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英語教育における「なまこ」と「蟹」

仕事がらみの話。延べ3年前くらいすったもんだした、アドバイザー先のベトナムの教育ベンチャーへの日本の同業からの戦略提携出資がやっと調印したのが2年近く前。

意外なシナジー(提携・合併効果)がある提携だった。

双方とも、アメリカなどの英語圏への大学生や高校生の留学支援事業があったので、留学先の情報の共有とか、英語圏の先生の採用とかそういうシナジーかなと想像していた。

まあ、かたや少子化で成熟経済の日本と、かたやまだまだ平均年齢も若く家計の所得が増加傾向にあるベトナムとでは、日本側からの投資も成長への投資につながるし、ベトナム側も事業拡張のために必要な資金調達できてウィンウィンだとは思っていた。

意外なシナジーは、それぞれでやっていた、夏の中高生の英語キャンプにあった。

英語キャンプは、それぞれ、日本は日本人の学生に英語の先生、ベトナムもベトナム人学生に英語の先生で5日くらい夏に泊まり込みでやる体験学習語学プログラムとのことだった。提携後のアイデアとして、そのキャンプで、学生を相互交流参加させたり、第三国の例えばシンガポールで合同キャンプを開いたらどうかと。

ためしに、6月が夏休みとなるベトナムから日本へと学生を呼んで、日本側でノウハウのある富士山がみえる合宿所で英語の先生と英語の勉強をした後に、東京で日本人高校生と交流会をやったら、なかなかよかったとのこと。6月は日本側もビジネス閑散期でサポートにはちょうどタイミングよいと。残念ながら日本が夏休みでないので泊まり込みの合同合宿はなかったが。

日本人だけ、ベトナム人だけだと、先生がちょっと席をはずしたり、お互いでも英語で話せといわれても、学生は気を抜くと母国語になってしまう。そもそも英語もつきつめれば単なる意思疎通手段なので、よく考えると、母国語で意思疎通ができる相手と敢えて不慣れな英語を使うのは、ぎごちなく、照れる。

それが、ひとたび母国語では意思疎通が無理で、英語しか共通言語がない状況になると、それなりに片言ながら会話が始まる。日越の学生を混ぜたら、緊張感もでてきて、けっこういっしょに英語で喋ろうとしていてよかったと。

その話を知人にしたら、それって、イカだったかが捕るとすぐ死んじゃうのを漁船で天敵のイワシだかを側にいれておくと緊張して港まで死ななくて鮮度が保てるというのと同じですねえ、と。何事も緊張感が大事という話。

そうそう、そうなんですよと、うなずきながら、あれ、なにか違うな。

イカじゃなかったような。タコ?天敵もイワシでなくてもっと大きな魚?まあ発言趣旨が変わるわけではないので、敢えてその場では指摘せず。

あとでグーグルすると、やはり、ぜんぜんイカではなくて、「ナマコ」の話だった。それで、天敵は「蟹」。イカやナマコのためにも、比喩は正確にしないと。

このシナジー、ベトナム人学生の滞在の最終日に、ベトナムから親御さんが子供のピックアップがてら東京に旅行できた人がいたとかで、もっと今後、不思議な展開が期待できるかもしれない。まあ、2020年の国境閉鎖で一時休止になってしまったものの。

僕はベトナム側のアドバイザーだったので、提携調印後にベトナム側から成功報酬をいただいたが、シンガポール知人ビジネスマンにベトナムの客からフィーもらったというと、え、ベトナム人からフィーをとるなんてそれはビジネスとしてはかなり高度だ、と感心されたが、ある意味偏見で、なに人でもちゃんとした相手にちゃんとしたことすれば基本はちゃんと払ってくれる。正直、着金するまで不安はあったが。

不思議なことに、当然、日越ともに英語の商売の経営陣なので英語圏での生活経験も長く英語の意思疎通はスムースだったが、交渉プロセスで日本側についた日本人のアドバイザーの英語が一番わかりにくかった。日本の英語教育の限界か。

小粒ながら、いろいろ考えさせてくれたクロスボーダー提携のディールだった。



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