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音声配信と“自撮り”に共通するもの【配信者インタビュー:BSディムさん】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『オカマが気になる一億のコト』を配信する、BSディムさんにフォーカスします。

「西のオカマ」という肩書で活動するBSディムさんは、日中会社員として勤務する傍ら、個人でコラムニストとしても活動。著書に『しんどいオカマのちょっといっぱいいかがかしら? 〜人生の不安を解きほぐす』(KADOKAWA)があり、日常生活に対するキレ味鋭いコメントが人気を集めています。

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「どうも、オカマです」の言葉で毎回始まる口上がトレードマークとなっている、BSディムさんの配信。「オカマが気になったことを1億個しゃべるまでトークをやめられない」というコンセプトを支える独特の収録スタイルから見えてきた“美学”とは──。
(取材/文:天谷窓大

ゲイバーのママに鍛えられた話芸

──音声配信を始めたきっかけは?

ディム:心の内を吐き出したかったんです。SNSとか音声配信とかって、アタシの「逃げ道」だと思っていて。普段は堅物の管理職として仕事をしているんですけど、毎日家と職場の往復で、なかなか言いたいことを言える空間がなかったんです。

なので、ダイレクトにアタシの気持ちを伝えられる音声配信で「しゃべって何かを伝えるぞ、吐いてやるぞ」と。そう思いたったのが、音声の配信を始めたきっかけですね。

──もともとラジオには親しんでいたんですか?

ディム:いや、アタシ、全然ラジオとかは聴かないんですよね。ラジオのない家で育ったので、学生時代もラジオを聴いて勉強をするとか、そういったこととは無縁だったんです。

──ちょっと意外でした。ディムさんのトークは緩急の付け方がダイナミックで、てっきりラジオを聴き込んでいる方なのかと……。ディムさんが現在の独特のトークスタイルは、どこからやってきたものなんでしょう?

ディム:オカマ仲間と一緒にいるときのしゃべり方が、ずっとこんな感じなんですよ。

治安の悪いというか、すさんだゲイバーに通っていた時期があったんです。そこはもう、「面白おかしく物事を話さないと殺されてしまうんじゃないか」みたいな雰囲気で(苦笑)。「つまらない=即死」みたいな場所で育ってきたんです。

あえて言うなら、アタシのトークスタイルは、そこのママのしゃべり方がルーツというか。「こうやって何かしゃべるんだ」っていうのを、その方たちから学んだという感じですね。「こんな感じでやったら、なんとなくおもしろフレーバーが振りかけられるんだな」みたいな(笑)

──厳しい環境で鍛え上げられたんですね……

ディム:そうですね。いきなり戦場に駆り出されて、被弾しながら業界で生き残る術を学んだ感じです。

──「もっとこうしなさいよ」とか、言われたり……?

ディム:いや、「つまんない」っていう厳しい5文字をすっと差し出されるだけです。「つまんないねー、あんた」とか。……何が楽しくて通ってたんだろう、アタシ!!

──そこはでも、厳しくも愛がある感じというか……

ディム:いや、ないと思いますね(笑) ただただ目の前の同族のオカマを“かわいがって”やろうという思いしか受け取れなかったですね。

──悔しさをバネに、話術に磨きを……

ディム:磨かれていって、というのもすごいおこがましいんですけど、その人たちからしゃべり方が「うつった」って感じですね。それが面白いかは別として……。

「この空気を残しておかなきゃ」と、収録する

──Radiotalkでトークを収録しよう、と思うのはどんなときですか?

ディム:何か日常で、「これは残しておかなきゃな」と思った瞬間に収録しますね。人生のスナップショットのように。

いかんせん反射的に収録するもんだから、収録中の記憶が毎回ほぼないんですよ。聴き直してみると、「あれ、こんなこと言ったっけ」みたいなことだらけで。「なんでこんな恥ずかしいことを……!」と悶絶したりしています。

──そんなことってあります?!

