芸人のしゃべりは、音声配信で磨かれる【ラストオーダー織田さんインタビュー】
Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『チャイルドプリンス ラストオーダー織田のラジオオーダー織田』を配信する、ラストオーダー織田さんにフォーカスします。
織田さんは、吉本興業所属のお笑いコンビ「チャイルドプリンス」のツッコミ担当。新型コロナウイルスの流行によりお笑い芸人としての仕事が全てストップしてしまった2020年3月から、Radiotalkで配信を行っています。
言葉の連鎖がうまく、1本のトークの中でいくつものコンボを繰り出す織田さんのモットーは「思いついたら言う」。週に1度のライブ配信ではリスナーがボケ倒し、それにツッコんでいくというスタイルが確立していますが、その底にあったのは、隠しきれない真面目さでした。
(取材/文:ねむみえり)
12分の収録時間が、とにかく自分に合っていた
ーーRadiotalkとの出会いは、コロナ禍で劇場の仕事が激減したタイミングと伺いました。
ラストオーダー織田:ほんとに1回ゼロになって。劇場が閉まったり、ちょこちょこ行かしてもらってた番組の前説も「無観客収録だから前説いらない」ってなって。ショッピングモールとかの営業もなくなりました。このまま27歳、28歳のいい時を過ごすのもったいないし、芸人として腐るやろうと思っていたところで、Radiotalkっていうのを知って。
12分っていう収録トークの時間って、配信する方も聴く方も絶妙にいいなと思って。1人で12分って、ギリギリ喋れるかなぐらいの時間じゃないですか。移動中とかのスキマ時間にも聴けるし、「あともうちょっと聴きたいな」って思ってもらいやすい時間なのかなと。そこに惹かれた部分はありますね。
仲良くさせてもらってる先輩芸人のデレクさんのRadiotalkをコロナ禍で聴いてたりして、「この感じやったら、自分も気軽にできそうやな」と思って始めました。それ以来、ずっとRadiotalk一本ですね。
ーー毎回のトークテーマは、どのように決めていますか。
ラストオーダー織田:これは芸人をやり始めてからの習慣なんですけど、その日あったこととか、その日食べたものとか、あとはムカついた話とか、ちょっと話せそうやな、という話題を携帯にメモしていますね。あとは思い立った時にRadiotalkの収録ボタンを押して、「どうもー」みたいな感じで始めています。
ーー収録後、トークの編集は行っていますか?
ラストオーダー織田:そうですね、たまに。詰まったり、これ言わんほうがよかったかなというところはトークの最中に「ここは切る」と吹き込んでおいて、あとから違和感のないように切っています。
ーー編集点を作ってるんですね。
ラストオーダー織田:そうですね、自分でわかるように。で、確認するために、あとから1.3倍速くらいで聴きなおすんですよ。そのうえで、「いらんな」と思う部分があれば、録りなおすこともあります。あと、これも“あるある”だと思うんですが、操作ミスで録ったものをまるまる消してしまって、あとからもう一回録ることもよくありますね。
ーー収録制限時間の12分めいっぱい使ったトークが印象的です。この“尺”には、何かこだわりがあるのでしょうか。
ラストオーダー織田:いや、しゃべる前にはあまり意識していないですね。「これしゃべろうかな」というテーマがある日もあるんですけど、逆にない日もあって。
でも、打席に立ってバットを振ったら、まぐれで当たるみたいなこともあるじゃないですか。そんな勢いで収録ボタンを押してしゃべって。そして結局、12分に入り切らへんな、となることが結構多いですね。だからよく聴くと、最後がめっちゃギリギリになっている回もあります。
そんなこともありつつ、逆に「時間が持たへん」と思うようなことは、あんまりないですね。12分って時間は、ほんと絶妙なんですよ。
「金曜夜10時に何話そう」 楽しみだからやっていける
ーー毎週金曜日のライブ配信「スーパー生配信」は、どのようなきっかけでスタートしたのでしょうか。
ラストオーダー織田:「ライブ配信をやってほしい」って声をリスナーさんから結構いただいて。確かに定期的にやったほうが聴きやすいやろうし、「あ、今日はラストオーダー織田のスーパー生配信の日や」みたいなことになってくれたら一番いいなと思って。いろいろ試すなかで、金曜の夜10時にリスナーさんが多く集まってくれることがわかって、この時間帯で定着しました。
