Radiotalkは、自分の「メイキング」を発信できる場所【鍛治本大樹さん(演劇集団キャラメルボックス)インタビュー】
Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『鍛治本ラヂオ』を配信する鍛治本大樹さんにフォーカスします。
演劇集団キャラメルボックスのメンバーとして活動する鍛治本大樹さん。「音声配信だからこそできることがあるのでは」という思いから、2021年1月よりRadiotalkでの配信を開始しました。
Radiotalkをきっかけとして、少しでも舞台に興味を持ってもらいたいという鍛治本さん。Radiotalkでのしゃべりが、本業である役者として演じることに影響を与えている部分があるといいます。
(取材・文/ねむみえり)
“舞台裏”から舞台に興味を持ってもらいたい
ーー音声配信を始めたきっかけは?
鍛治本:もともとは動画での配信をやっていたんですが、映像よりも音声だけのほうが、もしかしたらリスナーさんも何かしながら楽しめたり、色んな距離感で聴いていただけるんじゃないかなと。そうした可能性を感じて、音声配信を始めました。
ーー数あるサービスのなかから、Radiotalkを選んだ決め手は?
鍛治本:音声配信できるアプリを探しているときに、まだサービス立ち上げ当初の、Radiotalkの井上(佳央里)社長のインタビュー記事を見かけたんです。井上社長の考え方とか、Radiotalkでやりたいと思っていることというのが、僕が音声配信でやりたいことにすごく近かったので、それでポン、と直感的にRadiotalkで配信しようと決めました。
しかも偶然なことに、社長のお姉さんが、元キャラメルボックスの劇団員で、養成所時代の同期だったんです。
ーーなんだか運命的ですね。舞台に関するトークもとても興味深く、舞台の世界に関心がわいてきます。
鍛治本:僕自身、劇団に入るまでにほとんど舞台を観ていなかったし、演劇サークルに入ってたわけでもなかったので、舞台に対する知識がないまま飛び込んだんですよね。どっちかっていうと、舞台や役者に対しては「朝までお酒飲んで、お金はなくて、演技論を戦わせてるんでしょ」みたいな、ネガティブなイメージしかなかったんです(笑)
そういう自分自身の経験もあったので、舞台に携わる僕らは当たり前だと思っていることも、お客さんにとっては新鮮な情報だったりすると思うので、そこを伝えられたらなというのはあります。
ーー確かに映画などに比べると、舞台は少し謎に包まれている部分が多いかもしれないですね。
鍛治本:とにかく、劇場に来てもらうというのが本当に大変なんですよね。舞台を観に来たことがない方にとっては、1回のチケット代もそこそこするし、何が面白いのか分からないかもしれないというのも、正直なところ、あるんじゃないかと……。そんな舞台に少しでも興味を持ってもらいたいと思ったのが、配信を始めたきっかけなんです。
収録トークでは、舞台に関することとか、裏話的なことを話しつつ、ライブ配信では、僕自身の人となりとか、人柄とか、舞台俳優が舞台をしていないときに何をしているか、というところを伝えて、総合的に「舞台って面白そうだな」と思ってもらえることを目指しています。
ーー毎回の配信は、どのような環境で行っていますか?
鍛治本:マイクはオーディオテクニカ、オーディオインターフェースはRolandのものを使っています。
舞台と並行して声の仕事もしているのですが、ご時世的なこともあって、家でテストがてら収録したり、リモートでのオーディションのために使用することが多くて。そのために揃えた機材をそのまま使っています。
ライブ配信もこの機材でやっているんですけど、スマホだけでやっていることも結構ありますね。iPhoneのマイクって、すごく性能がいい気がするんですよ。
ーー機材を使ったときと、iPhoneだけのときではどんな違いがありますか?
