーダーの若き日みたいな。これらの挿話が紋切り型の内容とはいえ、よくできていて、これからの展開の伏線をはっている感じ。このドラマもスターウォーズも、悪役側を掘り下げて人間ドラマとしているのがなかなか凄い。ネットフリックスの方針に、負け犬もていねいに描く、とかいうのがあるらしいが、勧善懲悪の昔のヒット作の、悪役のほうのドラマを拡げて描くというのはとてもおもしろい。

ドラマ『コブラ会』と米国政治については、2ヶ月前に駄文を書いたが(これ↓)、まあこの娯楽ドラマにちょっと考えさせられるのは、登場するカラテの2つのグループの殴り合いの抗争がまだまだ続く中で、そういう「分断」の「和解」へのヒントがいろいろと提示されていると思うから。それがあるので、ドラマに厚みがある。青春スポーツドラマながら、いろいろと考えさせられた正月だった。コブラ会を通じた米国政治経済洞察。

まあ、青春ドラマなので、そこから、進行中の米国現代政治を占うなんて馬鹿げた話なんですが、そして、創り手のほうもそこまで明確な比喩を織り込んでいるわけではないと思うんですが、バイデン政権船出にあたって、ドラマを観てて考えさせられるところは多々あった。

主人公のIT革命に取り残された50過ぎの負け犬の白人のおやじは、コブラ会を再開させたと思ったら、昔の恩師にそれを乗っ取られる(シーズン2までのストーリー)。主人公がトランプの暗喩かと前のポストでは書いたが、訂正、主人公はトランプ自身というより「トランプ支持層」そのものに重ねてあるように思う。

シーズン3はフィナーレでなくて、シーズン4へと続く、で終わる。いろいろ疑問が残る。もうすぐ就任のバイデン政権でアメリカがどうなるかといっしょで、さてどうなるか。

いまや再生コブラ会は恩師に牛耳られているという状況は、結局、古くからの重鎮が発言力を増した共和党の今の状況?トランプ支持層の関心はこれからどこへ?コブラ会から追い出された主人公と生徒達はこれからどのような動きに?ちょっとネタバレだが、かつてのライバルの主人公ジョンとダニエルが手を組んでコブラ会に対峙する?という流れがシーズン4へと示唆されている。これはどういう現実の比喩なのか?

シーズン3では、ふたつの対立するグループは徹底的に戦っている。いがみ合い、妥協する余地が全く無いように。高校青春ドラマなので誰も死なないが、血みどろの殴り合いがずっと続く。反発し罵り合いながらも相手の顔を見て言い分のやりとりがあるというのを、対話があるとして救いと見るべきなのか、それだけ断絶が深く、和解は遠いと見るべきなのか。

シーズン2に続いて、登場する女性の役割が注目じゃないかなと、いろいろと想像を巡らせてしまった。シーズン2と3では、女性達が、2つの反目する勢力の和解へのちょっとしたきっかけをつくってくれる。2ではダニエルの妻と主人公のガールフレンドのエクアドル人女性が、3ではダニエルの妻とかつてのガールフレンドのアリーとが。食事しながら社交的に、喧嘩が止まらないおやじ2人を諭すような会話をして。

ダニエルの妻は、ビジネスもできるし賢いし、時には声高に相手を糾弾するのは、民主党のかつてのヒラリーとかカマラ・ハリス副大統領的な、タフな部分を描いている気がした。コブラ会の重鎮はそんな攻撃的なのを逆手にとって自ら正当化しようともする。一方で、初登場のアリーは、精神学医になったとしているのがなかなかうまい設定だが、反目する二人を冷静に見て、対立は遠い昔のことだと和解を優しく促す。

なんだか、ドラマと現実が同時進行しているみたいで、今年も、コブラ会シーズン4も、バイデン政権任期1も、なかなか波乱含みで目が離せない。まあ、よくできた、青春スポーツものとしても全然楽しめますので、おすすめ。

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