ディム:全然本当に自覚がなくて。トリップしてるんでしょうね。

──収録ボタンを押した瞬間にトリップ……

ディム:あらかじめしゃべることとか、話の流れはこうしようとか決めてるんですけど、それでも突然、思い付いたギャグとかを挟んでしまうんです。「このギャグ言っとかなきゃ、もうRadiotalkで言えるときないぞ!」みたいな。

──刹那的というか、まさに生モノのトークといいますか。

ディム:そうですね、本当にもう、「いま、この空気を残しておかなきゃ!」っていう。まさにそうですね。本当、刹那的な配信です(笑)

「Twitterに収まらない話」をRadiotalkで

──「非モテの未来」について語っていたかと思えば、かたや「宗教が気になる」という話が出たり、ディムさんのトークの幅広さには驚かされます。

ディム:日常のなかで「あれ、ちょっとこれは?」というような、ピン!と来る瞬間があるんですよね。フラグが立つというか。それをポツポツつみとって話しているという感じですね。

ネットを巡回していて「ん?」と気になった話をふくらませようとか、その記事からアタシがいろいろ考えたことをしゃべってみようと思ったり。何かこう、心にちょっと引っかかったというか、溜まった“淀み”みたいなものを吐き出さなきゃ、と思うときがあって。そのたびに「Twitterに置いておくべきか、Radiotalkで配信するべきか」みたいなことを悩んだりするんですよね。

──「Twitterでつぶやくか、Radiotalkで配信するか」の境目はどこにありますか?

ディム:最初に考えるのは「Twitterの人たちが好みそうな話題かどうか」というところですね(笑)。こういう話はTwitterにポストしておいた方がいいのかな、とか。

Radiotalkの場合は「ちゃんとふくらませられる話」というか。単発で終わっちゃわないような話、ですかね。でも、そんな明確な境目でもないのかな……。どこか無自覚のうちに選別している、という感じかもしれないですね。

──Twitterに収まりきらない話をRadiotalkで、という感じでしょうか。

ディム:そうですね、「Twitterに投稿するのはもったいないぞ」と思っちゃう話もあって。話の重みが(Twitterのつぶやきと)違うというか。「これはみんな笑ってくれるだろうな」という話は、やっぱりRadiotalkですることが多いですね。

まぁ、言ってしまえば、話すネタなんて何でもいいんですけど、アタシがしゃべっていて楽しくて、かつリスナーさんも聴いていて楽しい場にはしなきゃな、という思いは常にありますね。なので、そういう話題を探すようにはしていますね。アタシのキャラクターに合うような話にしよう、と思っています。

──リスナーからのメッセージで、印象に残っているものはありますか?

ディム:「電車のなかで聴いていて吹き出しちゃいました」とか、そういうのがやっぱり嬉しかったですね。「この人に一瞬でも笑いを届けられたんだ」「この日、誰かの心に残ることができたんだ」って。

もっとも、0.001%のマニアックな人が送ってきている可能性もありますよ?(笑) でもアタシ、ホントに自信がないんですよ。だから、こうして声をかけてもらえるって、すごくありがたいです。

収録は屋外の「声出しスポット」で

──普段の収録環境を教えて下さい。

ディム:外付けのマイクなどは使わず、iPhoneの内蔵マイクだけでやっています。収録場所はもう、あらゆるところですね。自宅はもちろん、車の中とか。誰もいないオフィスで録ることもあります。

──1日のスキマ時間を収録に充てているという感じでしょうか。

ディム:基本的にそうですね。自宅は壁が薄いので、「抱いて〜!!」みたいなことを叫ぼうものなら、近所迷惑になって地域にいられなくなっちゃうので(笑)。外で収録することが多いですね。

──外は外で、「大声を出せるところ」はどうやって見つけるんですか?

ディム:さまよってますね。さまよって場所を見つけています(笑)。そうすると、声を出す人が集まる「声出しスポット」みたいなところに出会うんですよ。

──声出しスポット??

ディム:そういう場所があるんですよ。声を出したい人が集まってくる場所が。見つけて行くと“先客”がいた、みたいなこともあって。もうバチバチの場所の取り合いみたいなのがあるんです。

──具体的には、どんな場所ですか?

