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幼なじみの“尽きないおしゃべり”がラジオになるまでの話【いわさきさん・さいとーさんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『ホットドッグなはなし』を配信する、いわさきさんさいとーさんにフォーカスします。

現在都内で会社員として働くいわさきさん・さいとーさんは、小学校4年生からの幼なじみ。ふたりが繰り広げる何気なくもユニークな視点のトークは、軽快なテンポとユニークな言葉選びもあいまって、多くのファンを得ています。

「収録するたび、『あ〜楽しかった!』という気分で終わります」というふたり。終わりなき日常会話はいかにして「ラジオ」になっていったのでしょうか。その魅力を深掘りします。

(取材・文/天谷窓大

ふたりのなかで“いまアツい話”を共有したい

――さいとーさん、いわさきさん、ともにかなりのラジオ好きと聞きました。

さいとー:週に10番組くらい聴いていますね。『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に、『ハライチのターン!』『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)とか……。他にもNHK第一ラジオとか、ポッドキャストも。ちょっとずついろんなものを聴いています。

いわさき:私の場合、社会人になって一人暮らしをしていた時期があったんですが、そのときはテレビを買わずにラジオが情報源だったんですね。それでめっちゃラジオを聴くようになって。そんな話をさいとーさんにしたら、めっちゃ喜んでくれて(笑) 「なら、深夜ラジオに来なよ!」と誘われて、『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(TBSラジオ)をすすめてもらって。面白いな〜と思って、そこから深夜にもラジオを聴くようになりました。

――音声配信を始めたきっかけは、そうしたラジオ好きが関係していたのでしょうか。

さいとー:ラジオやメディアで裏方の仕事をしたいなってずっと思っていたんです。放送作家やディレクターに憧れて、就職活動でもラジオ局や制作会社を受けてみたんですけど、なかなか縁がなかったんです。

当時はまだ個人でラジオを発信するということがメジャーではなかったように思うんですが、コロナ禍に入ったあたりから、ラジオって誰でも始められるような媒体になってきた気がして。「制作の裏側を学ばせてくれるところがないのなら、自分でやって学ぼう」と思って、音声配信を始めてみました。

――二人での配信は、さいとーさんからいわさきさんに声をかけて……?

さいとー:わりと軽い気持ちでいわさきさんに声をかけてみたら、「全然やるよ!」みたいな感じで乗ってきてくれて、そのまま始めちゃいました。

いわさき:もともと自分の声を聞くということに抵抗がなくて。単純にふたりのおしゃべりを発信できるのって面白そうだなと思って、本当に軽いノリで「いいね!」って乗っかりました。

――「こんな番組にしたい」という構想はありましたか?

いわさき:「ふたりの間でホットな話」を発信していこうと決めていました。さいとーさんが昔から聴いていたラジオのように「普通に聴いてて面白いよね」と思える温度感というか。ふたりでラジオのイメージを持ち寄って、「そうそう! こういう感じがいいよね!」と思った感じでやりたいな、と。

さいとー:とはいえ私たちは芸人さんのようにしゃべりのプロじゃないから、そういう”面白い話“を届けることはできないし、AMやFMがやっているようなことを目指すのはちょっと違うなと。そことはまた違ったところで、私たちなりの視点で何か発信できたら、それはそれで面白いんじゃないかなと思ったんです。

「ホットドッグ」の「ホット」には、「ふたりのなかでいま熱量があること」という意味を込めていて。ふたりで面白いなって思うこととか、共有したいなっていうことを話していこう、という思いを込めました。

「おしゃべり」を「ラジオ」に変えたリスナーの存在

ーーいざ「第1回目」を発信したときは、どんな気持ちでしたか?

さいとー:それが、全然覚えていないんです。とにかく打ち合わせが楽しかったことだけは覚えているんですけども(笑)

いわさき:最初の一言をどうしようか、とか、いろいろ話し合ったのは覚えていますね。まず、自分たちの思っていることを12分のなかに入れ込むというのがなかなか大変で。ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら、何度も録りなおした気がします。

収録する時間帯の雰囲気にもすごく左右されるんですよ。深夜に録ったら深夜のテンションになるし(笑) 収録のときは「すごい面白い!」と思って、でもあとから聴きかえしてみたら「あれ、なんか思ったより普通だな……」と思ったり。なんども録りなおして、アプリのなかが下書きでいっぱいになって、気がついたら朝になってて(苦笑)

さいとー:でも、間違いなく収録のあいだは、ふたりとも「楽しい!!」っていう気分でいっぱいなんです。第1回目のことをそんなに覚えていないのも、なんだかんだで毎回「あ〜楽しかった!」と思いながらしゃべり終えて、それが積み重なってきたからなんだろうなと思います。

――いまやすっかり人気番組ですが、どんなきっかけでリスナーの存在を感じるようになりましたか?

