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喪失感とどう向き合うか②

東日本大震災から、今年で12年経ちました。
当時、東北の病院で心理士をしていた関係で、支援のために被災地へ行く機会がありました。

発災から1ヶ月ほど経った頃の派遣でした。心理的な支援なので、避難所や仮設住宅を訪ね、被災者のお話を伺うのが活動の中心です。その時期は、当初の混乱状態から抜け出し、少しずつ復興に向けて動き出す人が増えている頃でした。

東日本大震災では、多くの方が大切な人を失いましたし、家のように自分にとって大切な物も失いました。その喪失感の大きさは、簡単に理解できるものではないかもしれません。しかし、実際に避難所を回ってお話を伺う中では、目に見えて落ち込む方や、精神的不調に陥っている方は想像よりもずっと少ない印象でした。心の中では複雑な思いがあったのでしょうが、少なくとも外から見える範囲では前を向いている人の多さに、少し驚きました。

とは言え、みんながその流れに乗れるわけではありません。そういう心境になれない方も、もちろんおられます。
ある時、避難所にいる年配の女性と話していました。その方は、「ダメだなぁ。みんなが前を向いて動き出しているのに、全然そういう気持ちになれない」と涙を流していました。僕が「それぞれ流れている時間は違いますから、、。急いで前を向く必要はないんじゃないですか?」と話すと「んだなぁ」と言っておられました。

周囲からの影響を受けない人はいません。その影響が良い方に作用することもあれば、プレッシャーになってしまうこともあります。

「それぞれ流れている時間は違う」

そんなことは皆さんすでに知っているかもしれません。おそらく、この年配の女性も知っていたことでしょう。けれど、周囲からの影響を受けることによって、ついつい当たり前のことを忘れてしまう場合があります。今回は震災の例を出したのですが、これは色んな喪失体験に共通します。

喪失感と向き合う時に大事なポイントは、それぞれ流れている時間の違いを忘れないでいることです。ちゃんと自分のペースを守ることが、結局は一番早いペースでもあるのです。今、喪失感の直中にいる人は、周囲の影響をいったん横に置き、自分のペースで良いのだ思ってみてください。少し気が楽になるかもしれません。

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