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ミニー・ザ・ムーチャー



「【連載小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング(4)第四章 ちょっと愛をください」からの抜粋


「鬼教授ダニーのもと、練習は週2回、土曜日のペントハウスと、新たに水曜夜8時から2時間のスタジオ練習も加わる。

スタジオはゲイランというかつての赤線地域にある歓楽街にミュージシャンが経営している格安のを使うが、6畳くらいの部屋に10数人がはいると、おしあいへしあい、酸欠状態だが、飲食禁止にもかかわらずこっそり持ちこんだ缶ビールを飲んだりして盛り上がっている。ルーディの提案で、ホーンセクション練習も別途やることになる。

レパートリーもどんどん増えていった。

映画ブルース・ブラザーズそしてその続編の映画に登場する曲はほぼすべてカバーして、さらに映画の後にも継続して活動しているブルース・ブラザーズ・バンドがコンサートでやっていた曲や、オーティス・レディングとかソウルの有名な曲も加えられた。

土曜午後のペントハウスでの練習には、娘のマリサとゴールデンのしょうゆを連れて片隅の椅子に座って本を読みながら聴いているロシェルの姿があった。

トランペットのルーディのたっての願いで、ミニー・ザ・ムーチャーという映画の挿入曲のひとつもやることになる。これは不思議な曲。歌詞は意味不明、さらにボーカルの大御所キャブ・キャラウェイが、ハリハリハリアー、ウリウリウリオー、とか摩訶不思議なコール・アンド・リスポンスの掛け合いを観客とやったりする。

シンイチは、あ、この唄、たしか米国留学時の学校の学芸会でこれを替え歌にして先生をおちょくる出し物があって大受けしてたっけ、と思い出す。米国の定番おもしろ替え歌みたいなものか。ボーカルのブルースが、ハリハリハリハリアーとえらく盛り上げてくれる。職人芸の上手さ。ジャパニーズたちはひそひそと、はりはり鍋くいたいな、でもクジラはやばいよな、とか関係ないことを話してはいたが。

2月の旧正月が終わって雨季が終わったかなという3月、太陽の照りつけは日増しにジリジリと焦げ付くような熱さを増している。湿気100%の淀んだ空気の中、ルーディの哀愁あるトランペットが響くと、一瞬、東南アジアの熱帯の島が、アメリカのミシシッピー河河口の南部の街に変わったような錯覚を受ける。ルイジアナあたりの場末のバーで流れるような音が、30階のペントハウスからアジアの夕空へと流れていった。」


すんません、音悪いけど音源がでてきたので、過去執筆作の自己番宣でした:

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとはこれっぽっちも関係ありません。

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