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「二人の世界」から「みんなの秘密基地」へ【TKさん(さがみ若竹センター)インタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『さがみ若竹センター』にフォーカスを当ててお届けします。

さがみ若竹センターは、TKさんはっしーさんによるヒップホップ(ラップ)ユニット。ともに神奈川県相模原市出身で、中学時代からの友人同士。現在も故郷の相模原市緑区で、それぞれ社会人生活を送っています。

さがみ若竹センターロゴ

2020年1月、Radiotalkを唯一の舞台として、音声での即興ラップ披露、ライブ活動を開始。ゆるいトーク企画や他トーカーとのコラボ楽曲など様々な挑戦を絡めながら認知を拡大し、今や「トークの日」1位も獲得する人気番組へと躍進しました。

なぜ、音声配信が主戦場なのか?ライブハウスなどでの生ライブ未経験のまま、人気ユニットとなった秘訣は?残業終わりのTKさんへ真夜中インタビューを強行し、異色のスタイルを貫く彼らの“内側”に迫ってみました。

(取材・文/鼻毛の森

「動画は恥ずかしいので」音声だけの発信を探した

ーーまず、ユニット名の由来から教えてください。

TK:僕ら二人の出身地である神奈川県相模原市緑区のイメージカラーが「若竹色」なんですよ。政令指定都市である相模原市の中で、人口が少ないのに土地が広い緑区で生まれ育った僕らが、「ラップの世界でセンターに立つんだ」との願いを込めて、ちょうど2020年の1月にユニットを結成しました。

ーーRadiotalkの配信をはじめたのもその頃ですよね。

TK:そうなんです。僕らはユニット結成と番組スタートが同時なんですよ。僕らは中学時代の同級生なんですが、1年生で同じクラスになって、毎日一緒に帰る間柄になりました。

2年生でクラスが分かれてからはそれぞれ別の友達ができて、20歳までほぼほぼご無沙汰な関係だったんですが、成人式の2次会で再開して、お互いの趣味となっていたラップの話で意気投合して。そこから再び仲良くなれたんです。

ーー成人式! でも、そこからユニット結成までは7年かかったのですね。

TK:はい。ラップ好きといっても、僕は“聞き専”だったので。一方、はっしーは自分で歌詞を書いてデモテープを作るタイプでした。成人式の数日後に自作CDを渡された時は、なかなか衝撃でしたね(笑)

もっとも、彼も別にプロを目指しているわけではなく、既存の音楽や著作権フリーのビートにオリジナルの歌詞を載せて、趣味として楽しんでいたんです。それに乗っかる形で、約7年にわたって二人で楽しんでいました。

ーープロを目指したり、ライブ活動をしようとは思わなかったのですか?

TK:二人とも社会人にもなって、会える時間も限られていたんですよね。はっしーは市の委託を受ける企業でごみ収集の仕事に就いていて、平日勤務。僕は携帯ショップの店員で夜も遅く、週末は基本出勤と、二人揃える時間がなかなかなかったんです。

ライブや発信をするとしたら動画配信なんだろうなと思ってはいたのですが、二人とも恥ずかしがり屋なので、音声だけの発信方法を探すようになって。そんななか、Radiotalkに出会ったのを機に、番組用に正式なユニットを組んだんです。

「楽曲公開のため」にRadiotalkを始めた

ーー数ある音声配信の中で、Radiotalkを選んだ理由は?

TK:僕らが始めた頃は、まだ収録配信の機能しかなかったんですよね。完成度の高い楽曲を公開することが目的だったので、逆にこっちのほうがいいんじゃないかとなって。でもその後ライブ配信の機能がスタートして、やがてそっちが主戦場になっていくのですが。

ーー番組がユニット名というのは、強いこだわりがありそうですね。

TK:ないです(笑)当時の僕ら二人にはラジオに対する造詣もなくて、そうしたセオリーが全然わからなかったんです。そのかわり「名前を覚えてほしい」「音楽を聴いてもらえたらいい」という思いが軸にあったので、別にタイトルを捻らなくてもいいんじゃないか、となりました。

ーーなるほど! 音楽への思いが前面にあったのですね。

TK:あと、ラッパーって、少し怖い印象がありませんか? 僕らはそういったイメージとはかけ離れた、どこにでもいる陽気な兄ちゃんなので「そういう人たちもいるんだよ」という発信もしたくて、ユニット名からゆるい感じにしました。

「誰でもいいから一人でも自分たちの曲を聴いてほしい」というスタンスだったので。打算もなく、ノウハウも気にしなかったですし、フリースタイルの考えは今も変わりません。

仕事終わりに暗闇の公園で… デートのような収録

ーー収録環境にはこだわりが?

