【053】営業とデリバリ、どちらが偉いのか?論争
12月も残りわずかとなり、2024年のM-1を観ながらこちらを書いています。
年末の忙しさが本格化する中、今週は少し前に独立された先輩会計士のMさんのオフィスを訪問する機会がありました。お邪魔してお茶させていただき、色んな話で盛り上がったのですが、やっぱり営業とデリバリの考え方ちゃんと持っておくのは大事だなと思いました。
これはファームで働くうえでもですし、X(旧Twitter)などのSNSでは「営業とデリバリはどちらが偉いのか」というテーマで度々話題になります。
営業がほぼすべて
営業が8割、デリバリが2割
結論から言えば、私自身は「仕事を取ってくる営業が8割、受注した仕事をこなすデリバリが2割」という評価バランスが妥当だと考えています。これは組織や経営という視点からの話であり、個人の職業としての価値を否定するものではありません。職業に貴賎なしであり、そもそも論としては偉い/偉くないという話でもありません。
営業が重視される理由は明快で、仕事を取ってこなければデリバリやその他の後工程が発生しないからです。仕事を獲ってくることを前提として、或いは、その仕事を成立させるために、クライアントとの信頼関係構築、案件獲得後のアサインメントやスタッフの育成、必要なインフラや設備投資といった要素が従属します。これらは営業、もとい仕事がなければ議論にすら上がりません。
デリバリもちょっと大事
もちろん、デリバリが果たす役割も非常に重要です。良い仕事をしてくれたので次を期待しよう或いは他の方に紹介してみよう(そうすることで紹介する側が貸しをつくる)、ということも多々あります。言わずもがな逆も然りで、デリバリの品質がしょぼいと営業に響きます。
リカーリングという会計監査の特殊性
監査業務はリカーリング(定期的に発生する)業務です。このため、営業活動にかかるコストや負担は比較的軽く、仕事を取ってくる難しさや重要性が実感されにくい環境だと感じます。
この対比となるのが単発物のコンサルティング業務で、不定期に提案依頼が行われ、その提案も他ファームとのコンペになりますし、比較の結果、そもそも他社に依頼せず発注者側が自分たちで行うこともままあります。
監査法人の中でも、A)仕事をとってくる人を評価すべき派と、B)ディフェンス重視(=監査法人側が意図しない監査人交代をさせられないよう努める)派の対極的な考え方はあろうかなと思っています。現在監査業務をしていないのですが、会計監査の特殊性があろうとも、個人的な価値観としてはA)かなと思います。この辺りは宗教論争のようなもので万人に共通の答えはないですね。
"世の中はだいたい入札構造"
この話を書いてて思い出したのが、戦略系コンサルティングファーム出身で以前一緒に仕事をしていたKさんで、彼がコミュニケーション関連の研修を主催されていた際に"世の中はだいたい入札構造"と語っていたのもを思い出しました。
一対多で生まれる競争環境と交渉力
先に述べたとおり、一般的に提案を出す営業の段階では、クライアント1に対して複数の提案者が存在します。また、仮に運よく受注できたとして、その案件に誰をアサインさせるかは、仕事を獲ってきた人1名(1名ではなくとも案件獲得に貢献し、提案した内容に責任を持つ人達)が複数のメンバーの中から誰をアサインするのかを決めます。
どう考えても前者が後者を選ぶという縮図であり、この関係性は至るところで散見されます。
川上の人は文句言わない
自身が一側・川上に位置しているときは、往々にして、意思決定や交渉力において優位な立場を持ちます。他方で、多側・川下は他と競わされたり、川上の意向に沿う必要があり、そこに不満を持つこともあります。アサインはわかりやすい例ですね。なお、必要のない場面で交渉力を強く打ち出し過ぎたりするとハラスメントになるのは言うまでもありません。
SNSでの不平不満をみていると、その方がどういう背景をお持ちなのかたまに考えることがあり、その際の一例として上記のようなポジショニングなのかもしれないと推察することが多々あります。
日常の業務然り、もっと広く捉えれば人生然り、選択肢は多い方が良く、一個人としては、来年も選べる自由を増やせるよう励みたいと思います。
今週は以上です。ありがとうございました。