鍛治本:コンデンサーマイクとオーディオインターフェースを通すと、マイク周辺の音をすごくきれいに録れるので、じっくり聴いて欲しいときはその環境でやるんですよ。それに対してiPhoneは、すごく広範囲の音を満遍なく拾うので、雑音とか生活音が入ってくるんですけど、それが心地よかったりするんです。
僕は夜、帰宅してすぐに料理を作りながらライブ配信したりするんですけど、料理している最中の音はiPhoneのマイクで録っています。ノイズも入りますが、そのぶん臨場感が出るんですよね。
想像以上に、声にはいろんな情報が乗っている
ーーこれまで夜間を中心にライブ配信をされていた鍛治本さんですが、2021年6月からは毎朝のライブ配信もスタートされましたね。
鍛治本:もともと動画配信をしていたころから毎朝の配信自体はしていたんですが、日によっては体調があまり良くないとか、気分が乗らない日というのがあるんですよね。そういうとき映像があると、ちょっと無理しないといけないんです。
ーーなるほど。
鍛治本:素の自分を通じて役者や舞台に興味をもってもらうことがライブ配信のいちばんの目的なので、僕としてはできるだけフラットな状態でいたくて。ちょっと無理をしなきゃいけないときがあるっていうのは、本来の目的からは離れてしまうんですよね。
その点、Radiotalkだと、素に近いところでしゃべることができたので、朝の配信もこちらにしようと。「今日、ちょっといまいち気分が乗らないな」ってことも、不思議とそのまま言えちゃうんですよね。
ーー顔を出さないからこそ出せる、素の状態があるということですね。
鍛治本:お芝居をやってきたなかで、発声とか体のことを勉強してきたんですけど、人は視覚に頼るとき、体の前面に意識が行くので前のめりになるんです。一方、聴覚に頼るときは、後ろに重心がかかる。しかも、後ろに重心がかかっているときのほうが、よりリラックスしやすいそうなんです。
だったら、音声だけにしたほうが、聴いている人もリラックスしてもらいやすいし、僕自身も音だけに集中できるので、すごくフラットな状態でしゃべれるんじゃないかと。
ーー舞台と違い、音声のみで様々なことを表現することで意識を変えたことはありますか?
鍛治本:僕は舞台から役者をスタートしたのですが、その後、声優もやるようになって、声だけで伝えることの難しさを痛感しました。どうやったら声に色んなものを乗せて伝えられるのか、自分なりにいろいろ研究を進めるなかで、実は思っている以上に、声にはいろんな情報が乗っているということを知りました。
声だけ聴いていても、いまこの人は緊張しているな、とか、寝そべっているな、といったことが、相手には伝わってしまう。だったら、最初からできるだけリラックスした状態で話すことで、もっとも多くのことを相手に伝えられるのではないかと考えるようになりました。
ーー意識的に情報量を増やさなくても、声には最初からいろんな情報が乗っているんですね。
鍛治本:そうなんです。リラックスした状態でしゃべるっていうことが、舞台でも重要だなと思っていて。もちろん、演技をする以上、気にしなきゃいけないこともあるんですけど、15年ぐらい舞台をやってきたなかで、”何かをやろうとしないで”どれだけ舞台上に立てるかっていうことが、すごく大切なんだなということに気づいたんです。
僕が素敵だなと思う役者さんは、その人そのものの呼吸で舞台に立つということが備わってるんですよね。Radiotalkでは「頑張らず、素でしゃべる」ことを毎日心がけていますが、そうした姿勢は舞台での活動にもフィードバックされているんです。
ライブ配信は、「誰がいつ入ってきても楽しい場所」に
ーー毎日ライブ配信を続けるモチベーションは、どこから来ていますか?