いわさき:何がきっかけだったかは忘れてしまったんですけど、なんとなくライブ配信をしてみたんです。そのとき、5人くらいの方がリアルタイムで聴いてくれて、私たちの話したことにリアクションを返してくれて。

さいとー:そうそう! コメントもしてくれて。いまこのタイミングで発信しているものを聴いている人がいるんだっていうのを目の当たりにして、すごく嬉しかったのを覚えています。リスナーとのやりとりって、やっぱりラジオの醍醐味だなと思いました。

いわさき:Radiotalkのリスナーさんって、ライブ配信に入ってきたら「こんにちは」って気軽に話しかけてくれるじゃないですか。そのあいさつに私たちも「こんにちは」って返して。「聴いてくれて嬉しいです!」ってお礼を伝えて。本当にシンプルなやりとりだったんですけど、つながっている感じがして。

さいとー:実際にこの瞬間、私たちの発信した“おしゃべり”を一緒に聴いてくれている人がいるんだ! って。

いわさき:なんだかその瞬間から、リスナーさんが「顔見知り」に思えてきて。知ってる人がアプリのなかにいる! という気持ちになりました。

ありきたりの言葉ではしゃべりたくない

――普段はどんな環境で収録していますか?

いわさき:Radiotalkのコラボ収録機能を使っているんですが、それとは別にZOOMを立ち上げて、お互いの顔が見えるようにしています。

――「ふたりでおしゃべりする」という空気を大切にしているんですね。

いわさき:そうですね。ふたりで楽しくおしゃべりして、それをそのまま収録しているという感じで。

――収録にあたって、台本などは準備していますか?

さいとー:ラジオ作りを勉強したいなと思って始めたのですが、誰から教えてもらうわけでもなく、何から始めればよいのか本当にわからなくて。とりあえずラジオと言えば台本でしょ、と思って台本のようなものを用意していたんですが、いまはなんとなく「こういう話をしようか」というのを共有するくらいです。

いわさき:一応、ネタをストックするためのLINEグループを作って、話したいなと思ったことをお互いに書き込んでいっています。それ以外にも、「最近こういうことがあった」みたいな感じで、都合が合ったときにふたりで会って、そのときホットなテーマを話しています。

――話のストックには事欠かなそうですね!

いわさき:話したいことは何かしら常にある感じですね。気にすることといえば、それをいつ収録するかということくらい(笑)

――日々の配信で、こだわっているポイントはありますか?

さいとー:オープニングトークが最初にちょこっとあって、それからタイトルコール。そして、その日の本題という構成にしています。……それくらいかなぁ。あとは、ふたりで話して盛り上がりそうなことを題材にしようと決めているくらい。とにかくふたりで盛り上がれるようなことであれば何でも、という感じです。

――そういえば、講談や落語に興味を持っているという話をしていましたね。

さいとー:大河ドラマの『いだてん』がめちゃくちゃ好きで、3回も見たんですよ!

『いだてん』
東京オリンピックをテーマにしたNHKの大河ドラマ。ストーリー全体がビートたけし演じる五代目古今亭志ん生の落語という設定になっており、劇中にも落語の噺が重要なカギとして登場する。

いわさき:講談師の神田伯山さんのラジオ『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)が大好きで。パーソナリティの神田伯山さんがYouTubeを始めていて、ラジオきっかけで、そこにあがっている講談を見るようになりました。

――たしかに番組を聴いていると、おふたりのトークは言葉のリズムや言葉選びに深いこだわりのようなものを感じます。

いわさき:なるほど! たしかに言われてみればというか、そこは興味があるなぁと。「それっぽい言葉」でしゃべりたくないという気持ちがあるかもしれませんね。

さいとー:言葉遊びがすごい好きなんです。それに付随して、言葉選びにこだわりが生まれているのかもしれません。いわさきさんと同じく、ありきたりの言葉ではしゃべりたくないという思いがあるのかも。