レギュラーの配信時間が決まると、自分もその時間に向けてトークを仕上げようという姿勢に、自然となってくるんですよね。「金曜日にしゃべること、なんかあるかな」って。こんな風に考える習慣ができたことは、自分にとってもいいことだなと思っています。
ーー時間までに準備しなきゃ、というプレッシャーではなく、織田さん自身が金曜夜のライブ配信を楽しみにしているんですね。
ラストオーダー織田:「やらなあかん」ってなったら続かないですよ。なんでもそうですけど、楽しいからやっていける。
やらな、となったら多分楽しくないし、焦って配信しても「何が面白いねん」という気分になるやろうし。週1回だったらそこに向けて準備もできるし、最低限の面白さを担保できる、というバランスで続いてる感じです。
あとやっぱり、ライブ配信の場って、めっちゃ楽しいんですよ。トークも楽しいんですけど、先輩芸人さんとか後輩にも出てもらったりして、一緒にしゃべっているのをみんなに聴いてもらう、という感じがすごくいいですね。
ツッコミの引き出しは「国語辞典」で養った
ーーライブ配信では、リスナーから寄せられたコメントをきっかけに、話題がいろんな方向へ広がっていく様子がとても印象的です。織田さんの言葉の引き出しは、どのように作られてきたのでしょうか。
ラストオーダー織田:いやー、嬉しいな(笑)。べつに学生時代も勉強はできるほうじゃなかったんですよ。でも結構本を読んだり、言葉をめっちゃ勉強した時期はありましたね。工業高校出身なんですが、当時の先生には「めちゃめちゃ文系人間やな」と言われたのを覚えています。
ーー普段はどんな本を読んでいますか?
ラストオーダー織田:星新一とか伊坂幸太郎の小説とか。国語辞典を読むときもあります。
ーー国語辞典! どうやって読むんですか?
ラストオーダー織田:気になったり知らない言葉を調べて、「これ、こうやって言うんや」とか。言葉を使うお仕事なのに「どんな意味か知らん」と言うのは恥ずかしいし、テレビとかラジオで間違った言葉を使うわけにはいかないじゃないですか。
僕、小学2年生のときから「お笑い芸人になってツッコミをするんだ」って決めてたんです。そこから芸人のツッコミや、テレビの司会者を特に気にするようになって。人の間違いを訂正したり、話を引き出す人を見ていると、「やっぱり言葉を多く知っているほうがいいよな」って思ったんです。
ーーなるほど!
ラストオーダー織田:ツッコミには知識が要るんですよ。知識がないと、知らない話題のときに話に入れない。だから、1つのこと深くというより、浅く広く知識を持っていたいと思って。
国語辞典をいちばん読んでいたのは、中学のときですね。最初はスケベなワードをひいてみたりしていたんですが、テレビを見ててタレントや芸人が難しい言葉でツッコんでいるのを見て、「みんな笑ってるけど、どういう意味なんやろう」って。そこで辞典をひいて「こういう意味で言ってたんや、おもろ!」となって、その積み重ねです。
「コミュニケーション」としてのツッコミ
ーーあまりに言葉を飛躍させていくので、すっかりボケの立ち位置だと思っていました。
ラストオーダー織田:Radiotalkをきっかけに知ってくださった方にも「ツッコミというよりボケのほうじゃないか」と言われますね。それもまた嬉しかったりします。どっちもできたほうが損はないし。
今は中学の同級生とチャイルドプリンスというコンビを組んでるんですが、高校の同級生と組んでたコンビでは、ボケをやってたんです。相方が「ボケるのが恥ずかしいから、ツッコミをやりたい」というので、「しゃあないな」って感じで。
でも僕がボケをやると、わざとらしくなっちゃうんですよね。ひとりのときは、一緒にしゃべっている相手に合わせたりしますね。
ーーライブ配信では、リスナー全員がボケて、織田さんにツッコんでもらうのを待っているような雰囲気を感じます。
ラストオーダー織田:いつの間にかそういう感じになってましたね。みんな優しいし面白いし、明るいなぁといつも思います。結構うまいこと言う人もおったりして。
僕、9年芸人やってますけど、リスナーさんのなかには「余裕で負けるやん」と思うほどのセンスを持っている方もいて、めっちゃ刺激をもらうことが多いですね。やっぱりちょっとでもお笑いに携わっている時間が長いほうがいいやろな、という気持ちがあるので、Radiotalkでもガンガンお笑いをさせてもらっています。
ーーリスナーへのツッコミにおいて、大事にしていることはありますか。
ラストオーダー織田:強くツッコんだあとは、フォローを欠かさないようにしていますね。「何言うてんねん、全然ちゃうやろ! って、ほんとありがとうございます、すみません」みたいな。これはパフォーマンスであって、あくまでお笑いの流れとしてツッコんでいるだけだからね、って。
