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40歳、ごっこ遊びを極めて青春を取り戻す。【お喋りピエロさんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『泥沼アワー』を配信するお喋りピエロさんにフォーカスします。

お喋りピエロさんは、関東地方で営業職として働く40歳の男性。古くからの友人・お喋りパンダさんをはじめとする4人組でとりとめのない雑談を繰り広げる『泥沼アワー』を中心に、Radiotalkで活躍する多彩なトーカーとのコラボ形式で配信する『バーガーピエロ』など、さまざまな番組ブランドを用いて多角的な配信で人気を博しています。

4人

「コラボ」という形でトーカーやリスナーをどんどん巻き込みながら、まるで終わらない放課後のような“お祭り感”あふれる配信企画でRadiotalkを盛り上げる立役者である、お喋りピエロさん。その背景を掘り下げて見えてきたのは、これまでの人生に隠された喪失と復活のドラマでした。

(取材/文:天谷窓大

「面白そうな雑談がたまたま耳に入る」というコンセプト

──「泥沼アワー」は、どのような経緯から始まったのですか?

お喋りピエロ:高校の同級生であったお喋りパンダと「いつも喫茶店でしている無駄話を電波に乗せたらハマる人にはハマるのでは?」という雑談をしたのがキッカケでした。時を同じくして、本業の仕事で音声配信に関する資料を見てRadiotalkを知り、そのまま配信をスタートさせました。本当に偶然の連続から生まれた番組だったんです。

──いろいろと運命を感じるエピソードですね。

お喋りピエロ:40歳のおっさんのプライベートの話なんて聞きたいか? という葛藤はあったのですが……。歳を食っているぶん、これまでの体験というネタはそこそこあったので、「これどう思う?」というような感じで、幸い話すことには困りませんでした。

──「放課後の無駄話」というコンセプトがまた素敵です。

お喋りピエロ:学生の頃って、土曜日に午前中で授業が終わったあととか、部活が始まるまでの時間にお弁当を食べながら過ごす時間って、ありましたよね。あの「割と長い空き時間」に、友達ととりとめもない話でおしゃべりをするのが大好きだったんです。

話が盛り上がると、他の部活の友達がちょっとのぞきに来たりして(笑)。“あの時間”をずっとやってみたいな、と思ったんです。

──ときおり、通りがかった人が聞き耳を立ててしまうような……

お喋りピエロ:そうそう! まさにそういう感じです。

僕とパンダが2人とも気に入っている美味いコーヒー屋さんがあって、よくお茶をするんですが、そこでくっちゃべっていると、ときおり隣の人がクスッと笑う声が聞こえるんです。これがなんともいえない快感で(笑)。

漏れ聞こえる声だから、内容を全部聞いているわけではないと思うんですが、「面白そうな会話をしているな」と聞き耳を立ててくれているのがわかるんですよね。

──「たまたま聞いたら面白かった」というのがミソなんですね。

お喋りピエロ:はい、まさに。「喫茶店でたまたま隣り合った席のやつらの会話が妙に気になって、なんだかんだ最後まで聞いちゃった」という感覚でリスナーさんに楽しんで欲しいんです。

だから、話の内容も、意味ある“情報”じゃなくて、徹底的に非生産的な話をしようと。リアルな喫茶店では「たまたま聞いてくれる」人は一人や二人程度だろうけど、ネットの世界ならばそれが1000人、2000人いるわけで。そうしたら、そのうちの誰かには引っかかるんじゃないか、という思いが番組の根底にはあります。

強力な「後方支援」「参謀」の加入で番組が一気に進化

──その後、やご店長、レッサーさんと新メンバーが加入しましたが、配信を通して新たな仲間が加わったグループというのは、Radiotalkでも話題になりましたね。

お喋りピエロ:配信をスタートした当初、もっと注目を集めたいなと思って、Twitterでトークネタを募集する企画を実施したんです。「#ピエロの挑戦状」というハッシュタグをつけて、「人へ感謝していること」というお題でトークを募集し、面白かったトークに賞金を総額で1万円くらいを出すというものだったのですが、そこに面白いトークを送ってきてくれたのがレッサーだったんです。

そこから交流が始まって「一緒になにかやりたいね」と話していたのですが、そんな矢先、彼から「個人でやっていた番組が諸事情で続けられなくなったので、引退しようかと思う」という連絡をもらって。

