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【Jazz】"Body and Soul" by Charlie Parker

チャーリー・パーカーの演奏で、録音状態が悪くてどこかの個人の家の居間で演奏したような録音の中に、なんともいい感じのがある。

All of Me をチャーリーがレニー・トリスターノのピアノと、かすかにしか聞こえないドラムとで延々やった録音のが一番好きだが、この Body and Soulもいい。音は悪いが、なんど聞いても飽きない。

どんな状況での録音かしらないが、練習しているようなリラックスした感じで、チャーリーの持っている技(フレーズ)が溢れるようにでてきて止まらない。やはり天才は凄い。

持ち技のフレーズをどんどん繰り出して、かなり元メロディの輪郭を残しながらソロが展開する。

アドリブは、ひとつひとつのコードというより、ざくりとコード進行の動きに乗せてなのか、あるいはオリジナルのメロディーを頭の中で流しながらもっとおおまかに自由にやっているのか、伸び伸びと流れていく。

天才画家が、ささっと鉛筆で線を引いて描いていくのが、最後には素晴らしい肖像画になっているような、全体としてのまとまりがある。

それぞれの線も後からみると、全体の構成の中でちゃんと意味がある。それでいて、それぞれから全体を簡単に想像できてしまうような予定調和くささもあまり感じない。個々のフレーズも、事前準備されたものでなく、その瞬間の刹那的な即興としてカッコよくきまっている。

ジャカジャカとギターの伴奏だけで、まず、チャーリーはBody and Soulのメロディらしきものを吹き始める。が、すでに各フレーズの語尾は自由に展開して尾ひれをつけて上へ下へと動いている。少しづつ、崩したメロディーというよりアドリブ展開ぽくなるが、メロディを知っている聴き手にはちゃんとメロディが聞こえてくる。

繰り出すアドリブの技は、緩急メリハリよく、時には早く、時にはメロディックに、時には止めたり、ゴムみたいに伸びたり。いろんなリズムのパターンの技を繰り出す。

1コーラスのメロディを終えると、打ち合わせしてあったのか、その場で目配せしたのか、ジプシーギターみたいにジャカジャカ4ビートを弾いてたギターが倍テン(拍子は変わらずコード進行の速度は変わらないがビートが倍になる)になってアドリブが始まる。

と思ったら、案外またメロディラインが聞こえてくるようなアドリブソロが続く。

とてもリラックスしている感じで、倍テンになったけど、さっきとちょっとフィールが違うから、またメロディっぽくいってみようかなあというような。

でもそこは天才なので、メロディの崩し方そのものに、もう彼の口癖のアドリブっぽさが出まくっている。このYoutubeの写譜したのをみると、次のフレーズへのピックアップのつなぎみたいなところで、お決まりの、まんまコードの音を展開させているのが多用されてたりするが、それもとても自然で全体の流れをうまくつなげている。

我々が母国語でだべるときみたいに、文と文のつなぎ言葉とか、ちょっとした慣用句が意識せずに挿入されていて、会話が自然な感じ。

いい感じのすべらない喋りが展開していくが、やはりアドリブはアドリブで即興さはあるので、リラックスした雰囲気ながら、聞いているこっちには次どうでてくるのかなという緊張感はある。プロレスで、レスラーが次どの技かけてくるのかなというワクワクのような感じ。

曲はAABAの構成でAのところがマイナーで、サビのBで、ぱっと花が開いて咲いたようにメジャーで2回転調する。人生、基本は辛いんだけど、生きててよかったという瞬間がある、そのためにみんな生きてるんですよみたいな。それでまたAのマイナーへと戻って曲は終わるんですが。

1コーラスのアドリブをとると、またテンポがもとの4ビートに戻る。

まだアドリブは続くが、頭に戻ってちょっと彼にしては精彩にかけるかなと思ったら、おきまり16分音符の早吹きの技を決めたら、なぜかコーラス全部吹かずに、半分のサビ前の前半だけでまとめて演奏を終えてしまう。

もっと聴きたかったな、このアドリブ。

たぶん当時の録音媒体の限界なのか、もし続けて録音できていたら、チャーリーなら永遠にアドリブ技を繰り出してきていたんじゃないかと思う。

まあ、こうした貴重な録音が残っていて今日聴けるだけでもファンとしては有り難いが、おそらく本人にとっては、そんな後世に残すつもりはまったくない、軽い日々の練習みたいなものだったのかもしれない。


そんなことを伝えられるのなら、チャーリーはたぶん笑って「アドリブ?やってないよ。あれはメロディをちょっとくずしてテキトーに吹いてただけだよ」というかもしれない。

いえいえ、こんな練習みたいな演奏でも、溢れ出してくるあなたの創造性、部分を組み立てながら全体がみえている視野、それぞれのフレーズの美しさはなかなか隠せるもんではないですよと話しかけたい。

普通は見れない、天才の練習風景を垣間見れたような、ぜいたくな録音だと思う(まあ、完成度はほかの有名な録音のほうがいいでしょうから、マニアックな人向けかな) ■


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