ディム:アタシの住んでいるところは田舎で、車移動が主なんですけど、メインの道路よりちょっと外れた、かつ電車の音とかも聴こえない、他のいろんな音が邪魔しないようなところがあるんです。そういう場所を探していると、なんか同じような人たちが集まっているスポットがあるんですよ。沢にホタルが集まるように……。

──例えが風流ですね(笑)

ディム:そんな感じで日々探していますね(笑)。「いい声出しスポットないかな」って。

トーク配信は究極の「自撮り」

──収録の際、苦労することはありますか?

ディム:外の「声出しスポット」で収録していると、周りのノイズを拾うことがあって。それこそ田舎なので、聴いたこともないような爆音で突然虫が鳴きだしたりするんです。

しゃべっているときに変な音が入るのが、すごい嫌なんですよね。そうするともう、録りなおしなんですよ。静かな場所を求めて一時間さまようこともあります。

──トーク以外の音声は入れない、というポリシーなのですね。

ディム:はい。アタシのしゃべりにノイズを乗せたくないんですよね。収録中に周りのノイズが入ってしまったら、カットできるときは編集機能でカットしますし、それでも消しきれなかったら、最初から全部録りなおします。

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ひどいときなんか、トークのたびに周りでカラスが鳴くもんだから、たった数分の音声を2時間くらいかけて録ったときなんかもありますよ。そうなると最後の方は、当初とまったく話の流れが変わっちゃって。それでお蔵入りになった「幻の配信」とかもありましたね。

──トークの完成度にすごくこだわっているわけですね。

ディム:編集面でも、変に間が空いているところがあったらカットすることが多いですね。妙な沈黙とか、「あー」とか「えー」といった言葉が多すぎるときは、ばっさりカットしちゃったりってことが多いです。

聴きやすいように配信しなきゃな、という思いがすごいあって。だから雑音もなるべく入れちゃいけないし、テンポよく話さなきゃいけないな、と気をつけながらやっていますね。

──トークを一種の「作品」として捉えているのですね。

ディム:そうですね。だから、編集の力で…… 編集といってもカットするだけですけど、加工しないと落ち着かなくて。「自撮り」と一緒ですね。だから、Radiotalkには、できればもっと加工したり、それこそメイクをかけるような機能とかがついてくれると嬉しいですね。

──エコー機能とか。

ディム:そう、まさに! 叫ぶ時はやっぱりエコーかけたいですよね。タイトルコールのときも要所要所でかけたいですよね。求める声は多いんじゃないかなと思います。これを機に実装してくれたら嬉しいですね!

Radiotalkの魅力は「しゃべりやすさ」

──数ある音声アプリのなかで、Radiotalkを選んだ決め手は?

ディム:リスナーさん、配信者さん含めて「いかに快適に配信して、聴いてもらうか」というところをすごく大事にしているな、と感じたんです。

例えば、「いいね」ボタンも連打できるじゃないですか。いわば「数」に左右されずに済むから、配信者側にとっても負担にならないんですよね。すごくいい落とし所だなと思って。音声付きのギフトとか、配信を盛り上げるための機能もすごく充実しているなと感じました。

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あとは、音声がすごくクリアですよね。アタシの単なる感覚かもしれないですが、スマホの内蔵マイクでも、まるでラジオのブースにいるかのようなキレイな音に聴こえるので、それがすごく魅力的です。

──配信者にとっても「しゃべりやすい」環境、と。

ディム:そうですね。コミュニティの雰囲気としても、みなさん暖かく迎えてくれるし、なにより距離感がいいんですよね。

あんまりこう、お互いががっつり干渉することってできないじゃないですか。YouTubeのコメント欄のように、配信に対してああだこうだ議論する場所が設けられていないのが、逆にいいなと思っています。配信者さんも一部の人の評価を気にしなくてもいいですし、内輪感が出ないようになっているのがいいですよね。

常連さんみたいな人のコメントで埋まっちゃったりとかして、そのコメントに対してやりとりをして……となると内輪感になっちゃって広がらないけれど、それがないことによって、どんどん新しい人を呼び込めますし。すごく配信者にとってはしゃべりやすい環境だと思います。

──ディムさんにとって、Radiotalkはどんな存在ですか?

ディム:言いたいことをきちんと言える場所だし、受け入れてくれる人がちゃんといる場所だなと思います。アタシのことをきちんとお気に入り登録して聴いてくれる、求めてくれていることを実感できる場所ですね。

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