言葉の感じでどう伝わるかは捉えた方の解釈しだいですが、いずれにしても言われた側の気分が悪くならないようには配慮していますね。一言目はちゃんとお笑いとしてツッコんだうえで、二言目は「ほんまにそんなこと、思ってはいないけどね」ということを伝えるために、「いいですね〜」とか「ありがたいですね」と、ボケてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えます。
「なんで面白かったか思い出せない」から面白い
ーー配信中に披露するモノマネのレパートリーも圧巻です。
ラストオーダー織田:そんなんやってましたっけ(笑)。コメントを見て反射的にやってますね、たぶん。なにぶん台本もないから、毎回何をやったか覚えていないんですよ。
ーー織田さん本人が覚えていないとはびっくりです。
ラストオーダー織田:飲み会が終わったあと、「めっちゃおもろくて楽しかったな」って気分になりますよね。でもその後帰宅して、シャワーを浴びているときに思い返してみても、「なんかあいつ言ってたよな、あれなんやったっけ」って、全然思い出せないんですよ。
これって、その場ではめっちゃおもろいけど、あんまり頭の中では考えていないということなんですよね。だからおもろいんですけど。多分、それとまったく同じことがRadiotalkで起こってますね。
その場ではめっちゃ楽しいけど、思い返すと「なんで面白かったんやっけ」って。だから、収録トークやライブ配信のアーカイブをあとから聴き返して、「このとき、何で盛り上がってたんだっけ」とか、「先週、何やってたっけ」と確認することがしょっちゅうです。
とくにライブ配信中はいろんなところに話がいくから、「これって、何に対してコメントしてくれていたんだっけ」とわからなくなることがめっちゃあって。記憶との戦いなんですよ。
ーー織田さんのライブ配信を聴いていると、ひとつの話からどんどん話題が派生しつつ、最終的には元の話に戻っていくという展開が毎回見事だなと思います。
ラストオーダー織田:リスナーさんも、まさに同じことを言ってくれましたね。「『自分のコメントを読んでほしいのに、まだこの話題か』と思ってしまうときもあるけど、そうした流れが生まれることが魅力だし、芸だと思う」と。
ライブ配信って、みんなで作るものだと思っていて。リスナーも巻き込んで、一緒に盛り上がって、楽しかったらええなって。なんなら、誰よりも僕が一番笑っているんじゃないですかね。
リスナーになって、「嬉しさのポイント」を知った
ーー織田さん自身、Radiotalkの熱心なリスナーと伺いました。
ラストオーダー織田:基本、芸人仲間のは聴いてますね。ランキング上位の配信も参考にさせてもらっています。『そんなことないっしょ』を配信しているそんない竹内さんがライブ配信中に薄くBGMを流しているのを聴いて、自分の配信にも取り入れたりしていました。
ーーRadiotalkという場を全力でエンジョイされていますね。
ラストオーダー織田:めっちゃ楽しませてもらってます。移動中も結構Radiotalkを聴いていますね。収録トークもですし、リアルタイムで聴けなかった先輩のライブ配信のアーカイブとか。仲のいい芸人さんの番組におたよりを送ったりもしています。
リスナーとして楽しんで、おたよりを読んでもらって。すると、「こうやって面白おかしくツッコんでくれたら嬉しいな」とか、「こういうふうに進めると面白くなるんだな」というのが、わかってくるんですよね。
Radiotalkが、芸人としてのステップアップになった
ーーこれまで1年以上Radiotalkでの配信を続けてきたなかで、印象に残っている出来事はありますか。
ラストオーダー織田:Radiotalkきっかけで僕のことを知ってくれたという方が、関東から大阪の劇場まで来てくれたんです。1週間ぐらい滞在して、僕らが出る劇場の前説や漫才ライブに全部来てくれて。「えー! ここまでしてくれんねや!」とびっくりしました。改めて、Radiotalkをやっててよかったな、と思いましたね。
ーーRadiotalkでの活動が、芸人活動にも波及しているのですね。
ラストオーダー織田:最近は番組のフォロワーも急激に伸びていて。これまでライブ配信を始める前は、トークを上げた次の日に2人増えて、という程度だったんですが、最近は配信のたびに20人、多いときは30、40人もフォロワーさんがついてくれるようになりました。
ーー素敵な好循環が生まれていますね!