鍛治本:僕、めんどくさがりなんです。何かを始めてもあまり長続きしなくて、1日おきとかにすると、逆にサボっちゃいそうなんですよ。毎日やるって決めたほうが、自分の中の生活の一部になるので、続けられるんじゃないかなって思って。実際、いまは朝のルーティーンのひとつになっています。
毎朝8時にやるって決めてやってたんですけど、ちょっと朝バタバタすることがあって遅れたりすると、リスナーさんから、僕が倒れてるんじゃないかって心配するDMが来るんです。そうなるとサボれないですよね(笑)
ーーライブ配信中、リスナーとのコミュニケーションにおいて、とくに意識しているところはありますか。
鍛治本:嘘をつかない、ということですかね。
ライブ配信を始めるときに、いろんな方の配信を聴いて勉強したんですが、とあるコメントに対して、「これ、トーカーさん側はあまり快く思ってないんじゃないか」と感じたことがあったんです。
その気持ちをそのまま言うことで、その場の空気感を悪くしたくないとか、「そういう返しするんだ」って思われたくないという気持ちがあるのはすごく分かるんですけど、僕は正直それが嫌だなと思って。
それで、言いたいことは言おう、と決めました。ライブ配信だけど、実際に面と向かって話しているイメージを持って欲しいということは、つねづねリスナーさんとも共有していますね。
ーー人と人とのコミュニケーションである、ということを共通認識として持つことは大切ですね。
鍛治本:ちょっと盛り上げるための“イジり”みたいなコメントもあると思うんですよね。でも、イジりというのは、いろんな関係性があって成り立つと思っていて。その約束事ができる前に無茶振りをしてイジるという行為は、危険だなと感じているんです。
なので、ライブ配信を始めた頃にすごく気をつけて、不愉快に感じたコメントについては「それは面白くないですよ」と、丁寧に説明するようにしていました。そのおかげか、最近はあんまりそういうことはないですね。
ーーライブ配信のタイトルに【はじめまして大歓迎!】と冠されているのが印象的です。これにはどんな思いが込められているのでしょうか?
鍛治本:誰でも気軽に入ってきやすい空間にしたい、という思いがあるんです。
ライブ配信をよく聴きに来てくださる方たちの存在はすごくありがたいんですが、いつもいる人たち同士のコミュニケーションが強くなりすぎてしまうと、ふらっと聴きに来てくださった人がコメントをしづらかったり、輪に入れなかったりするんじゃないかなっていうのが気になっていて。
なので、常連のリスナーさんたちにも、新しい人が気軽にコメントしやすい空気作りをお願いしていて、皆さんそれにすごく協力してくださってます。
ーー意識的に、内輪ノリになりすぎないようにしているんですね。
鍛治本:新しく聴きに来てくれた方がコメントすると、よく聴きに来てくださってる方たちがみんなで挨拶をするんですよ。僕はその状態は結構好きなんですけど、その方にとっては、みんなが一斉に自分の方を向く感じになるので、ビックリさせちゃうこともあるかもしれないですね(笑)
あとは、自分がリスナーの立場で「どのライブ配信を聴こうか」と考えたとき、「はじめましての人もウェルカムだよ」と掲げられていたら、入りやすいなと思って。それによって、ふらっと立ち寄ってくれる人も増えたらいいな、という狙いもあります。
ーーたしかに、そういうライブ配信にはふらっと入りやすそうですね。
鍛治本:そういう配信にしたい、っていう意思表示でもあるんですよね。「はじめましての人が入って来やすい空間に、みんなでしようね」っていう。
客席にリスナーを感じながら、劇場で演じる
ーーライブ配信では、舞台のオーディオコメンタリーもされていますね。
鍛治本:僕がもともと、そういうコメンタリー的なものを聴いたり、メイキングを見たりするのがすごく好きなんです。そういうものを僕も提供できたらな、という気持ちでやってみたら、すごく楽しかったんですよね。
動画を一緒に流すわけにはいかないので、みんなで同時に舞台の配信動画を視聴しながら、Radiotalkでしゃべっているのを聴いてもらうという形をとっているんですが、こんなにコメンタリーに適した媒体はないなと思います。
いまはコロナの影響で配信をやる舞台が増えてきているので、そういった意味ではすごく今の時代に合ってるというか。また1つ、楽しい催しができたなって感じますね。
ーーある意味、いまの時代にも沿った、贅沢な楽しみ方ですね。
鍛治本:舞台の配信は、家で1人で観るじゃないですか。でも僕は、劇場で知らない人たちと2時間ぐらい同じ時間を共有するっていうのが、舞台を生で観る良さだなと思っているんです。
Radiotalkでみんなで集まって、同時視聴してコメンタリーもやるという体験は、舞台の配信をちょっとだけ劇場に近い形で見られる気がして、すごくありがたいことだなと思います。
ーーRadiotalkで配信を行うなかで、印象に残っている出来事はありますか?