TK:いえ、まったく。iPhoneのアプリを立ち上げて、備え付けのマイクに向かってしゃべって歌うだけです。編集もしたことありません。なんせ、僕らら二人、会える時間も環境も限られているので。

ーーコラボ機能は使わず、二人で集合して収録しているのですね。ちなみに「限られた環境」とは?

TK:相模川の近くにある、公園の駐車場です。日程と時間を臨機応変に合わせながら、仕事終わりに現地集合して、車の中で収録や配信を行います。真夜中なので、外灯も消えていて周辺は真っ暗、車の中で夜な夜なスマートフォンに向かって男二人が喋ったり歌ったり…… 特殊な光景ですよね(笑)

ライブ配信は毎週水曜か金曜に、と公言しているのですが、これは完全にお互いのスケジュールの都合で。残業があればずらすなど、前日に告知するスタイルです。

ーー収録トークとライブ配信はどう使い分けていますか?

TK:ライブ配信をするときは、オリジナル曲をライブ形式で披露しています。

収録に関しては1曲ごとに「楽曲」としてアップするスタイルで使い分けています。

ときどき、フリートークの回も設けていますね。

ーー編集をしない、とのことでしたが、BGMに乗せて歌っているものもあります。どのように収録しているのでしょうか。

TK:音系の素材は、著作権フリーのビート素材などをカーステレオから流して、それをバックに歌っています。音楽をやっていながら「ずいぶんアナログな方法だね~」とも言われるのですが、なかなかいい音で録れるので満足しています。

トークについては特に台本もなく、事前打ち合わせもしないのですが、そこは同級生ならではの息の合い方があるので。結果として、無編集でいける感じですね。

ライバルとの劇的な“和解”

ーー第1回目をアップした日のことは覚えていますか?

TK:ライブ活動もしたことなく、純粋に初めての発信だったので、公開ボタンを押したときは「世の中に出しちゃったよ」という高揚感がありましたね。勝手にくすぶってる時代が長かったので。動画配信よりもハードルが低かったのですが、それでも大きな一歩。これからの展開によっては「黒歴史になるぞ」とも思いました。

ーーここまでの2年間で、大きな変化はありましたか?

TK:僕らのスタンス自体は何も変わってないつもりなのですが、取り巻く環境は変わりましたね。

まず、配信を始めてまもなく、番組用のTwitterを立ち上げたんですよ(※)。当時は「とにかく聞いてもらいたい」が強かったので、フォローしてくれた人ひとりひとりにDMを送って、挨拶もしていました。その効果があったのか、再生回数が着実に伸びてきて、作戦って大事だなと。

(※ @sagamiwakatakec 現在はTKさんの個人アカウントとして運用)

ーーコラボ企画なども、環境変化のきっかけに?

TK:2回目の山場はそれですね。「他のトーカーさんの名前を使ってラップをしようよ」というノリで始めた『Radiotalk見聞録』という企画は大反響でした。

企画は2020年8月に収録で始めたのですが、そこから1ヶ月たたないうちにRadiotalkでライブ配信が可能になって、ライブへと移行しました。もともと「収録だけど生」というコンセプト企画だったので、まるであらかじめ決まっていたかのように、キレイにシフトできました。

ーーその直後の「トークの日(※)」で一気に名を上げた印象があります。

(※トークの日:デイリースコア1位を獲得したラジオトーカーに「ライブ配信専用ギフトのプロデュース権」をプレゼントする企画。2020年10月9日に第1回が開催され、2021年1月からは毎月19日に開催)

TK:実は当初、トークの日の存在を知らなかったんですよ。第1回が開催された2020年の秋口はiPhoneの新モデルが発売された時期で、携帯ショップ店員の僕は繁忙期のど真ん中で…‥。

ーーてんわやんやの時期ですね……

TK:はい……。多忙すぎてそうした情報もチェックできていなかったのですが、他のトーカーさんに教えてもらって、挑戦することができました。

ーー手応えはいかがでしたか?

TK:1回の配信で2万スコアを達成しました。手ごたえとしては十分だったんですが、惜しくも2位だったのが悔しかったですね。ちなみにそのときの1位は、三拍子の高倉さんでした。

ーー高倉さんとは、その後交流が生まれましたね。

TK:はい。でも始まりはあんまり良くなくて……。悔し紛れに高倉さんの考案した「『変態』ギフト」をイジる配信をしてしまったのがきっかけだったんです。

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ーーふっかけちゃったのですね。

TK:はい。その後、お喋りピエロさんが仲介に入ってくれたことで「失礼」に気付いて。

その後、ご本人に謝罪のDMをしたんです。そしたら、とにかく優しい人で……。その後、コラボに繋がりました。

ーー転じてめちゃめちゃいい話!