彼のトークが本当に好きだったので、そのまま辞めるのはあまりに惜しいと思って。「だったら、一緒にやらないか」ということで、自分たちのユニットに入ってもらうことにしたんです。もともと人気のあったトーカーだったので、加入そのものも話題になりましたね。

やご店長なのですが、出会ったのはレッサーのよりちょっと後なのですけど、先に泥沼アワーに加入してくれたのは彼女の方でした。

「#ピエロの挑戦状」以降、少しづつ番組を聴いていただける方は増えて来ましたが、でもまだ手応えはあまりなくて。その時羨ましいなと思っていたのが、まず最初は「自分たちの配信を楽しみに聴いてくれる人」でした。当たり前ですけど、リスナーがさんがいないと配信はできないので(笑)。

もう一つ、自分たちの配信の看板になるような「イラスト」を僕たち持ってなくて。2人とも絵心が致命的にないんですよ(笑)。そんな時に出会ったのが、コラボに誘われて顔を出した他の配信サイトのリスナーだったやご店長だったんです。

彼女は僕らの番組を聞くためにRadiotalkをインストールして、さらにDMで僕とパンダのイラストを送ってくれてました。泥沼アワー最初のサムネです笑これがとても嬉しくて、このときもらったイラストは今も僕の部屋に飾ってあります。

やごちゃんは、僕らが喉から手が出るほど欲しかった「リスナー」と「看板」という2つを満たしてくれた、泥沼アワー最大の恩人であり、戦友です。

──2人の加入によって、どんな点が変わりましたか?

お喋りピエロ:まずレッサーは僕たちよりも前からRadiotalkで配信していたこともあり、「トークをどの時間に投稿したら聞いてもらいやすいか」というタイミングや、内容に関するノウハウを豊富に持っていて。彼の引き出しを取り入れて、番組内容もよりバラエティ色豊かなものへと進化しました。

レッサーを参謀とするなら、やごちゃんは援護射撃のスペシャリストでしょうか?泥沼アワーのライブもコメントやスコア両方で応援してくれて。「僕とパンダ、レッサーが喋って、やごちゃんがコメント欄を盛り上げる」という形が出来てから、それまでは考えられないようなペースでリスナーさんが増えていきました。
 
泥沼アワーの大きな転換期となった、三拍子の高倉陵さん、盟友「さがみ若竹センター」とコラボイベントを行ったときも、レッサーが色々イベントのアイデアを出してくれて、やごちゃんがライブのサムネや、イベント告知用のフライヤーを作ってくれました。

僕とパンダだけでは絶対に行けないところまで泥沼アワーを連れて行ってくれた2人には、本当に感謝しています。

──泥沼アワーといえば、「ソイヤ」ギフトを生み出したグループでもありますよね。いまやさまざまな番組で使われているだけでなく、リスナーさんがコール&レスポンスとして「ソイヤ」を連投して、サーバーがパンク寸前まで行ったこともありました。

ソイヤ

※「ソイヤ!」ギフト。贈ると掛け声が鳴る

あれこそ、4人で作った一番の思い出かもしれません(笑)。

「秋の棒祭り」という割と初期の運営さん企画で優勝した特典として「ギフト作成権」をいただいて作った「ソイヤ!」ギフトですが、あれはメンバー4人で知恵を出し合いながら作ったんです。

当時は比較的高価なボイスギフトが多かった中で、「比較的安価で連投ができ、かつハッキリと印象に残る声を出せるギフトがあったらライブが盛り上がるんじゃないか」というアイデアをみんなで形にしました。

「スタジオ」を借り、本格機材で収録

──普段の収録はどんな感じで行っていますか?

お喋りピエロ:基本的に毎回の収録は、パンダとレッサーのもとへそれぞれ僕が会いに行って録るという形式でやっています。

お喋りパンダさんとは最初、僕の車の中で録っていたんですよ。でも、夏は暑いし冬は寒くって(苦笑)。なので、エアコンをつけながら録っていたのですが、そうするとノイズが入るという……。

夏場なんかはあらかじめ冷房をガンガンかけておいて、「じゃあこれで喋ろう」というタイミングでエンジンを切って。暑くなったり寒くなる前に、さっさとトークを録っちゃおう、みたいな感じで。だから最初のころは、結構粗製乱造気味というか、勢いまかせなところがありましたね。

そのうち「車のなかで喋っているのも限界があるだろう」ということで、現在はレンタルスペースをスタジオ代わりに借りて、そこで収録するようになりました。

──収録に使っている機材は?