ラストオーダー織田:めっちゃ嬉しいです。やりがい感じますよね。これは先輩にも言われるんですけど、自分はほんまにコツコツやるタイプだと思います。一気にドカンといくんじゃなくて、ちょっとずつ進んでいくタイプだなと。
ちょっとずつちょっとずつ聴いてくれる人が増えて、おたよりも増えて……。これまで積み重ねてきたことが、少しずつ実を結んでいるのかなという手応えがありますね。
ーーRadiotalkで配信をすることで、織田さん自身に変化はありましたか?
ラストオーダー織田:僕、めっちゃ緊張しいだったんですけど、舞台に出てなにかしゃべらないといけないときに、緊張しなくなりましたね。Radiotalkで配信することで、自分の“芸人”としての部分を磨けている気がします。芸人全員、Radiotalkやったほうがええんちゃうかな、ほんまに。絶対やったほうがいいと思います。
Radiotalkは、僕にとって「しゃべりのリハビリ」だったんですよ。コロナ禍で誰ともしゃべらへん期間が長くて、人とも会わなくて。お店に行ってもみんなマスクをしていて基本しゃべらないし、ご飯も行けなくなって、ほんま嫌やなって思って、ひとりでもいいからしゃべってみようっていうとこから始めたんですよ。
それがね、今はしゃべれって言われたら、しゃべれますもんね。Radiotalkをやる前とやったあとだと、やったあとの方が絶対的にトークの力がついているんです。これ、結構でかいことだと思います。
夢は、リスナーと劇場へ
ーー今後、Radiotalkでやってみたいことはありますか?
ラストオーダー織田:めっちゃありますよ! いちばんやってみたいのは「公開収録」ですね。リスナーさんに実際に劇場に来ていただいて、リアルに面と向かって僕らの芸を見てもらったり、トークを聴いてもらうイベントをやりたいです。
おかげさまで、番組の累計フォロワー数が2300人を突破しました。これは自分たちとしても、誇りを持っていいのかなって。ここまで続けてこれた証として、グッズも作れたらいいですね。
ーーいま、織田さんにとってどんなことが、Radiotalkを続ける原動力になっていますか?
ラストオーダー織田:Radiotalkを通じて自分たちを知って、応援してくださる方がいることですね。Radiotalkをやっていなかったら、「チャイルドプリンスのラストオーダー織田」という名前は、おそらく耳に入ることがなかったと思うんです。
こんなやつでも待ってくれている人がいるんやったら、自分たちのしゃべりで楽しくなってもらえたらええな、って。もっとそういう人たちを増やしていきたい、というのが、番組を続ける原動力になっています。
リスナーのみなさんからいただくお便りもそのひとつですね。こちらから「ください」とお願いしてお便りをもらっておいて、やめるわけにはいきませんから。
ーーこれはもう、愛ですね。
ラストオーダー織田:僕らの番組ってほんまに、聴いてくれる人がいてくれて、初めて成立するんですよ。将来ブレイクしたときに、いま聴いていてくれている人たちが「私、織田さんのラジオ、昔から聴いててん」と同僚や友達に自慢できるくらいになりたいですね。リスナーのみなさんにちょっとでも恩返しができたらという気持ちで、今日も配信を続けています。
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