五輪愛
今朝、ソファで寝ぼけ頭で、パリ・オリンピック閉会式を見た。
なにやら、あの鬼才ギジェルモ・デルトロ監督の映画にでてくる化け物のようなキャラたちが再登場したりして、エッフェル塔だのセーヌ川だのパリの街の魅力を最大限に引き出した舞台設定で、なんともあやしげな前衛的なビジュアルですごくよかった。
前回の東京は世界に誇る凄いコンテンツ満載の街なのに学園祭みたいな閉会式で残念だったが、今回のパリは開会式も閉会式も、なんか偉い人が芸術的なとこは気鋭の芸術家に指揮させて思う存分パリの魅力を発信したれとはっぱをかけたようなぶっとんだ感じでよかった。さすが、庶民が革命やって王族をギロチンにかけて中世を終わらせた国だけある。
しかし五輪の式典は近年だと、中国だのリオだの韓国だのロシアだのだと、自己中な国威発揚の場にされてしまっていて、お偉いさんはよくできたと自画自賛だったんだろうけど、ひとつのエンタテイメントというかショーとして楽しむにはダサい感じのが多かった。古臭い。やはり先進国のは、先端の芸術を取り込もうというのがあるのか、ショーとしてもけっこう楽しめるのが多い。
テーマ曲にしても、今回はピアフの「愛の賛歌」というフランスを代表するようなポップスだけど、歌詞をよく読むと一番オリンピックに似つかわしくない曲がテーマに使われたのは、さすがフランス。
人間の身体能力の限界を競って、国と国がメダルを競う平和の祭典の五輪、そこで、「愛がすべて、あなたのためなら祖国も捨てられる、あとはなんにもいらない」と高らかに愛を歌い上げてしまう。凄いな。
この曲はピアフ作詞で、彼女が不倫関係にあったボクサーが飛行機事故で死んだ直後に初めて歌われた曲とのこと。微妙な選曲ではある。日本で言ったら「誰かに盗られたならば、あなたを殺していいですか」と歌う「天城越え」を五輪のテーマにするようなところか。さすがフランス。
夜の閉会式で花火が夜空をあざやかに照らしたり、静かに暗い闇のなかでスタジアムに一面に観客が持っている淡い光がともっている光景の演出はよかった。疫病やら戦争やら力があればなにしてもいいというような権威主義の政治の闇が地球を覆いはじめている昨今、フランスでも最近の選挙で国粋主義政党が躍進したというが、蜂起して中世を終わらせてくれた革命の歴史を持つフランス、まだまだ、闇の中の光の担い手でいてほしい。
閉会式エンディングの画像で、ピアフの愛の賛歌が流れるなかで、転んだ選手の肩を暖かく抱く選手の画像とか、メダルがとれて感極まって抱き合う選手たちとか、論議を呼んだ女子ボクシング・チャンピョンの笑顔の画像とかが流れた。
さすがフランス、スポ根だの、スポーツを通じた友情だの、ジェンダー問題での葛藤だの、いろんなすべて感情の高まりを、「愛」でくくってしまって、ピアフの愛の曲でエンディングでまとめた。愛があれば、いいじゃないと。
まあ、賛否両論あるんでしょうけれど、僕は楽しめました。
フランスは、正直、好きな国ではないんですが、こういう芸術でぶっとんでいるところとか、フランス革命の歴史を踏まえての文化というのはリスペクト。たいしたもんです。
オリンピックとか、サッカーワールドカップ、あと何回みれるんだろうかなどとふと思ったりもするが、それも終活での諦観、バケツリスト、みれる限りみてエンジョイしましょうということかな。 ■
(タイトルは、ギャラリーで五輪と検索してでてきたなかから一番いい感じのを拝借)
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