お喋りピエロ:マイクは、BlueというメーカーのYetiというモデルを使っています。Radiotalkで『すてきな3人組』を配信している中村さんに「ポッドキャスティング用のポピュラーなマイクがあるぞ」と教えてもらいました。

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ミキサーは、ヤマハのAG06。これをタブレットに接続して使用しています。あと並行して録音用のノートパソコンを繋いで、その音源をライブ配信のほかにアーカイブとして残しています。

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──収録ペースはどれぐらいの頻度ですか?

お喋りピエロ:収録ペースは、月に1回ほどですね。時間をとってまとめて収録して。最近はちょっとライブイベントのほうが忙しくて収録トークのほうをなかなか出せてないんですが、まだストックはあるので大丈夫です(笑)。

おかげさまで、「楽しみだから、ストック分を早く出してくれ」という声もいただくようになりました。本当にありがたいことです。

湧き出た「オモシロのかたまり」を12分に“濃縮パック”

──収録トークとライブ配信はどう使い分けていますか?

お喋りピエロ:収録トークは残るものですから、「何をしゃべってもいいけど、誰かを傷つけるような笑いの取り方をするのはやめよう」ということは大切にしています。そのかわり、メンバー同士では思いっきりイジりあう。それがエンタメになればいいよね、という感じでやっていますね。

収録トークは少し倫理観を高めに設定して、「自分たちで考えた面白い話を具現化するところ」という立ち位置にしています。一方、ライブでは「思ったことをしゃべって、友達とふざけ倒す」ことに重きをおいています。

──トークは「作り込み」の美しさ、ライブはどう転がるかわからない「ハプニング性」を大切にしているのですね。

お喋りピエロ:そうですね。もっとも、ライブでも5回に3回は失敗しますけど(苦笑)。

収録トークの場合は、事前に喫茶店で1〜2時間しゃべって、「こんな感じで行こうか」と簡単なネタあわせをします。

もっとも、パンダはそういう打ち合わせすら不要だ、と言うんです。スッと出てきた言葉を大事にしたいと。あらかじめ考えたことを言うのは嫌だっていうんですね。アーティスト志向というか。結構三振はするんですけど、ここぞって時にホームラン級の面白いフレーズを出してくるんですよ。

──笑いの神様を降臨させるのが、パンダさんの役割と。

お喋りピエロ:彼の面白い言葉って、型にはまった環境では出てこないんですよ。予想外の話のときに、ポロッと出てくるものなんです。

だいたい1回の収録で6本ぐらい取るんですけれども、僕はある程度「この話題をやればこういう風に話題が転がるよね」という計算ができる題材を持っていくんです。一方、彼は「黒ひげ危機一髪を全力でやる」みたいな、そういうアホらしい話を持ってくる(笑)。

一見、ネタとして使えるの? と思っちゃうような何気ない話なんですが、彼はそこから笑いを作り出すんです。なので、いろんなかたちで彼の面白いところが出やすくなる環境を、いまは積極的に整えていますね。

──偶然を生み出すパンダさんに対して、論理派のレッサーさんという組み合わせも面白いですね。

お喋りピエロ:レッサーの場合、すでに構成が頭の中に入っていて、導入からオチまで全部頭の中でコントロールしていくんです。明確な台本はないけれど、ある程度狙いをつけて、勢いのあるトークの流れを作り出してくれる。「こういう話がしたい」といったん彼が決めると、着地点までしっかり持ってきてくれるんです。

こう書くといかにも理論派っぽい気がしますが、「毎回面白くするなんて絶対できないから、とりあえず俺たちが面白いと思うしゃべりをしようぜ」というスタンスは全員共通していますね。ラジオをやるというよりかは、自分たちの中で面白いと思っていることををそのまんま出してみて、それをパッケージしてみるという感じです。

──『水曜どうでしょう』のような、ドキュメンタリー感のある笑いというか。

お喋りピエロ:はい、まさに! あんな感じができたらいいなと思っているんですよね。

会話のなかの「ボヤき」って、結構見てて好きなんですよね。あの番組で大泉洋さんは、何かにつけて「そりゃぁ、君たち(視聴者)はいいよ」って言うんですよ。「視聴者にとっては30分面白いことばかり起きているように見えるだろうけど、僕らは何時間もカメラを回していて、実際に世に出るのはたったこれだけの時間なんだ」って。