TK:2位は悔しかったのですが、負けた相手が高倉さんでよかったです。いい出会いに恵まれました。

コラボして、お互いのファンに受け入れてもらう

ーー「こいつを聴け!オススメのラジオトーカー」企画は秀逸でした。

TK:プチどっきり企画ですよね(笑)。トーカーさんって変わった名前の人が多いので、架空のトーカーについてフリートークしたら、リスナーのみんなが一度は検索するんじゃないかと思って、ノリで始めました。同級生のノリというか、みんなでじゃれるような場も作りたかったんですよね。

ーー一方、『Radiotalk見聞録』でのコラボ楽曲制作では、トーカーさんとがっつり向き合っていますよね。

TK:そのトーカーさんのファンや、トーカー仲間が聞いてくれるものですからね。お互いのステージを上げるための企画なので、それぞれの「村」にお互い受け入れてもらってWin-Winになれるよう、真剣に取り組みました。

ーーなぜコラボ楽曲を作ろうと思ったのですか?

TK:自分たちのオリジナルに固執すると、視野が狭くなって、更新間隔も空いてしまうことに気づいて……。結構早い段階で壁にぶつかっていたんです。

二人だけじゃなく、違うエッセンスを入れ込んだら、僕らも楽しめるんじゃないかと。このままだと、僕らのスタンスである「楽しむ」ができなくなっていたでしょうし、新しいステージに踏み出すには、“第三者”のエッセンスは不可欠だったと思います。

ーーコラボ相手はどのように選びましたか?

TK:「音楽をやっている」人と、「音楽は好きだけど、ラップはやっていない」「ラップは好きだけど、プレイヤーとしては未経験」という人を選んで、巻き込んでいきました。

ーー楽曲制作はどのようなスタイルで行っていますか?

TK:トラックはYouTubeに公開されたフリー素材のベース音源を使って、歌詞はお互いに持ち寄るのを基本としています。

まずは楽曲全体のテーマを決めてから、僕らで歌詞の中にコラボ相手の名前やゆかりのあるワードを入れ込む作業をします。その部分については相手にヒアリングなどはせず、逆に相手が作ってきた歌詞に口出しはしないというのがマイルールです。

ーー相手のパートはおまかせ…… それはそれでハードルが高そうですね。

TK:僕らの方から先に歌詞を「こんな感じでできました」とお送りして、ヒントにしてもらうようにしています。「そこからは自由に広げてね!」ということで。コラボ相手の方の歌詞は僕らにはないエッセンスなので、なんなら「完璧です!」と、無条件に褒め称えます。

結果、コラボ相手のファンも僕らに興味持ってくれたり、リスペクトの声をもらえるようになりました。やってよかったし、これからも続けたい企画になりましたね。

配信からリアルイベントへと発展

ーーこれまでの配信で、印象に残っている出来事はありますか?

TK:たくさんあるんですけど、お時間いいですか?(笑)

まずは2020年11月13日にサンミュージックを訪れて、高倉さんとライブ配信で絡めたときです。芸能人と一般人には壁があると思っていたので、「これ、前例がないんじゃないか!?」という高揚感がすごかったです。

そして、その年末にやったライブ配信「虹フェス」ですね。現場はいつもの公園の駐車場だったのですが、声だけで一年を締めくくり、仲間といい新年を迎える──。なんとも温かい空気感で、やってよかったなと。

あと、2021年2月の「トークの日」で5万スコアを獲得し、念願の1位になれたこと。その次の週に、おしゃべりピエロさんと高倉さんと僕らでRadiotalkの本社から配信できたのは、経緯も経緯なので、胸アツでした。

そして直近は2021年9月、高倉さん主催の音楽イベント『脳RYO祭2021』に出させてもらって、はじめてのリアルライブイベントができたことです。

初のリアルライブが芸能人主催のイベントなんて、最高のデビューですよね!

オンラインの秘密基地から、オフラインのライブを実現したい

ーーRadiotalkで配信を続けてきて、自分のなかで変化したと思うことはありますか?

TK:視野ですね。20代前半は、二人だけの価値観でかっこよさを求めていました。とはいえ、発信はしないわけだから、自己満足止まりですよね。Radiotalkというツールを手にすることで、「一緒に楽しみたい」「歌詞を聞かせたい」と思う対象が「目の前の相方」から「トーカーのみんな」へと広がっていきました。

ーーTKさんにとって、リスナーやトーカー仲間の人々はどんな存在ですか?

TK:先輩、後輩といったところでしょうか。ためになることをたくさん教えてくれる先輩がいて、年の近い後輩とはノリで分かり合える──。共通するのは「リアルでも遊んでくれること」で、今となっては相方と並ぶぐらい、親しく、大切な存在になってます。

ーーお二人にとって、Radiotalkはどんな場所ですか?

TK:日常の「よそ行き」から解放されて、オフの顔ではっちゃけられる「秘密基地」ですね。誰にも渡したくない、仲間同士でしか集まらない大切な場所。いつかトーカーさんをリアルに集めて、”オフラインのフェス”をやるのが夢です。

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