あ、本当に神秘的で美しい世界に生まれたのだな。
異なるものが一つになった。種と畑。21と21の塩基と螺旋。
まだ、意思も自我もない卵、胎盤に引っ付いたイボのようなもの。
母の胎盤に引っ付き、分裂を繰り返す。
やがて、母の一部であったその実は、心を宿し、別個体として形成される。
始まりを紐解くだけでも底なしの神秘だ。
なぜ生「まれた」のか、どこへ行くのか。
トンネルを超えて 産声を上げた。ようこそ、この世界へ。
続けて吸収と分裂を繰り返し、統合された美しい肉体を持って、
脳のメモリーを組み立て世界を解像度高く感性と知性で理解するために、
足を使って脳を運び、目で画を耳で音を、舌で心を伝える神秘の時間だ。
いえ、時間というものすら不思議だ。
こんなに溢れかえる不思議の神秘さを分からずとも当たり前のように生きられることに、狂気のようなものを感じることもあるが、
幸いなことに世界は美しいもので溢れているから、それに感激して感動して生きるだけでも十分すぎるほど。
そんな美しい場所で、
その秘密を知って生きられるならば、どれだけ幸せかと思っていた二十歳の頃。
愛する演出家の采配により、秘密の中身を知るに至った。
秘密を理解してみると、
結局は愛しているを伝えて、愛しているを聞きたい、一緒に暮らしたい。
なんてシンプルなんだ、愛を理解し体現するための旅路なんだ。
でも、ここで注意して。
この愛は、僕やあなたが思っているようなものではない。
永遠に理解できないくらい深くて、壮大で、繊細で、美しい。
そんな海に挑み続けられるなんて、なんと幸せか。
「真理は愛に帰結する。」という誰かの予想は成就した。