オモシロを瞬発的に狙って生み出すのってすごく難しいですけど、「オモシロの空気」が漂っている空間にずっとマイクを置いていると、どこかしらで必ず「オモシロのかたまり」がボコッと湧きあがる瞬間があるんです。そこを丁寧に編集で煮詰めていくと、濃厚なオモシロになる。それを12分というトークにパッケージするというのが、僕らの作り方ですね。まだ全然できてないですけど…‥(笑)

「最初の2〜3分で決まる」営業の仕事で学んだトーク術

──ピエロさんたちの番組は、冒頭の挨拶なしにいきなり本題から始まるものが多い印象があります。これは何かこだわりの部分だったりするのでしょうか。

お喋りピエロ:あれは…… 僕たちにラジオの知識がなかったゆえの産物でして。ただ、それが結果的には良かったのかなとも思っています。

12分というトークの収録制限のなかで、僕らしょせん素人が無理やりラジオのセオリーに沿ってオープニングトークしてみても、結局「2〜3分の冗長な会話」になっちゃうんですよね。だったら、いきなり本題に入ってしまおうと。

パンダは伊集院光さんのラジオがすごい好きなんですが、伊集院さんって、深夜の番組ではタイトルコールより前にいきなり本題を切り出しますよね。そうした部分も影響を受けているのかもしれません。

僕が普段している営業の仕事では、「最初の2〜3分でだいたいの商売の流れが決まる」というセオリーがあって。最初はバッと本題を話しちゃって、相手を引き込むんです。それで入ってくれない人たちは、どのみち乗ってくれないだろうという経験則があって。

なんやかんや僕らはイロモノですから、乗ってきてくれた人たちを集中的に拾っていこうと割り切っているところもありますね。

──冒頭から強烈なインパクト、というと、オリジナルの番組CMは力作でしたね。

お喋りピエロ:以前Radiotalkで、あるトーカーさんが、色々な番組のCMを募集してまとめてライブ配信で流す「全力コマーシャル」という企画をやっていて。お声がけいただいて、そこにCMを出したんです。CMの内容は「これまでしゃべった内容のダイジェスト」という体なのですが、実はすべてそれっぽい内容を、新規で録り下ろしたんです。

──わざわざどうして?!

お喋りピエロ:ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』という映画がありましたよね。

いろんな解釈を呼んだ映画ですが、「実はストーリーそのものが、ジョーカーの妄想、作り話だった」という解釈があって。いままでやってきた「泥沼アワー」って、実はみんなの妄想でした、というようなオチを点けられたらおもしろいよね、という話が挙がったんです。ほら、僕一応ピエロだし(笑)。

──斜め上過ぎる発想ですね……。

お喋りピエロ:とはいえ、それがわかって面白いのは自分たちだけなんですけどね(笑)。

リスナーさんは真に受けて「こんな配信あったかな」と思って探すんだけど、そんな回どこにもないぞ、と。「これってもしかして、すべて妄想オチという『ジョーカー』のパロディなんじゃないか」と気づく人がひとりでもいたら面白いな、という遊び心でした。

「仕掛け人集団」への脱皮

──複数のブランドを組んでコンセプトの異なる番組を展開する、というスタイルが非常に印象的です。どのような経緯からこのような展開を思いついたのでしょうか。

お喋りピエロ:雑談というコンセプトで番組を続けてきたまではよかったのですが、長くやっていると、他の番組との差別化が難しくなってきて。一度原点に立ち返って、考え直してみたんです。

ラジオを何で聞きたいか、と考えたとき、「何らかの分野で活躍してる人がパーソナリティを担当しているからじゃないか」と思ったんです。リスナーさんは、「その人の裏側を見たい」からラジオ聞いてくれるんじゃないかと。

そこで考えたのが、「肩書を持ちたい」ということだったんです。自分たちは「毎月Radiotalkでイベントをやるグループの仕掛け人集団」という肩書を名乗ろうと。そこから、『バーガーピエロ』というユニット名を掲げて配信する形に変えました。

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──番組ごと、ユニットごとにキャラの使い分けはありますか?