鍛治本:舞台に興味を持ってもらおうとRadiotalkを始めたのですが、僕のRadiotalkをきっかけにして、僕の舞台を観るため、初めてチケットを買って劇場に行くと言ってくださる方がすごく増えたんです。
お客さんが増えるっていう意味での嬉しさもありますけど、初めて劇場に行くという体験を一緒に共有できる嬉しさがすごくあって、ほんとにそれはRadiotalkのおかげだなって。
ーーリスナーさんが舞台に触れるきっかけになっているんですね。
鍛治本:Radiotalkを始めたとき、僕が所属しているキャラメルボックスは活動を休止していたんですよね。その後、活動を再開して、2月に「キャラメルボックス・アクターズプロデュース 2022」として『ミス・ダンデライオン』を上演したのですが、このとき、Radiotalkで僕のことを知ってくださったリスナーさんがこぞって見に来てくれたんです。
僕にとっては、キャラメルボックスの舞台を観るのが初めてだっていうのがすごく新鮮だったんですよね。いままでキャラメルボックスの役者としてお客さんと接することが多かったので、Radiotalkで僕を知って、初めてキャラメルボックスを観るのか、と思うと、すごく不思議でしたし、Radiotalkがあってよかったなって思いました。
それもあって、リスナーさんに「今日舞台観に行きます」と宣言された日は、ちょっと緊張してたんですよ。これで舞台がつまんないなって思われたら、ほんとに申し訳ないなという思いがより強くなってましたね。
ーー舞台に立つときも、「この客席のどこかにリスナーさんがいる」と意識されているんですね。
鍛治本:そうですね。結構みなさん、「今日行きます」って気軽におっしゃってくださるんで、特に100〜200人ぐらいの劇場で舞台に出るときは、「この中にリスナーさんが何人かいるんだな」と思いながら演じています。公演後のライブ配信で、リスナーさん同士が「どこにいました?」みたいな会話をしているのを見るのも、すごく楽しいですね。
Radiotalkは自分の「メイキング」
ーー鍛治本さんにとって、Radiotalkはどんな場所になっていますか?
鍛治本:Radiotalkでは、僕は限りなく素でしゃべっているので、ルームシェアしてる感覚というか、リビングでみんな集まってしゃべってるような感じなんですよね。ご近所さんで井戸端会議してるような感覚とも似ているかもしれないです。
いまのRadiotalkって、人気トーカーさんがいっぱいいて、それぞれいろんな配信の形があると思うんです。テンション高めで、すごくリスナーさんを楽しませるのが上手い方が沢山いるので、僕もテンション高くしゃべったほうがいいのかなってやってみたんですが、「そういうのは求めていないから、だらだらとしゃべってくれ」という声があって、やめました(笑)
ほんとにしょうもないことしかしゃべってないし、ただビール飲んだり、コーヒーを飲んだりしているだけのときもあるので、「それでいいのかな」と思いつつ、日々やっています。不思議な感じですね。
ーー普段知ることのできない、役者・鍛治本大樹の素の部分を聴ける場所になっているということのあらわれなのかも知れませんね。
鍛治本:そう思うと、Radiotalkで配信することは、僕の中ではメイキングなのかもしれませんね。本番中とか稽古中とか、終わったあと何をしているかを見せる場というか。
劇場で作品だけを見て評価してほしいっていう役者さんも、当然いるだろうなとは思います。ただ、僕はそこまで舞台上の自分だけでいく自信がないというか、全部見せたほうが面白いかもなって思っているので。そういう意味で、Radiotalkは「メイキングを見せる媒体」としてすごくフィットしています。
ーー今後、Radiotalkを使ってやってみたいことはありますか?
鍛治本:収録トークには、これまで以上に力を入れたいですね。思っていることを素朴に話すのはライブ配信でやれているので、また違う形で1つのコンテンツとして、たとえば物語を音声で届けるとか、そういうこともRadiotalkだったらチャレンジできるかなって。
あと、僕、Radiotalkの中での友達が少ないんです(笑)。こっそり色んなトーカーさんのライブ配信を聴いて、面白いなって思ってるんですけど、引っ込み思案なのでコメントとかもできなくて……。本当はコラボとか、やってみたいなと思ってるので、Radiotalk内での交流をもう少しやっていきたいですね。
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