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"Life Shift" 「へえ」と「ふむふむ」
年末年始読書から。日本の本屋で山積みになっていたので買ってきたロンドン・ビジネス・スクールの教授2人が4年くらい前に書いたベストセラー "Life Shift" (邦題「100年時代の人生戦略」(スコット/グラットン)の続編で、邦題「100年時代の人生行動戦略」。
要は長寿化して人生長くなったので、これまでとは違う人生設計必要ですよという話。
ベストセラーなので書評はいろいろWebにもあるだろうからはしょって、その2冊から、個人的に、「へえ」なるほどそんな事実があるのかという気づきと「ふむふむ」と腑に落ちて思ったことなどを私見をいれながら備忘録的にメモ書き。
本自体は、誰が読むべきかは微妙かな。
これから労働市場に参入していく20代が読んでどうやって人生設計をするべきか考えるというのが本当は読むタイミングとしていいが、あまり経験が少ないと多分読んでも「へえ」という気づきにならないのでは。
逆に、本が言う旧来型の3ステージ(教育・就労・引退)で引退がもうすぐみえている人には本からの気づきのほうは多々あると思うが、急に人生100年になったので60才以降のことを再設計しなさいと今更言われても遅いよということになってしまうのでは。
既に転職や起業してたり、本が言う「インデペンデント・プロデューサー」(職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人)とか「ポートフォリオ・ワーカー」(異なる種類の活動を同時に行う人)を実践してきた人にはそれを肯定してくれるというところはあって、励ましになるとは思う。そのまま続けて、来る人生100年時代を生きましょうと。
日本人総サラリーマン的議論をする人が多いが、けっこう日本でも自営業でクリエイティブ系の人とか、自分をプロデュースして仕事をとってきたり、同時に複数のことをかけもったり、そんなのやってましたよという人が多いのかなとも思う。僕も過去10年ほど自営業コンサルなので、それ、あるある、自分で駆け回ってどうにか仕事つくったり、複数のことを同時にやったり。世界的にサラリーマン的ビジネス構造が20世紀には大成功だったので、その反動が来るんですよというような警告の書なのか。
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けっこう楽しんで読めた。長寿化がらみのファクトとか統計数字に「へえ」、これからどうすべきかについてのうちいくつかについてが「ふむふむ」。
まあ、以下、僕が本を読んでなるほどという部分のメモ書きと徒然なる自分のコメントなので、面白いと思ったらネタ元の本をお読みください。
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「へえ」と「ふむふむ」なところ
・歴史的に過去にも長寿化で人類は人生ステージの変容を経験している。
20世紀にはいったあたりで、衛生状況の改善・医療の進歩で寿命が延びるにつれて、そして、学校教育が長期化することにより、「教育」・「仕事」というそれまでの2ステージに加えて、「ティーンエイジャー」と「引退者」というステージが誕生した。
たしかに昔は14歳にもなれば成人して仕事に就いて結婚もあり得たが、いまやいっぱしの成人は世界的に18~21歳あたりからか。
それでもって、先進国の多くで、特に第2次大戦後に「ティーンエイジ」という13歳から19歳の人生のステージが生まれた。体は一人前だが親の庇護の元でまだ学びにある局面。
また、その頃、寿命が延びて55歳や60歳で仕事を定年してから「引退者」というステータスで余生を暮らす世代がでてきた(もっと前は50才すぎたら死んでた)。100年前、年金制度もできたりして。
たしかに昭和30年代に設定された、サザエさんの波平さんは髪の毛てっぺんで1本で孫がいて定年1年前の54才。それで還暦すぎたら寿命だったのか。そんな54才は今どきあまりいない。
長寿化が人生のステージを変えたことが過去の歴史にもあり、これからさらに寿命が延びることにより、高校大学を出て、仕事を得て60歳くらいまで働いて、年金生活という「3ステージ」は崩れていき、80歳以上まで複数の仕事のキャリアを健康で楽しみながらこなしていく人生が普通になる時代にすでにはいっていると本は説く。