お喋りピエロ:『バーガーピエロ』に出るときの僕は、いろんなお客さんをお迎えするホストの立場ということで、若干押さえ気味にしています。司会としてきれいに回せればいいなという感じで。

パンダといっしょにやるライブは月1くらいなんですが、そのときは精神年齢を極限まで下げてバカ話をします。どうやらこちらの方が、聞いてるリスナーさんとしては楽しんでいただいているみたいで(笑)。

どちらも自分の本音ではあるんですけれども、自分が繋ぎ役になって面白いフックを作りたいという気もありますし。その反動といいますか、『泥沼アワー』でパンダと配信するときは、僕自身が思いっきりふざけています。

──『バーガーピエロ』では、Radiotalkで人気のトーカーを招いてのイベント配信を積極的に行っていますね。

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お喋りピエロ:やっぱりラジオって言ったら、ゲストですよね。みんなが話を聞きたい人をスタジオに呼んでしゃべるというのは醍醐味だなと思っていて、これをやりたいなと思ったんです。

僕らが行っている配信は、いわば「壮大なごっこ遊び」でもあるんですが、その一環として、本格的なラジオごっこをしてみようと。

これまで僕たちがやってきた『泥沼アワー』はただ無駄話を垂れ流していればいいというスタンスだったんですが、いろんな面白いリスナーさんと出会ったり、昨年末の紅白トーク合戦に参加させていただいたときには中トロ議長さんのように、実際にラジオDJをされているのような方が間近でお手本を見せてくださる機会にも恵まれたので、「自分たちもラジオを作ってみたいな」と。

いろんな人と力を合わせて、自分たちだけでは作れない本格的なごっこ遊びをより突き詰めていきたいという思いがありまして。せっかくならば、「泥沼アワーではやってこなかったこと」に取り組もうと思って立ち上げたのが『バーガーピエロ』です。

本当は、よく聞いてくださっているリスナーさんもお招きしたいんですけどね。いまはまだコロナ禍が落ち着いていませんが(※2021年10月中旬)、いずれはリスナーさんとの交流を持つ場にもしていきたいですね。

大人の「ごっこ遊び」を極める

──「ごっこ遊び」という言葉の割には、相当なコストや手間がかかっていますよね。このモチベーションは、どこから湧いてくるのでしょうか。

お喋りピエロ:まず目的があって、手段があるじゃないですか。普通の人って。たとえば僕が普段している営業の仕事であったら、この数字を達成するために、こういう作戦で行こうというものがあって。

ごっこ遊びって、この作戦立てが面白かったりするじゃないですか。そのものよりも、その企みや準備が楽しいというか。作る過程そのものを楽しみたいから、あえて手のかかることをやってみようと思ったんです。

──たしかに学生時代の文化祭も、その準備の日々が楽しかった思い出があります。

お喋りピエロ:高校も大学も、学園祭の実行委員だったんですよ。やっぱりあの「作る楽しさ」が忘れられなくて。ごっこ遊びをしながらフラフラとゆるい感じでやっていこうと思ったんですけど、「こんなことを遊びでできるよね」と試してみたくなることが多くて。

先程挙げた『ジョーカー』をモチーフにしたCMのように、「こういうの作ったら面白いんじゃないか」と思いつく瞬間がたまらなくときめいて。さらにそれを具現化することに、すごく楽しさを感じたんです。

いいもの作れたな、と言い合う体験を味わいたかった

──話を伺っていると、もともとクリエイティブな人生を歩んでこられたように思います。昔から、そういったものづくりには関心が高かったのでしょうか。

お喋りピエロ:いえ、それがまったく。小さいときに何か夢あったかというと、なかったんですよ。父親が割と大きな会社でバリバリ働いていたのを見ていたので、なんとなく自分もサラリーマンになるんだろうなと漠然と思っていました。夢のない子どもで(笑)。

──いまの活躍ぶりからは想像がつきません。

お喋りピエロ:夢がなかったというのは言い過ぎかもしれません。本当は持っていたんです、夢。ウルトラマンを作る人になりたかったんです。特撮映画を作る人になりたかった。

でも、それをある日母に打ち明けたら、「大丈夫なの?」と心配されて。この時に「いや、僕はこの道が良いんだ!」とか言えたら格好良いのですが、割とあっさり「そうかな?」って……(笑)。今思えば、「好きなことを真剣にやる」という覚悟や熱意が足りなかったな、なんて思います。

それ以来、こうしたクリエイターの職業は別の世界というか、自分がなることはないんだろうなと思っていたんですが、ある日『ウルトラマンを作った男たち』というドラマを見て衝撃を受けたんです。