仲良しだから、「見方の違い」すらも面白い

――朝と夜に対するイメージの話をしていた回も印象的です。朝が“来てしまうもの”だという話から、「はたして朝は悪役なのか?」という議論に発展する展開はとても新鮮でした。

いわさき:議論、というほどではないですけど、意見を交わす回もたまにありますね。そこは私たちも話していて面白いなと感じるポイントです。

さいとー:私が話をすると、いわさきさんは必ず乗っかってきてくれて、私と同じくらいに興味を持ってくれて。でも、お互いが持つ意見はわりと違うことが多くて、それがすごく楽しいですね。

私は結構、こう思ったらこう、というように自分のなかで1つの答えを決めてしまう感じなんですけど、いわさきさんは「でもそれって、考え方を変えてみたらこうじゃない?」って、新しい視点を与えてくれるんです。

――共感はしつつ、自分なりの切り口を見せてくれると。

さいとー:そうなんです。だからいわさきさんと面白く話せるのかな、と。「うんうん」と同意してほしいときもないわけではないですけど、あんまりそういうふうに終わらないことが結構楽しくて。

――意見が違っても、対立はしないんですね。

さいとー:喧嘩になっちゃうようなことはないですね。喧嘩になったら負けみたいな思いが自分のなかにあるから、いわさきさんに噛みつくっていうことはないです。

考えが違うっていうことは毎回のようにあるんですけど、それに対して「すごい嫌だな」と思ったことは一度もなくて。同じトーンでいられるっていうのは、たぶん幼なじみというのもあるかもしれないですね。もともと仲がいいふたりでやっているから。

いわさき:私も「いやいや……」ってイライラする感じはなくて。違っていても、とりあえず考えを受け止めるというのはあるかもしれないなと思いました。喧嘩腰になる感じじゃなくて。で、結果的に笑い声のほうが多ければ、成功かな、と。

スイッチひとつで、あの“おしゃべり”へ

――これまで配信を続けてきたなかで、これはという会心の回はありますか?

いわさき:特にこの回は会心だった、というのはないかも。毎回すごく満足して終わっちゃうから。あとから聴き直して「ここ、イマイチだったな」という回は結構ありますが……(苦笑)

さいとー:すべてが満足いく出来とはいかないまでも、私も毎回満足して録りおえている気はしています。「この話、盛り込みたかったなぁ」とか「相づち、もっとこうしたらよかったかな」という反省点が出てきたら、『ホットドッグなうらばなし』というサブアカウントでB面的に配信したりしていますね。

――ここまで配信を続けてこられた原動力は何だと思いますか?

いわさき:それはもう、ふたりでやっているから!

さいとー:ふたりでやっているのと、私自身やりたかったラジオ作りができていることですね。すべての工程がめちゃくちゃ楽しいんです。収録中もそうだし、なにより「私、ラジオ作れてる!」というのがものすごい楽しくて。ゆくゆく、誰かの物作りを手伝うときに、この蓄積が活きたら最高だなと思います。

いわさき:たまにふたりで雑談していても、「これ、ラジオにとっておけばよかったね」っていうことがよくあって。この話、残しておきたい、ラジオとしてとっておきたいなって。

――ふたりのアルバムみたいですね。

いわさき:アルバムって、めちゃめちゃいい表現ですね! 思い出の写真って、ずっととっておきたいですよね。それと一緒かもしれない。「どうしたら良い写真を撮れるか」って、すごく考えて、研究しちゃうし。

さいとー:ふだんフワフワ考えていることを形にできるのは、本当に魅力ですね。そのままだと飛んで行っちゃうような言葉や考えをとどめておける風船のような……。

いわさき:自分の思ったことを、その場の空気ごと言葉に残しておけるって、すごいなって思います。

さいとー:Creepy Nutsの『よふかしのうた』の歌詞の中では、ラジオを「土曜日の溜まり場」と表現していて。これもピッタリすぎて、とても大好きなんです!ラジオって一人で聴いていても、それを聴いている人みんなと同じ場所で過ごしているような感覚があるんです。

いわさき:自分たちの言葉を残しておけて、さらに反応をもらえる。

さいとー:いつでもスイッチひとつで、いままさに繰り広げられている“おしゃべり”や、あのとき楽しかった“おしゃべり”に行ける。Radiotalkって、そういうステキな空間だなって思います。

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