・だんだんぼけてくるしそんなに働いていたら老害じゃないかと言いたくもなるが、本によれば、「加齢に伴い、脳は小さく、軽くなる。50歳を過ぎると脳の萎縮が始まり、80歳を超えるとそれが一挙に加速するらしい」と考えられていたが、最近の研究では「加齢により脳の機能が低下するペースは、約3分の1が遺伝的要因で決まるが、残りは生活習慣で決まる。具体的には、日々の行動、コミュニティとのかかわり方、人間関係の強さ、肉体的健康、食事などが関係してくる」という。
また、うれしい予測は「平均寿命の上昇を上回るペースで、慢性疾患の発症年齢が上昇するだろう」という専門家の仮説があり、糖尿病、肝硬変、関節炎など高齢に関係した慢性疾患の発症年齢が遅くなり、不健康な期間は死亡前のごく短い年数に短縮される可能性があるという。つまり、それなりに健康で長生きできそうということ。
・技術がおこす変革:人類の歴史では、人類を進化させた技術革新が当初は混乱や退行をもたらしたことが多々あった。例としては、1万年前の狩猟から農耕への移行。当初何世紀か人々の生活水準が低下した。そして、イギリスの産業革命も、最初の数十年多くの人々の生活水準は向上しなかった。
技術革新が既存の経済・社会構造を揺るがした結果、それまでとは異なるタイプの創意工夫(社会的発明)が必要となった。なので、技術革新が人類に害を及ぼすのではないかという不安をふりきり、社会的開拓者になる覚悟を持つべし。
・長寿化: ベストプラクティス平均寿命(平均寿命世界1の国の平均寿命)は10年間に2~3才上昇、それぞれの世代が前の世代よりも6~9年長生きしてきている。現在のベストプラクティス平均寿命は日本人女性の87才。
・経済発展と長寿化: 経済発展で「人口学的遷移」が起きて、出生率と死亡率の療法が下落し始める→若者に比べて高齢者の割合が大きくなり、平均年齢が上昇する。今後すべての国で65才以上の人口の割合が高まる。そして2050年までに50カ国以上が人口減少期に突入すると予測されている。
・本(1冊目)で展開されている、新しいかたちの働き方の類型について
エクスプローラー
一か所に腰を落ち着けず、身軽に動き続ける局面。身軽でいるために金銭面の制約は最小限に抑える。旅することにより世界について新しい発見をし、あわせて自分についても新しい発見をする。いつでもこの局面をとりうるが、多くの人にとって、18-30歳、40代半ば、70-80歳くらいの、人生の転機のときが明確な効果を生みやすい。特定の目的を持った人もいるが、新しいものを発見するために旅にでる人もいる。なにをみて、だれと出会い、なにを学ぶかが、未来の人生を規定していく。
インデペンデント・プロデューサー
職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人。旧来の起業家とは性格の異なる新しいタイプの起業家になったり、企業と新しいタイプのパートナー関係を結んだりして経済活動に携わる。旧来のキャリアの道筋からはずれて自分のビジネスを始めた人たちがこのステージを生きる。時には目の前のチャンスをいかすための1回限りのビジネスをすることもある。素早く実験を重ねて、なにが有効で、なにがうまくいかないかを学んでいく。生産活動をして学習していくことに重きがおかれる。
ポートフォリオ・ワーカー
異なる種類の活動を同時に行う。すでに人生の土台を築いた人が、複数の目的をみたすためこの局面を選ぶ。所得の獲得を主たる目的とする活動、地域コミュニティとのかかわりを主たる目的とする活動、趣味を極めるための活動などを同時並行して、バランスを主体的にとりながら生きようと考える。スキルと人的ネットワークの土台が確立できている人にとって、このように高い価値を生み出せるステージは有効な選択肢となる。過去にやってきたこととかかわりのある仕事にたとえば週1日か2日携わりながら、ほかの時間で新しいことも学び、やりがいを感じられるような役割を新たに担う。
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そういえば自分もなんか関連したことを書いたことがあったなと、自分のPostを検索したらでてきた。
去年書いた「スシロー的欲求段階論」。こちらもお楽しみください。■