──『ウルトラマンシリーズ』を手掛けた実相寺昭雄監督の自伝を原作としたドラマですね。

お喋りピエロ:実相寺監督に相当する「吉良」という主人公はTBSでドラマを手掛けていたのですが、真夏のシーンで雪を降らせたり、大物歌手の顔を毛穴が映るほどにズームアップしたりと前衛的過ぎる演出で現場を追い出されてしまうんです。それで円谷プロへ左遷に近い形で出向することになるんですが、ドラマの現場では否定されてきた「こだわり」がいい方向に働いて、『ウルトラマン』という名作として結実するという話なんです。

こだわりを持って自分の作りたいものを作るって、こんなに素晴らしいことなんだと。自分が「これなんだ」と思った信念で物を作って、それによって自己実現をしていくって、最高だなと思って。僕もまさに、こういった生き方に憧れて「ウルトラマンを作る人になりたい」と思っていたんだな、と思い出したんです。

いま『バーガーピエロ』をやっているときも、まさにこの感じに近くて。
自分の仕事はいわば監督。みなさんに動いてもらって、ストーリーを一緒になってつむいでいく。いまはご時世的に難しくなりましたが、終わった後にみんなでご飯を食べにいって、「いいもの作れたな」って言い合う。そういう体験を味わいたかったんだ、と。

『泥沼アワー』のスタートから1年半かかりましたが、やっと、自分がRadiotalkをやりたい理由にたどり着けた気がしたんです。

──既存のレール、概念を外れるという面白さを、Radiotalkで取り戻したのですね。

お喋りピエロ:40手前になって、社内でも管理職という肩書きをもらったりしまして。知らず知らずに守りに入っている自分に気づいたんです。

例えばの話ですが、大きなお得意先相手に、年何億っていう売上を立てる規模の商売って、立場上一か八かをやって失敗とかできないじゃないですか。営業の仕事も、数字を減らすかもしれないようなチャレンジはなかなか踏み切れない。

一定以上の成功を続けるために手堅い戦略を求められる場面が今までの人生経験やコネクションのなかでもたびたびありましたが、そういう「数字を作っていく」のって、正直に言えば、面白くはないんですよね(笑)。個々の場面で充実感はあるのですが。

でも、Radiotalkって、歳も関係ないし、どんなことだって試すことができる。やりたいことに正直で、それを楽しめる人っていうのがみんなに応援される場じゃないですか。

営業の仕事は気持ちの面よりもお互いの合理面が優先されるんだけど、ラジオは逆にそういう予定調和が効かない世界じゃないですか。これまでさまざまなしがらみのなかで必死に「予定調和」を作ってきた人間としては、それがとても新鮮で、救われたんです。

──40歳にして、ふたたびの青春を。

お喋りピエロ:大人の部活みたいな感じですね。もっと、大人も青春したらいいんじゃないかと思うんですよ(笑)。

いいおっさんになっても自分たちが本当にしたいことで盛り上がる、『泥沼アワー』もそういう感じにしたいと思ったんです。

だからいま、やりたいことだらけです。ひとつでも面白いことを実現したくて、世間のものから「こういう感じのことをやってみたい」ということを意識的に吸収することが増えましたね。『バーガーピエロ』も、いわば僕にとって「やりたいことの“ごった煮”」といえるかもしれません。

好きなことを極めると、大切な人が増えていく

──ピエロさんの熱意が磁場となって、魅力的なトーカーさんが集まってきているように思います。

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お喋りピエロ:本当に嬉しいですね。自分の思いが届いているのか、「コラボしてほしい」「会ってほしい」という声を最近よくいただくようになりました。

先日も、ねこぜさんというRadiotalk公式トーカーさんの誕生日配信のときに「ぜひピエロさんと話したいので、来てもらえませんか」と言ってもらって。お互い面白い時間作るにはどうすればいいみたいな話をする時間が、本当に楽しかったですね。

──『バーガーピエロ』では、人気トーカーの芥川さんと「48時間コラボ配信」に挑戦していましたね。

お喋りピエロ:Radiotalkの企画告知バナーにお互いのロゴを出して、コラボ配信しましたね。僕が芥川さんの番組に出るのはかなり限られた時間の予定だったんですが、生放送にトラブルはつきもので(笑)。お互いの番組に助っ人し合って、結局配信時間の間はほとんど一緒にいましたね(笑)。

こういった縁もあって、芥川さんにはバーガーピエロのレギュラーというか、基本メンバーになってもらっています。もう1人、芥川さんと同じくバーガーピエロの第一回から力を貸してくださっているマツリさんもレギュラーに迎え、僕・芥川さん・マツリさんを基本メンバーに、毎回さまざまなメンバーを迎える方式をとっています。

──番組を軸に人間関係がどんどん年輪のように広がっていくのですね。

お喋りピエロ:僕が「面白いなぁ」と思った人たちと、どんどん「内輪関係」になっていくのが楽しくて。

ノリとしては、僕たちが90年代に見ていた『とんねるずのみなさんのおかげです』のようなイメージですね。あの番組でやっていたことって、とんねるずとその仲間の内輪ネタなのに、すごく面白かったじゃないですか、『バーガーピエロ』ではあんな感じの空気を出していきたくって。

これもまたごっこ遊び、ですよね。90年代のバラエティごっこです(笑)

──人とのつながりが増えて、できることがさらに増えていくと。

お喋りピエロ:なんにせよすべてがイチからの挑戦なので、チャレンジの数だけ、できることが増えていくのが楽しいんですよね。音声を編集する技術を身につけて、より洗練させたトークを届けられるようになっていったり、ライブにしても、いろんな方たちの知恵を借りて、どんどん段取りを上手に取れるようになっていったり。

つながりが増えたことで、いろんな人の力を借りれるようになったというのはやっぱり大きいですね。このあいだも、「鈴(りん)ちゃん」というギターの弾き語りトーカーさんに、BGMがわりの生演奏をしてもらったんです。

一般の楽曲は著作権上、そのままかけることはできないけれど、弾き語りならば楽曲申請の仕組みを使って著作権をクリアすることが出来るらしいぞと。じゃぁ、ギターの弾き語りが上手いリンちゃんに入ってもらって、「弾き語りBGM」を入れてもらおうと。

これまでできなかったことが、こうしたつながりによってどんどんできるようになって。人とのつながりやアイデアのちからで、できなかったことがどんどんできることが増えるのが、最高に楽しいですね。

──その名の通り、いろんな具材を挟むハンバーガーのような。

お喋りピエロ:まさに、タイトルはそこから取りました。みんなで一緒にゲストを挟み込むような感じでしゃべるから、『バーガーピエロ』にしようって。僕にとっての最高の幸せは、まさにこの「みんなで作ってる感」なんです。

「一番Radiotalkを楽しんでいる」と言われたい

──これからの展望を聞かせてください。

お喋りピエロ:まずは『バーガーピエロ』をどんどんアップデートして、本物のラジオに近づけていきたいです。そしてゆくゆくはRadiotalkで面白い番組、というときに名前が上がってくれたらいいなと。

「次いつやるんだろう」とリスナーさんが楽しみにしてくれるような存在になれたらなと思います。日曜の夕方に変わらず流れている『笑点』のような、日常に当たり前みたいに寄り添っている番組になるのが夢ですね。

これまで一緒に配信をしてきた仲間たちも、個別に配信を初めたりと、環境に変化が現れてきました。生配信をするグループとして『バーガーピエロ』はある程度の人気を得られたと思うので、次の段階としては、トーカーさんと一緒になった番組作りにチャレンジしてみたいですね。

あとは、トークを作り込んでいきたいです。ライブはその場の空気感やハプニングを大切にしたいので、そのぶんトークは鉄板ネタを作って出したいなと。「あのトーク、いつ聞いてもいいよね」と思ってもらえるようなシリーズを作りたいですね。

いずれにしても、ごっこ遊びをどんどん作り込んでいくということですね。大人のごっこ遊びの最強なところおは、時間とお金がかけられるということですから(笑)。かけられるものはかけて、クオリティを高めていきたいです。

──ゆくゆくは、YouTuberやインフルエンサーに?

お喋りピエロ:有名になりたいという欲求がないわけではないですが、いまは「あいつらが一番Radiotalkを楽しんでいるよな」と言われるような存在になりたいという思いが一番ですね。僕らはあくまでただの一般人で、タレントでもなんでもないので。あくまで「持たざる一般人」として、Radiotalkを楽しみ倒したいです。

ちょっと出過ぎた話かもしれませんが、「Radiotalkってこういう風に遊んだらもっと面白いんじゃないか」という提案になるような試みも、どんどんしていきたいですね。Radiotalkという場全体を作っていくことに少しでも貢献していけたらと思います。

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